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朝比奈まふゆについて考察。まふゆにとって自分とは

0.はじめに

  こちらの記事にて各メンバーを軽く紹介・考察しているので、是非ご覧ください。


1.囚人

  さて、前回の記事でアクアリウムに生き物がいない理由を問いましたが、皆さんなりの解釈や考察はできたでしょうか?
  私の答えとしては『囚われのマリオネット』にありました。

イベントストーリー 囚われのマリオネット 第4話 「籠の中のマリオネット」

  まふゆは展覧会のマリオネットを見て顔色が蒼白になり、気分が悪くなります。まふゆは基本理解できないモノに対してはわからないと言いますが、マリオネットを見て考えた結果『気持ち悪い』という答えに辿り着きます。
  まふゆはマリオネットを見て何を思ったのか。それは自分に似ているからです。

イベントストーリー 囚われのマリオネット 第5話 「同族嫌悪」

  私の意思ではない、他の誰かに操作されている。そんな気持ちになったのでしょう。でも、まさに今のまふゆはそんな感じです。 
  そのような気持ちになるのは果たしてマリオネットだけでしょうか?そうですね、私は水槽にいる魚なんて人の意思で餌を与えて住処を移動させて…なんて考えると動物もそう捉えることができてしまうのではないかな。


2.自分を見失う

  昔、まふゆは普通の子でした。しかし家庭環境や学校関係、まふゆ本人の弱さが影響し今のまふゆが形成されていきました。

メインストーリー 第13話 「どこにもいない”私”」

  まふゆの両親(特に母)は娘に対して選択肢を与えないような言葉を投げかけます。特に理由を伝えることもせず。

メインストーリー 第13話 「どこにもいない”私”」

  そして、まふゆは自身の意思ではなく親の意思を優先し行動することになるわけです。ここだけでも辛い選択ですが、学校内でも選択を強いられます。

メインストーリー 第13話 「どこにもいない”私”」

  これは『優等生だからゲーセンや遊ぶ時間は存在しない、朝比奈まふゆは行かない』というわけではなく『朝比奈まふゆは自身で選択することができなくなっている』わけです。
  別にここでクラスメイトが「遊びに行く暇ないに決まってるでしょー」と言わなければまふゆは行けました。
  まぁ、それを両親に言えば『友達は選びなさい』と言われるだけなのですが…

メインストーリー 第13話 「どこにもいない”私”」

  教師にも自身が意見を言えません。まふゆはとにかく『周りに合わせる』ことに特化していきます。

メインストーリー 第13話 「どこにもいない”私”」

  結果、自分自身の意見がわからなくなり自分を失います。まふゆがこうなってしまったのは誰の責任なのでしょうか。回避する術はなかったのか。

  おそらく、朝比奈家でしょう。


3.愛はどこに

  父はお金をだしてくれて、娘に対してしっかりとサポートしているように見えますが、自身の意見を押しつけています。また、母に関しては自身の価値観までもを娘に投影させています。母が好きなものは娘も好き。

イベントストーリー 囚われのマリオネット 第3話 「もっと知りたくて」

  今のまふゆは残念ながら断る術を持ち合わせていません。というか断る理由を言えないでしょう。何故ならまふゆにとって人形展も絵画展も『自分が理解できない』のだから。そして、母が絵画展好きなら行くしかないのです。

  しかし、母のこの一貫としてブレない娘に対する想いには一切の悪意はない。それは娘への愛なのでしょうか。

結論から言えばNo だ。

  まふゆの感情は明らかに不足している。理解できないものはわからないのだから。

メインストーリー 第13話 「どこにもいない”私”」

  ごく普通の一般的な家庭だ。しかし、これが本当に愛されているか。と聞かれると疑問だ。僕はこれを『愛されている』とも捉えることができるし、『好かれている』とも捉えることができる。ここの差がまふゆの溝を大きく深める要因になると考える。
  そもそも、親に嫌われたくないのであれば貴方はどういう行動を取るだろうか。単純明快、親に言われた事を実行し完遂するだけだ。そこに親は子に対しての『愛』は存在するのだろうか。0%に近いだろう。そして親から『愛』を学ぶことのない子は『愛』を知らずに成長してしまう。

