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なぜ広島は大型連勝と大型連敗を繰り返すのか?

この表は2019年シーズンのセリーグ各チームのの貯金/借金の推移表になるのですが、広島のものを指し示す赤線を見ると、ご存知の通り非常に変動が激しいことが分かります。

※この表はプロ野球データFreakさんからお借りしました

4月中旬には既に借金8まで膨らみましたが、その直後8連勝して借金を完済しました。その後5月には20勝4敗1分という驚異的なペースで勝ち星を積み重ね、遂には首位へと躍り出ることとなります。

しかし、6月に入り交流戦が始まると、その勢いは鳴りを潜め、5勝12敗1分と交流戦最下位に沈み、リーグ戦再開後も勢いは戻ることなく20年ぶりの11連敗を喫し、6/1時点で最大14あった貯金をわずか1ヶ月で食い潰してしまいました。

そんな中、後半戦に突入しましたが、オーダーの組み替え等の策が功を奏してか、再び連勝を積み重ね、貯金を作り出すことに成功しています。

このように、過去に類を見ないくらい浮き沈みの激しいシーズンとなっていますが、一体何が要因となりここまでの浮き沈みが発生しているのでしょうか?

その要因について、以下にて分析していこうと思います。

※成績は7/29終了時点のもの

1.時期別分析

まず、連勝期と連敗期に分けて、その内実について迫っていこうと思います。

連勝期と連敗期に分けて、その勝敗と得点/失点をまとめたものが表①となります。

連勝期には8割近い圧倒的な勝率を誇りますが、連敗期には1割台~2割台というにわかに信じがたいような勝率となっています。

得点と失点を見ても極端な傾向が出ており、連勝期は1試合平均5得点ほどという昨年レベル(2018年の平均は5.0得点)の強力な得点力と、1試合平均3失点程度に抑えられる守備力を見せ、投打がかみ合っていることが分かります。

その一方で、連敗期には1試合平均3得点にも満たない得点力と、1試合平均5失点近い守備力で、逆に投打が全くかみ合っていないことが分かります。

このように、投打のかみ合わせがハマる時とハマらない時がはっきりとしているために、連勝期と連敗期を繰り返してしまうのでしょう。

2.なぜ得点の分散が大きいのか?

以上より、連勝期には昨年レベルの得点力を発揮できるものの、連敗期にはその得点力が半減してしまうことが分かりましたが、その要因としては何が考えられるのでしょうか?

個人的には、以下の点が考えられるように思います。

①バティスタの存在の大きさ

昨季まで3年連続でリーグ最多得点を記録していたチームの中で、得点源として機能していたのが、3番を打つ丸佳浩であり4番を打つ鈴木誠也でした。

その重要な役割を果たしていた丸が巨人へ移籍したことで、鈴木一人に大きな負荷がかかることとなるため、それをサポートする打者が出てくるかどうかが、今季の広島の注目ポイントであったように思います。

そして、そのサポートする打者として、4月中旬頃から3番打者として起用され始めたのがバティスタです。

開幕直後の連敗期から連勝期への転換点となった、4/17の試合から本格的に3番に座ると、そこから長打を量産し、丸の後継の3番打者というシーズン前挙げられていた課題を見事に埋めてみせました。

チームの中で貴重なファストボールヒッターで、かつ圧倒的な長打力を持っているため、前を野間峻祥・菊池涼介ら俊足打者が打ち、後ろに鈴木が控えることから、ストレート系かつゾーン内への投球が増えがちという点が、フィットしたのでしょう。

実際、バティスタが3番スタメンで起用された時の勝率と得点力を見ると、3番スタメン時の方が圧倒的に高く、バティスタの打撃力がどれほどの影響力があるのかがよく分かります。

このように、バティスタの3番定着がチームを変える起爆剤となったわけですが、一つ弱点として「一度調子を落とすと復調までに時間がかかる」という点があります。

そのために、鈴木にマークが集中し、バティスタが不調であった交流戦から前半戦終了まで極度の不振に陥ってしまい、チーム全体の得点力が下降してしまう事態を誘発してしまいました。

その期間、二軍で猛打を見せつけるメヒアが昇格してきたものの、バティスタを代替する存在とはならず、現状の広島打線の中で鈴木と並び立つ存在となりつつあります。

バティスタが3番打者としてハマるかハマらないかが、そっくりそのままチームの得点力に直結しているのです。

②長打を期待できる打者が少ない

昨季までは、上記のように丸・鈴木の両名が得点源として機能していましたが、それ以外にも長打を打てる打者が揃っており、昨季は実に7名が二桁本塁打をマークしました。

そのため、會澤翼やバティスタなど下位に座る打者の長打で得点を奪うことが可能であったことから、中軸の打者が多少不調でも、その他の打者である程度は得点力をカバーすることが可能な陣容でした。

しかし、今季はここまでバティスタ鈴木の両名がチームの総本塁打の約半分を占めており、その他の打者の占める長打の割合が減少しています。

※2018年の丸・鈴木の本塁打数:69本 チーム総本塁打:175本 39%
2019年のバティスタ・鈴木の本塁打数:46本 チーム総本塁打:94本 49%

そのため、バティスタ鈴木が好調で、長打が飛び出す時は得点が入りやすいものの、この両名から長打が消えると、途端に得点が入らなくなるという事態を引き起こしてしまいました。

