フランスア不調の要因とは?
昨年、それまで勝ちパターンを務めてきた今村猛、J・ジャクソンが不調に陥る中で、チームを救ったのがG・フランスアの存在でした。
アベレージで150㎞/hをマークし打者を寄せ付けないフォーシームに、縦に鋭く曲がり落ちるスライダーとチェンジアップの質も良く、セットアッパーとして47試合に登板し、チームのリーグ3連覇の立役者となりました。
今年も絶対的なセットアッパーとして期待されましたが、ここまで11試合に登板し、既に昨年と同数の3本塁打を浴びるなど、防御率は5.73と振るわない成績となっています。
ペナントレースにおいて、上の順位を目指すには、接戦を勝ち切ることは必須であり、そこにはリリーフ陣の力が必要となってきます。
フランスアの復調無くしては、広島の4連覇は有り得ないというところで、ここまでのフランスアの不調の要因を探るとともに、今後の復調に向けて何が必要なのかについて考察していきたいと思います。
※成績は全て4/27現在のもの
1.不調の要因
まず、昨年と今年のフランスアの投球成績を比較したものが表①となります。
K%やBB%は昨年と大きく変化はありませんが、被打率は大きく悪化し、上述のように被本塁打も既に昨年と同数浴びるなど、打者側から慣れられたのか痛打を浴びる場面が目立っています。
痛打を浴びるようになった要因について、ここからはもう少し掘り下げて、昨年「S-PARK」のプロ野球1/100企画のスピードボール部門で一位に輝いた、プロからも認められるフォーシームが昨年と比較しどのようになっているのかを確認していきます。
表②から昨年と今年を比較すると、目立つのが被打率の悪化もさることながら、投球割合の大幅増ではないでしょうか。
実に7割近い割合まで増えており、打者側からすれば慣れに加えて、球種的な絞りやすさもあり、被打率の悪化にも繋がっているように感じます。
加えてZone%(全投球中ストライクゾーンに投じる割合)が39.8%→48.4%へ大幅上昇し、昨年ほどボールが荒れておらず、Swing%(全投球中打者がスイングを仕掛けた割合)も45.7%→51.6%と上昇している点も絞りやすさを裏付けているのではないでしょうか。
ここまでフォーシームのデータを中心にフランスアの不調の要因について探ってきましたが、実際に投球を見ていると、素人感覚ながらOP戦から昨年ほど打者を圧倒するほどのフォーシームの球威を感じず、スライダーの軌道や変化量が昨年より大きくなっており、縦に鋭く曲がり落ち空振りやゴロの量産が期待できる実戦的なボールではなくなっているように見えます。
要するに、投球割合の問題のみならず、球速等の数値では測ることのできない点でフランスア自身の投じるボールにも問題があるように思います。
その要因として、フォームに多少の変化が生まれていることが挙げられるのではないでしょうか。
昨年(左)と今年(右)のリリース時を比較したもので、黄色の線を見ていただくとお分かりかと思いますが、昨年の方が体軸を傾け上からボールを叩くようなリリースとなっており、体を縦に使え、かつリリースも打者に近い位置で出来ていることが分かります。
それと比較し、今年は昨年よりも体軸の傾きがイマイチで、ボールを上から叩けておらず、リリース位置も後ろのために、球速は出ていても打者には昨年ほどの脅威とならずに捉えやすくなったり、スライダーも縦に鋭く切れ込むような変化ではなくなっているのではないでしょうか。
※メカニクスには明るくないため、フォーム面の指摘事項で何かおかしなところがあればご教示ください
2.復調に必要なこと
上述のような点から見ると、復調にはまず7割近いフォーシームの投球割合を昨年レベル(50.8%)ほどに落とすことでしょう。
昨年より球威の落ちた状態のフォーシームを昨年以上に投げ込んだところで、打者側からすれば球威の落ちている分対応しやすくなっているわけですから、痛打を浴びるのは自明の理です。
自らのボールが昨年レベルにないことを悟り、もっとスライダーやチェンジアップを混ぜ、かつゾーンにボールを集めるのではなく、ボールを散らしていくような工夫をすべきでしょう。
また、フォームの見直しという点も急務です。
上述のように様々な修正点が考えられますが、これらの不調の要因の大元として考えられるのは、昨年の酷使でしょう。
8月にはNPBの月間最多登板記録に並ぶ18試合/月に登板するなど、リリーフとしての本格起用が7月からにも関わらず、46試合登板と異常に多い試合数への登板を重ねてきました。
それに加えてポストシーズンでも登板を重ねたことから、その疲労が抜けきっておらず、昨年投げられていたボールを投げられていないというのが現状であるように感じます。
ですので、まず第一に考えられるのは、あまり現実的ではありませんが、一度二軍に落とし一定期間休息の時間を与えることでしょう。
そこで休ませつつも、もう一度フォームを作り直すというのが理想的なように思います。
しかし、実際はフランスアを二軍に落としている余裕は無いでしょうから、現実的には一軍で登板を重ねながら復調を待つといった形になるでしょう。
新加入のK・レグナルトがOP戦から好投を続けており、現状のフランスアの位置にレグナルトを当て込み、当面は一岡竜司や中崎翔太の3枚で接戦を乗り切る覚悟は今の首脳陣には皆無でしょう。
しかし本気で今年も勝ちに行くのであれば、これくらいの大胆な施策は行うべきではないでしょうか。
3.まとめ
・不調の要因
①フォーシーム偏重の配球
②球速や空振り率は大きな変化はないが、フォームが昨年ほど体を縦に使えず、リリース位置も後ろになっているため、打者が昨年ほどフォーシームに威力を感じておらず、スライダーも本来のモノではなくなっている
・復調するには
①フォーシームの割合を減らし、かつゾーンにどんどん投げ込むのではなく、ボールを散らして打ち気を逸らす
②大元には昨年の酷使の影響が色濃く存在するため、無理を承知で一度二軍に落とし、休養の時間を設ける
根本の原因が疲労であると考えると、今年一軍にずっと置いた中で昨年レベルのボールを取り戻すのは難しいと見てよいでしょう。
そして、このままの起用を続けていけば、フランスアの投手としての賞味期限はどんどん短くなるだけです。
首脳陣には、目先の勝利のみに追いかけるのではなく、個々の投手を長期的に最大限活用できるような方策を考えてもらいたいものです。
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