イベントストーリー 灯のミラージュ 第5話 「りんごの夢」

  まふゆは昔であれば好きなものがあった。熱を出した際、母はリンゴは擦りむいたほうが食べやすい?普通に食べたい?と選択肢を用意している。しかし、答えは意外にも選択肢にはない「うさぎさんの形にむいてほしい」

  ここでわかるのはやはり母は一貫としてブレてないということ。人形展と絵画展でもそうだったが、選択肢を与えることが実は『別の考えを出させない』という意味にもなってしまうということだ。
  ただ、ここではまふゆはうさぎさんの形で食べたいという第三の答えを導き出す。つまりは

母が提示してきた答えの中に自分の好きなものがなかったから、自分の意思で答えを出したのだ。

  母に対する愛ではなく、自分自身の欲求とその欲求が手に入る喜びを優先している。ということは、欲求や喜びの先にあるのは愛であるということもわかる。

  つまり、まふゆは小さい頃に『愛』は会得しているのだ。ではなぜ失ってしまったのだろうか。


4.母

  それは母が娘に対する『愛』が徐々にズレてしまったからだ。まふゆは成績優秀で運動もできる言ってしまえば優等生だ。娘が優秀であれば、娘をより大事するのは当然のことだろう。では、娘が優秀であれば娘に何を求めるだろうか?
  優秀であればあるほど選択肢は大きく広がる。分かりやすく言えば偏差値が高ければ行ける学校の選択肢が広がる。しかし、母は娘に対して選択肢を狭めたのだ。優秀であればおのずと娘に期待してしまうのはごく自然なことだ。有名校や学力の高い学校に行ってほしいと願うのはおかしいことではない。そして、娘も点数が高ければ喜んでいる。であれば、学力の高い場所に行かせることは娘も喜ぶだろう。という思考になってもおかしくない。

  こうなってしまうと『愛』はズレる。娘への期待。そして私の思考は娘と同じと固定させてしまう。もはや娘に対しての攻撃でもある。

  そしたら娘は、まふゆはどうなるだろうか。母の価値観の押しつけ攻撃を受ければ母の言うことを聞かないとどうなってしまうのだろうかという不安を過るのではないか。そうすれば、まふゆも『愛』がズレていく。
  確かに母に対して喜んでもらいたいという『愛』は存在するが、それよりも母から意見を背いた時の不安が大きかったのだろう。そうなれば『愛される』よりも『好かれる』に近くなる。自身の喜びよりも他人の喜びを優先することによって。


5.『ジャックポットサッドガール』

  そんなまふゆがマリオネットを見て『気持ち悪い』と表現したイベントストーリー、囚われのマリオネットのテーマソングを見ていこう。syudou氏による『ジャックポットサッドガール』

標準偏差以内の人生
表情殺して腐った品性
ほらほら気づけばまた
ただただ過ぎ行く日々

『ジャックポットサッドガール』

平均周辺でバラつきを確認する(=標準偏差)人生なんて楽しいのでしょうか?普遍的な人生を歩もうと?表情も殺して品性すら腐っているのです。そりゃ楽しいがわかりませんよ。日々が過ぎていきます。

表現欲も非凡な才も
漫然と生きてちゃなんもなんないの
ヤダ ヤダ アタシはヤダ
嘆けど変わらぬまま

『ジャックポットサッドガール』

  ぼんやり(=漫然)と生きてれば何もならない。ただ嘆いてもそれは、漫然を改善しなくてはいけない。

受け入れ難い心情をねじ込むのが愛なんだ

『ジャックポットサッドガール』

  『受』+『心』=『愛』
悲しいですが、まふゆにとって母の言葉は受け入れ難いけど私の心にねじ込むのが『愛』と定義してしまったのです。

アタシはジャックポットサッドガール
分かり合えぬまま 点と線でエンドロール描く日々の中
誰にも言えないまんま抱えた想いこそ価値があるんだ
探していた答えだって 未来みたいに手の中に

『ジャックポットサッドガール』

ジャックポット=大当たり・賭け金/懸賞金
サッドガール=悲しい女の子(メンヘラサブカル女子)・メンタルの弱い人/人生の意味や自身が何者なのかを問いがち(英語スラング)