バティスタ鈴木という、リーグでも屈指の長距離砲の当たりがどちらかでも止まってしまうと、お手上げ状態というわけです。

実際、この両者に当たりが出始めると、周囲の打者も気楽になれるのか、長打を連発するような傾向にあり、直近では、1番に入る西川龍馬や下位に座る會澤翼・三好匠・小園海斗に長打が出ているため、得点の分散が非常に小さくなっています。

バティスタ鈴木に当たりが出るか出ないかは、周囲の打者の心理にも多大な影響を及ぼすのでしょう。

以上2点から、バティスタと鈴木への依存度が非常に高い構成となっているために、連勝期と連敗期の間で大きな得点力の分散が生じていることが分かります。

3.なぜ失点の分散が大きいのか?

続いて、得点と同様に失点も、連勝期と連敗期の間で分散が大きくなっており、その要因を以下にて解き明かしていきます。

①打線の得点力不足

失点の面を明らかにしていくので、得点力は関係ないように思えますが、個人的には過去3年と比して大幅に低下した得点力が、投手陣に負荷を与えているように感じます。

過去3年は、圧倒的な得点力の庇護を受けていたため、広島の各投手は「多少打たれても打線が取り返してくれる」というような気楽な心境で投球を行えていたのではないでしょうか。

制球に難のあるパワータイプの投手が多い広島投手陣にとって、上記のような心境がもたらす、「コーナーを狙わずともゾーンに投げ込めばOK」という投球スタイルは、非常にマッチしていました。

これはまさに黒田博樹の教えである「完璧を求め過ぎない」ことと一致しますが、その裏には圧倒的な得点力による裏打ちもあったはずです。

しかし、今季は過去3年ほどの得点力が見込めないため、投手陣全体で余裕のある投球が出来ていないのではないでしょうか。

特に連敗中は、その傾向が強く出てしまっているように感じます。

得点が入らないために、得点を与えまいとより厳しいコースを狙おうとして、投球数が嵩んだ結果、早々に神経をすり減らし甘く入ったり、力んで本来のボールが行かなかったりと、細かな部分で昨年までと同様に行かないことが増えているはずです。

過去3年は得点力に苦しむシーンはほとんどなかったため、このような状況への対応経験もないことが災いして、失点へと繋がりやすい状況を打破出来ず、連敗が伸びてしまう一因となってしまっているのではないでしょうか。

②稚拙な投手運用

過去3年から、勝ちパターンに組み込まれている投手を点差に構わず登板させるケースが多くあり、今村猛や中崎翔太はここで余計な疲労を蓄積することとなってしまいました。

それは今季も変わらず、上記のように勝ちパターンを担う投手が、ホールドorセーブシチュエーション以外の場面でも多く登板しており、投手運用面では稚拙さを隠し切れない状況が続いています。

昨季までは抜群の得点力と終盤での逆転劇にに支えられていたため、あまり目立ちませんでしたが、得点力の低下と終盤での逆転劇の減少によって、その状況は一変しつつあります。

このような投手運用は、勝ち試合で余計に投手を起用することとなるため、そこでどうしても余計な疲労を蓄積することとなります。

しかし、負けが込み始めると得点力も落ちているため、勝っていたとしても小差の試合が多くなり、疲労困憊のリリーフ投手がそこで失点を繰り返すという構図が出来上がっているのではないでしょうか。

交流戦から前半戦終了までのフランスアは、当然これ以外の要因もありますが、まさしく上記のように、昨年からの蓄積疲労が起因となり、打ち込まれていたという可能性も決して否定できるものではないと思います。

以上のように、失点の分散が大きくなるのも、過去3年圧倒的な得点力の庇護を受けていたものが、途端に無くなってしまったことが大きいように思います。

4.まとめ

・なぜ広島は大型連勝と大型連敗を繰り返すのか?
バティスタ鈴木への得点源としての依存度+心理的依存度が高まったことによる、得点分散の大きさ
過去3年レベルの得点力が期待できないことによって、投手陣がより繊細になってしまっていることや、稚拙な投手運用のツケが得点力の低下とともに表出してくることによる、失点分散の大きさ

以上が本noteのまとめとなります。

直近では、再び9連勝と波に乗り、首位巨人の背中も微かに見えるところまで追い上げてきました。

ただ、今季ここまでの法則に従うと、再び連敗期がやってきてしまうこととなります。

前回の連勝期と比べると、バティスタ鈴木以外からも長打が出ており、得点分散の小さく効率的に得点を重ねることが出来ている点は、異なる点ですし、リリーフも中村恭平・一岡竜司・レグナルトといった勝ちパターンを担う投手に、二軍落ちという思わぬ休息を与えながらの連勝である点も異なる点です。

このようなポイントが、果たして今季の大型連勝大型連敗の波を打ち破るのか。注目してみては面白いのではないでしょうか。

#野球 #プロ野球 #広島 #カープ #波

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