自分の考えを自分のことばで伝える!
エドカフェ No.3 「学年をこえた子どもたちをつなぐ」の木村泰子さん(映画「みんなの学校」の校長先生)のお話をまとめてみた
校長の大失敗から生まれた全校道徳
(エドカフェ番外編「大空小学校全校道徳について」より)
ある日の校長講話の時間
木村校長は子どもたちに伝えたい話があり、いつにないくらい、ものすごく準備して朝会に行った。
いつもは自分で決めた場所に、自由に楽にすわる子どもたち。先生方も子どもたちの中には入らず後ろで見守る。それが大空のスタイル。
その日校長は真っ先に言った。
「今日はめっちゃ大事な話をします。」
そう言ったとたん、子どもたちはお行儀よく座り直した。
そして言いたくて仕方がなかった話を、前置き長く夢中でしゃべり始めた。
季節は梅雨、蒸し暑い体育館
とうとうとしゃべっている間に突然1人の子がスコンと立った。
「校長先生!お話終わり!」
その子は、Tシャツを脱いで「お風呂に入りたい」と言った。
まわりのみんなはその子に「よく言ってくれた!」というように安心した様子。そこで目の前の子どもたちの姿に初めて気づいた。
でもまだ1番言いたいところを言ってなかった。
「ごめん、もうちょっとだけ、しゃべっていい?」
するとその子は
「もうちょっと?もうちょっと?もうちょっと?」と3回確認して、
「わかった!」と言ってすわって見てくれた。
ところがまわりの他の子たちが「もういい〜」みたいな反応。
後ろの教職員は「やめろ!やめろ!」と合図。
若い教職員は校長の窮地になにやら嬉しそう。
地域の人やサポーターからは「校長かわいそう・・・」という哀れみの視線が・・・
やっと気づいた校長は「ごめん、」と言ったが、ここで
「お話終わります」も変だと思って言った。
「今日はこのぐらいにしとったるか!」
みんな「わあっ!」と笑って校長講話は終わった。
こういう授業をわたしらしてたんかな?
「やっぱり校長の話はいっさいやめよう!」ということになった。
「でもこの時間もったいないよね?」
そこで生まれたのが全校道徳
先生しきらないで!(大空小の全校道徳)
「全校道徳で教科書に書いてあること全部クリアしよう!」
ということで、大空小の全校道徳が始まった。
「やりたい人?」「はい!」でつくる大空式プロジェクト。でもこれには誰も手をあげなかった。
しかたなく言い出しっぺの校長ともう1人ベテラン教師がやることになった。その他はフォロー(大空のプロジェクトはやりたい側とフォロー側に分かれる)
あとからやりたくなった人はあとからやりたい側に入る。
まず全校が集まったところで、突然ホワイトボードに書く。
例えば・・・「人権って?」
「どうぞ!」でみんなで読む。
初めはごちゃごちゃ質問がきた。でも、
「答えはない」「ひとりひとり考える」
ということが定着してくると 誰1人質問しなくなった。
自分の考えをもつ時間10秒。
みんな「うっ???」っと考える。
これを一年積み重ねると、自分の考えを持つようになる。
「いってらっしゃい」と言うと、みんな思い思いの姿で自分のグループの場所にいってすわる。
6年生(リーダー)を中心に考えを出し合う。
なにもマニュアルはない。大人はいっさい邪魔しない。
こうすわらなきゃいけないとかルールもない。
その場所で自分らしくいられるから本音が語れる。
言い終わったなっていうタイミングで、ホワイトボードのそばにMCが立つと、みんな集まってくる。そこでグループの話を全体にシェアする。リーダーが言わなきゃとかいうルールもいっさいない。
出てきたことは若者職員がホワイトボードに書いていく。書き終わったらただただ読む。
読み終わったら教室へ(なんのまとめもしない)
教室で今日のテーマ 自分の考え まわりの人の考え 今の自分の考えを書く
初期に子どもからこんな声が上がった。
「提案があるんですが・・・大人は大人でグループつくってもらえませんか?」
「なんで?」
「先生ってしきるでしょ?」
「一年生が意見言えなかったら、リーダーに、『この子言ってないよ』と言われる。この子は言わなくてもみんなの考えを聞いている。言わなきゃとなるとこの子はこれなくなるかもしれない。そんなこともわからないんですか?」
子どもたちが自分たちで動いているのに、指示されて動くことに慣れている大人グループだけが、集まれないという一幕もあった。
ここでも子どもだけでなく、大人も多くを学んだ。
受け止めてくれるまわりがあるから、自分の言葉でだんだん安心して伝えられるようになる。
<全校道徳テーマ例>
自分がされて安心なこと 言われて安心なこと
自分がされて嫌なこと 言われて嫌なこと
今学校で困っていること
あなたならどうする?
どうしたら○○ができるようになる?
○○とは?
学校みんなで買った一枚の宝くじで3億円当たりました。どうしますか?
「はい!」「わかりました!」の文化とは・・・?
「本音を言わなくて済む言葉」「これ以上大人と関わらなくて済むことば」とは?(一同考える)
「はい!」「わかりました!」 これ、子どもは身につけている。
「関係ない」とかならまだ「何が関係ないの?」と対話を続けられる。
でも、「はい!」「わかりました!」では対話は続かない。
「はいの文化」というのが学校にはある。これを言いさえすれば、子どもは怒られない。質問されない。解放される。
「はい」と言わせたら教師は指導力があると思っていた。
子どもに「はい」と言わせない。
はいが言えなくなったら、「え〜だって〜」とちょっとは自分の考えを言い出す。
大人も正解をもっていない。大人も一生懸命学んでいる。全校道徳でそんな大人の姿を見ながら、子どもたちも学びに向かっていく。
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