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新外国人3選手は広島にフィットするのか?~DJ・ジョンソン編~

2019年シーズン、広島には実に9名の外国人選手が支配下登録で在籍していました。それだけ多く在籍したために、外国人枠の問題によりチャンスが限定的になった選手も多く、レグナルト・ヘルウェグ・ローレンス・サンタナといった選手が2019年限りで広島のユニフォームを脱ぐこととなりました。

出会いもあれば別れもあるということで、上記のように多くの選手が広島のユニフォームを脱ぐと同時に、新たに3名の外国人選手が2020年のチームに加わることが決定しています。まず1人目が主にリリーフを務めるDJ・ジョンソン、2人目がOF(外野手)がメインのUTプレイヤーであるJ・ピレラ、3人目がこちらもリリーフを務めるT・スコットとなっています。

FAによる大型補強を行わない広島というチームにおいては、外国人選手の活躍度が大きくチームの浮沈に影響するため、4位に終わったチームにおいて、上記3選手にかかる期待は非常に大きなものとなります。そんなところで、上記3選手について各選手の特徴を探りながら、広島の現状のチームもといは日本球界にフィットするのかについて確認し、活躍できるのかを明らかにしていきます。

DJ・ジョンソン R/L 193cm/106kg 30歳

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まず最初に確認していくのは、最も契約を結ぶのが早かったDJ・ジョンソンです。物凄い量のあごひげが特徴的な選手ですが、簡単に経歴を紹介すると、ドラフト指名は受けず2010年にレイズ(TB)と契約してプロ入り。その後独立リーグを経ながら、ダイヤモンドバックス(ARI)・ツインズ(MIN)・エンゼルス(LAA)の傘下チームをリリーフ投手として転々とした後、2016年オフにロッキーズ(COL)とマイナー契約を結ぶこととなります。そして2018年9月、念願のメジャー契約をCOLと結びMLBデビューを飾ることとなりました。そこから2年間で計35試合に登板し、防御率4.88という成績を残し、今オフ日本球界入りを果たすといった流れとなっています。

1.2019年投球成績

そんな苦労人のDJ・ジョンソンですが、投手としての特徴を探るべく、まずは投球成績を確認していこうと思います。

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2019年はMLBで28試合に登板し、防御率5.04と何とも言えない成績となっています。COL所属ということで、高地でボールが飛びやすいことで知られるクアーズフィールドを本拠地とするため、その分を差し引いて考える必要はあるでしょうが。

被打率やバレルゾーンに入れられた打球がリーグ平均以下で、被本塁打も1本に抑えながらも防御率が良くない理由としては、BB%が16.4を記録する制球力の悪さでしょう。ただストライクゾーンに投げ込む割合は46.0%で、MLB平均の41.8%以上ですから、単純な制球面の問題というよりは、MLBレベルではボールゾーンのボールを振らせるだけの球威がなく、打者に見切られていたと見るべきです。

その他、SwStr%(空振り率)等はMLB平均レベルでこれといった特徴はありませんが、GB/FBがリーグ平均以上の値を記録していることから、ゴロを打たせる投手であることが分かります。長打を浴びづらいというのは、1点が重くなる試合終盤を担うリリーフにとっては、重要な要素でしょう。その分味方の守備力に依存してしまうリスクもありますが‥。

最後に左右打者別の成績を見ると、左打者の方を得意としているようで、被打率こそ高いものの、K%・BB%・OPSといった数値ではいずれも対左打者の方が優位な数値となっています。逆に右打者には、三振を奪う以上のペースで四球を与えるなど、苦手としている様子です。もしかすると、球質にその辺りの秘密が隠れているのかもしれません。

最後に、NPBに来る外国人選手を語らせたら右に出る者はいない、NPB外国人選手好きさんも、DJ・ジョンソンについて既にマイナーの成績から簡易的な考察をされていますが、DJ・ジョンソンと同じ環境でプレーし、ヤクルト入りしたマクガフと比較しても同等の成績ということから、単純な成績面からは活躍するかどうかについて特段文句のつけようがありません

まとめ

・BB%が16.4と高く制球難なように見えるが、ストライクゾーンにボールがいっていないわけではないため、ボール球を振らせることができるかがカギ
・グラウンドボールピッチャーの傾向を示し、左打者へ強さを見せているのが特徴
・AAAの成績はあまり良くないが、ヤクルトで活躍したマクガフと同様の成績傾向を示しているため、心配は無用

2.球質

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続いて球質について、トラッキングデータを基に確認していきますが、まずDJ・ジョンソンの持ち球としては、4シーム・カーブ・カットボール・チェンジアップの4球種となっています。ただ投球割合の99%を4シームとカーブで占めるなど、リリーフ一筋の投手らしく2ピッチの様相を呈しています。

4シーム93.2マイルとMLBでは平均レベルのスピードで、XWOBAは.394とMLBレベルでは通用する代物と成り得ませんでしたが、一方でMLBレベルでも非常に機能したのがカーブです。平均球速82.5マイル(132.7km)とかなり速い部類のカーブで、Whiff%(空振り率)は36.7%を誇り、被打率も.227ですからDJ・ジョンソンの生命線となるボールと言えるのではないでしょうか。

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ここからは本格的なトラッキングデータを用いて、球質を分析していきます。この表の見方としては、横軸が正の方向がスライド成分を示し、負の方向がシュート成分を示します。また縦軸の正の方向がホップ成分を示し、負の方向がドロップ成分を示します。