  まふゆとして語るのであればやはり優秀な子ですからね。皮肉にも親からすれば大当たりなのかもしれません。
  まふゆの抱えた想いと探していた答えが身近にあれば良いですね。

正論ばっかじゃちょーつまんない
人生は一種のジョークなんだ
ハローハロー気の向くまま
その音鳴らせばほら

『ジャックポットサッドガール』

  ここの歌詞は母に向けて言ってることでしょう。

精神相場はちょー不安定
安定な策とかホント退屈さ
見て見てアタシの中
心の奥底にある

『ジャックポットサッドガール』

  本当のまふゆは心の奥底にあります。それを見つけることができる可能性は奏です。

黒く澱んだ水槽に映るのは微笑だった

『ジャックポットサッドガール』

  黒く澱んでいるはずなのに、微笑とわかる。それは既に諦めているからなのか。ようやく見つけたんだという安堵なのか。

ジャックポットサッドガール
分かり合えずとも 心の臓のビートを強く響かせて
胸張り正々堂々正面突破で間違えるんだ
隠し持った似合わないナイフ 異端ゆえの最先端

『ジャックポットサッドガール』

  成長したまふゆであればこれほどの事をしてほしいですね。でも怒り方もわからないかもしれません。何故なら似合わないし異端のナイフですから。

ねぇ先生 ここ無法地帯
あなた曰く既に廃れ枯れたアネクメーネ
草木生えず人類の住めなくなった
チープでキッシュな小惑星

『ジャックポットサッドガール』

  アネクメーネとは人が住めない場所。

  安っぽくて(=チープ)雑な造り(=キッチュ)の小惑星

ねぇ先生あなたバカじゃないの
未だ滾る感情を知らないの
凝り固まってんならお勉強
ここで無垢で無知で無為な賛美を見せつけるわ

『ジャックポットサッドガール』

  まふゆが「無垢で無知で無為な賛美を見せつける」なんて恐ろしいです。それは本当に賛美ですか…?

それでもジャックポットサッドガール
分かり合えるかな どんな不安も怠惰もみな抱えたまま
誰にも言えないまんま 自分のまんまで勝ち上がるんだ
探していた答えだって 未来みたいに手の中にあった

『ジャックポットサッドガール』

  まふゆのままで勝利することは可能なのか。それは今のまふゆの勝利?それとも理解できたまふゆの勝利?手の中にあったのであればそれは後者ですね。


6.変化は恐怖ではない

  忘れていた記憶を取り戻すことに成功したまふゆ、それは幼少期のまだ『愛』を持っていたまふゆだ。

イベントストーリー 灯のミラージュ 第5話 「りんごの夢」

  でも、まだ完全には気持ちを理解できてはいない。『あたたかい』という一般的な感想にすぎない。母の愛、まふゆ自身の愛に気づかなかったのだ。いや、まだ気づけないのだ。

イベントストーリー 灯のミラージュ 第6話 「笑ってほしい」

  それでもまふゆは探ろうとしている。本当の自分に出会う為に。奏の曲とりんごを食べた時のあたたかいを探している。
  これは共通して『家族』が影響していることがわかる。そして、徐々に奏が笑顔になればあたたかくなるという感情が沸々と出てくる。 

  あたたかいという感情を手に入れたまふゆは他人に対しても自分自身に対してもその感情を共有することに成功できた。しかし、まふゆ自身はわからないという。『あたたかいという感情』を理解するまでには至らなかった。

イベントストーリー 灯のミラージュ 第8話 「ほんの少しの灯」

  そんな『演じてきたまふゆが崩壊した』場面が再度登場する。母からりんごという単語が出てきた時のことだ。別に朝比奈家ではりんごを数年単位でしか買えない家庭とは思えない。おそらく自分を失ったまふゆであれば『ありがとう、お母さん』の一言で終わっていただろう。でも、今のまふゆは違う。

イベントストーリー 灯のミラージュ 第8話 「ほんの少しの灯」

  うさぎ...…
とボソっと呟く。それは今までのまふゆでは起きえなかった出来事だろう。『演じてきたまふゆが崩壊した』瞬間である。でも、まふゆはまだ成長しきれていない。幼少期であればうさぎさんの形にしてほしいと言っていただろう。まふゆはまだ、迷って足掻いて自分を探している。