以上の認識を持って見て頂くと、4シームについては、時折非常にスライド成分の多いカット気味のボールを投じるなど、横変化平均的なボールよりスライド成分の強いボールとなっています。縦変化はホップ成分が平均より若干小さいくらいで平均的な変化量です。以上より、4シームは縦変化は若干ドロップ成分が強く、横変化はスライド成分が少々強めのボールとなっていたようです。おそらく横変化にカット要素が入っていたために、左打者への成績が優位となっていたのでしょう。ただMLBレベルで痛打を浴びたのは、球速やスピン量が平均的だったことで、打者からは見慣れたボールとなっていたためと推測されます。

一方でMLBクラスでも通用していたカーブはどうでしょうか?2641回転とMLB平均の2494回転を上回る回転数を誇ります。また変化量にバラつきこそありますが、平均を見ると横変化のスライド成分が非常に小さく、縦変化もドロップ成分が大きく、平均的なボールと比べて真下に落ちるような変化となっています。そのために打者からは捉えづらく、空振りも多く奪うことが出来たのでしょう。

その他のカットボールやチェンジアップは母数が少なすぎるため、あまり参考になりませんが、一応紹介しておくと、カットボールは縦変化・横変化ともに平均的な変化で、チェンジアップはドロップ成分が大きく、落差のあるボールと言えるでしょう。ただし4球と1球のデータを見ているため、あくまで参考程度の分析ということはお忘れなく‥。

まとめ

・ストレートは球速やホップ量などは平凡だが、スライド成分強めで左打者への強さの源となっている
・カーブがマネーピッチで、真下に落ちていくような軌道を描くのが特徴
・カットボールやチェンジアップという持ち球もあるが、使用は限定的

3.広島にフィットするのか?

フィットする可能性高(80%以上)

以上より簡易的に分析してみましたが、ここまでの情報を基にすると、DJ・ジョンソンが広島はもとい日本球界にフィットする可能性は非常の高いと感じます。そのように感じる理由としては大きく2点が挙げられます。

①P・ジョンソンと同様のパワーカーブ使い

2019年シーズン、日本で衝撃をもたらしたのが、阪神に入団したP・ジョンソン(以下PJ)のパワーカーブでした。時には140㎞に迫る球速も記録しながら、急激に滑り落ちていくこのボールは、日本球界にいないタイプのボールであったことから非常に有効で、対戦した打者の多くをきりきり舞いにする代物でした。

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そのPJとDJ・ジョンソンのカーブを比較してみると、PJのパワーカーブはスライド成分多めでドロップ成分が平均的なのに対し、DJ・ジョンソンのパワーカーブはシュート成分とドロップ成分が強い変化となっています。DJ・ジョンソンのパワーカーブは真下に落ちるような変化となっているため、PJのパワーカーブよりも空振り率は高くなっているのでしょう。

ただPJは非常に回転数の多いパワーカーブを投げ込んでおり、打球を上げづらくゴロを容易に打たせることのできる球質となっています。

以上より、この両者のカーブは同じパワーカーブという括りとなるでしょうが、変化としては別物と捉えるべきでしょう。ただ別物とはいってもDJ・ジョンソンのカーブもPJを上回るような威力を見せるボールなので、そのようなボールを決め球として持っているということは、大きな強みと成り得るはずです。

PJの存在により、セリーグ各打者はパワーカーブに対して多少の慣れが生まれていることが想像されますが、上述の通りPJのパワーカーブとは質も多少違うため、慣れという面では問題ないと思われます。加えてMLBレベルでは平均的なストレートも、NPBレベルだとかなり速いクラスとなるため、MLB時代にネックとなった球威面も柔らかいマウンドに慣れられれば、問題無いでしょう。

あとは日本の文化や気候といった、投球以外の部分にいかにフィットできるかがカギとなってくるのではないでしょうか。

②現広島リリーフ陣にいない存在

今の広島リリーフ陣を見返してみると、中心となるフランスア(スライダー/チェンジアップ)・中村恭平(スライダー)・菊池保則(フォーク)・一岡竜司(フォーク)・今村猛(スライダー)・中崎翔太(スライダー)の投球は、スライダー・フォーク・チェンジアップといった変化球がメインとなっています。ですので、そんな中パワーカーブをマネーピッチとするDJ・ジョンソンは投手陣の中でアクセント的な存在となることでしょう。

あとは変にカットボールやチェンジアップを混ぜようとせず、ストレートとパワーカーブの2ピッチで押し切ることを考えるべきでしょう。正捕手・會澤翼の配球は、どちらかというと2ピッチで押し切っていく方に寄っているため、その辺りの心配は不要かと思います。

チーム内での役割としては、フランスアが2019年シーズンでは、実に8度のセーブ失敗とクローザー適性を示せなかったため、このDJ・ジョンソンがクローザーに入ることも十分に考えられます。グラウンドボールピッチャーで味方の内野守備に依存するケースが多いでしょうが、奪三振能力に問題はなく、支配的な投球が期待できそうなDJ・ジョンソンにとっては適任でしょう。DJ・ジョンソンがクローザーもしくはセットアッパーにバッチリハマることが、試合終盤に脆さを見せた2019年シーズンのチームに変化をもたらすことでしょうし、チームの優勝へ向けた一つの必要条件となるのではないでしょうか。

データ参照 Baseball Savant(https://baseballsavant.mlb.com/)
      FanGraphs(https://www.fangraphs.com)

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