イベントストーリー 灯のミラージュ 第8話 「ほんの少しの灯」

  歩みを止めることはない。まふゆは変化している。それは自分が恐れていたことに違いない。でも今はニーゴがいる。ニーゴがいれば、自分が恐れていた変化に怯えることはない。ニーゴとともにこれからも成長していくまふゆに期待したい。

  そんなまふゆの大きな成長をもう一度『再生』しようじゃないか


7.『再生』

君と笑ってたこと独り思い出した
何故か感情(こころ)がただ騒ぎ続けていた

『再生』

  君…母でしょうか。奏でしょうか。

これでよかったのか?どこで間違えた?
この胸の熱が冷めないのは何故?

『再生』

  正解か不正解か、それは先に進めた者しかわからない答え。

浅い浅い悪夢(ゆめ)なら全て許せたのに
さらりさらり落ちてく何もかもが全て

『再生』

  まだ、夢なのか悪夢なのかわからないように感じます。でも、変化した今のまふゆであれば本質的には悪夢と感じているでしょう。

何故か寂しくなる

『再生』

  浅い悪夢ではなかった。それはまふゆにとって辛い日々だったのだから。

枯れた心のまま味のしないままで
慣れた日々の中で明日もこのままかな

『再生』

  絶望していたまふゆは当時、そのように感じていたのでしょう。

これでよかったのか?どこで間違えた?
やり直せるなら何になれるかな?

『再生』

  『わからない』からこそ、やり直せることを想像しても「何になれるかな?」と未来の自分を想像できてません。勿論何をしたいかも想像できていない。

浅い浅い夢から零れ落ちた言葉
遠い遠い昔に今も戻れるかな

『再生』

  悪夢から醒めたまふゆは未来を想像できません。だから過去に縋るのです。

浅い浅い夢から覚めてしまえたのに
さらりさらり落ちてく何故か寂しくなる

『再生』

  過去に縋っても戻れない。それに寂しくなるのです。過去みたいな日常は今は来ないと。そして未来にも何故か寂しくなるのです。

浅い浅い夢から零れ落ちた涙
遠い遠い昔に今も戻れるなら

『再生』

  寂しい気持ちになっても、それでも昔に戻りたいと今からでもいいからと。私が私であった頃に戻してほしいと。


8.自分探し

  そんなまふゆに転機が訪れる。それは外部との対話。それは朝比奈まふゆとしてではなく『雪』として。
  レオニの一歌と穂波と交流することになるのだが、そこでまふゆの歌詞に対して直接意見を言われることになる。

イベントストーリー 交わる旋律 灯るぬくもり 第7話 「曲にこめる想い」

  まふゆにとって歌詞を書くことは自分を探すために感情を書き下ろすだけなのだ。特にOWNの時とニーゴの時では感情を吐き出し方が違うので、受け取り方も全然違う。

イベントストーリー 交わる旋律 灯るぬくもり 第7話 「曲にこめる想い」

  まふゆの歌詞は常人では到達できない。それは奏が一番理解している。『絶望の底みたいな世界、でもその中にも、小さな光が見えるような気がした』と。

イベントストーリー 交わる旋律 灯るぬくもり 第7話 「曲にこめる想い」

  まふゆは潜在的にあった気持ちを徐々に表に出せるようになっている。「誰にも聴いてもらえないよりは、誰かに聴いてもらえたらいいって」
そして、まふゆは誰かに聴いてもらえるのであれば『歌詞に何かをこめたほうがいい』という考えになっている。

イベントストーリー 交わる旋律 灯るぬくもり 第8話 「冷たい雪はあたたかく溶けて」

  奏の助けになれたこと、それだけで、胸があたたかくなったのだ。ありがとう。奏に感謝されて、まふゆの行動で奏の人脈が広がって、まふゆ自身も成長に繋がって

まふゆが決めた選択が正しく喜びになっている

 あたたかくなる理由はわからない。でも、その感覚はまふゆにとって

イベントストーリー 交わる旋律 灯るぬくもり 第8話 「冷たい雪はあたたかく溶けて」

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