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宵崎奏を考察。奏にとって作曲とは

0.はじめに

  こちらの記事にて各メンバーを軽く紹介・考察しているので、是非ご覧ください。


1.奏は強くはない

  今の奏の動力の1つとして『朝比奈まふゆを救う』という目的がある。勿論、ニーゴとして活動していく中で誰かを救う曲を作り続ける目的もある。ただ、父以外にも近くに救える存在はまふゆなのだ。

メインストーリー 第18話 「それでも救いたいから」

  まふゆが「父の呪い」と言ったように、奏は音楽を作り続けることにしたわけだが、そもそもニーゴミクの助言がなかったらまふゆよりも先に離脱するところだったのだ。それぐらいメインストーリーの中盤で奏はかなり思い詰めていたということがわかる。特段、奏が精神的にも強いとは思わない。もし今後まふゆと同等、あるいはそれ以上に大切な人が奏が救えないと判断した場合は一気に崩れ落ちるのは容易に想像できる。

メインストーリー 第12話 「ただひとつの歌」


2.一歩ずつ掬う

  実は奏バナーは少なく『カーネーションリコレクション』と『いつか、絶望の底から』の2つしかない。しかし、ニーゴのメンバーは奏の曲に救われてここにいるのでつまづいた時奏がそっと寄り添う曲を出してくれる。解決にはなってないけどその時の気持ちの安らぎにはなっている。ので奏バナーでなくとも奏が絡んでくることは意外にも多い。

イベントストーリー 囚われのマリオネット 第8話 「わからない、けど」
イベントストーリー 満たされないペイルカラー 第7話 「認められたいなら」


3.一歩ずつ掬われる

  勿論、奏も助けられる場面はある。特に瑞希の存在は大きい。

イベントストーリー シークレット・ディスタンス 第7話 「ひと時の幸福」

  宵崎奏にとって昔の思い出は『戻ることのない日常』だから思い出に蓋をしていた。しかし、そんな昔の思い出は思いがけない形で誰かを救える材料になったりもする。ただ、他のメンバーは救われても奏には母がいないという不安要素がある為、解決の難しさが物語っている。

イベントストーリー カーネーション・リコレクション 第6話 「忘れていた幸せ」


4.奏の制限

  奏は今は自由の身で制限なく行動できているが、奏に立ちはだかる壁は自分自身にも表れる。例えば、父の想いを継承して「どんな人でも救える曲を」作り続ける奏は父には出来なかった。
それは、父が倒れたということもあるが大前提として父には『お金を稼ぐ必要』があった。

メインストーリー 第11話 「幸せになる音楽を」

  このセリフは「僕が望む、誰かを幸せにする音楽なのだろうか?」に続くのだが、それとは別に父の想いが見える。父としては『生活のための曲作り』もしなくてはならない。しかし、奏はその制限がなく自由に曲作りができる。だからこそ、父からのアドバイスとして「奏はこれからも、奏の音楽を作り続けるんだよ」という「誰かを幸せにする音楽」もそうだけど『誰にも縛られない自由な音楽を作り続けるんだよ』という風にも聞こえるのだ。

  それは突如として父からの挑戦状の如く現れる。父が倒れることで『縛り(=制限)』が設けられたのだ。
母を既に失い、父は形だけが存在している。奏にとって『家族』の存在は大きかった。幸せ”すぎた”のだ。
  もう失いたくない気持ちが心の奥底にあって父の言葉が呪いのように奏を縛っている。父の想いとは違う方向に進んでいると…そう感じるのだ。

イベントストーリー カーネーション・リコレクション 第6話 「忘れていた幸せ」


5.『カナデトモスソラ』

  ここまで、カーネーション・リコレクションまでのストーリーを巡ったので、カーネーション・リコレクションのテーマソングといえば良いのだろうか、振り返ろうと思う。ササノマリイ氏による『カナデトモスソラ』

想い出辿るたびに ひどく
押し潰されそうになる けど
逃げ込む場所なんてないからさ
繰り返す自問自答 ああ。

『カナデトモスソラ』

  奏の心情を分かりやすく説明してくれています。思い出に蓋をして、救える曲を作り続けると言い聞かせる。

いつもそうやって (まだ)
すり減らしてって (まだ)
気づいたら何も見えなくなってた
わからないものが
つもり つもる まえに
ほら

『カナデトモスソラ』

  しかし、カーネーション・リコレクションで奏を掬うのは瑞希でした。

拒んだもの多すぎて
見えないものばっかみたいだ
ちょっと触れようとしてみてもいいかな
伝えたいよ きっと無理かもしれないけどどうか
ねえもっと ねえもっと 見たいよ
知らない世界で見つけたイメージを
音にするから

『 カナデトモスソラ』

  知らないモノに触れるというのは挑戦であり恐怖でもある。知らないスポーツをやってみる、上手くできるかどうかわからないけど。でも。知らない人に話しかける、仲良くなりたいけど仲良くなれるかわからないけど。でも。奏はインプットする(=世界を取り込む)場面が少ない。だからこそ、瑞希のように『知らない世界』に連れてくれる人が必要なのだ。そうすることで、奏のイメージが曲になりアウトプット(=世界に発信)することができる。

変わらない景色だけが あれば
かまわないと思ってた でも
一つだけの願い事 描いてみた
意味なんてない けど

『カナデトモスソラ』

  奏にとって変わらない景色とはなんでしょう。家族みんなで仲良く過ごしている時でしょうか。ニーゴのみんなと曲を作れることでしょうか。奏にとって家族は幸せすぎました。『代わり』はあっても『変わり』はない。意味がないたった一つだけの願いがあるとするなら

幼少期のような、家族団らんをしたい

いつも自分のせいだって
息を吸うだけで やっと
ずっと籠の中塞いでいたんだ
単純明快なストーリー
求めてるわけじゃない
ただ声が聞きたい

『カナデトモスソラ』

  まだ解放することのない蓋。奏の精神も身体もボロボロになってしまうのは時間の問題。

痛いよまだ 言葉が
ずっと首絞めてくるけど
そっと閉じた目も少し痛いけど
伝えたいよ きっといつか
わからないけど今も
ねえもっと ねえもっと 見たいよ

『カナデトモスソラ』

  奏は自分が幸せになる世界を見たい。父の言葉が奏を制限をしていて苦しくなっても、一筋の光を探している。

拒んだもの多すぎて
見えないものばっかみたいだ
ちょっと触れようとしてみてもいいかな
伝えたいよ きっと無理かもしれないけどどうか
ねえもっと ねえもっと 見たいよ
知らない世界で見つけたイメージを
壊れかけで咲いた不確かな欠片
音にするから

『カナデトモスソラ』

  どれだけ形が不格好でも、奏なら音にする。私なら音にさせてみせる。確固たる意志が伝わります。

ゼロから曲を作る奏だからこそ。

なにもないのに なにかもとめて
なにもないまま あしたをとじた
なにもないけど なにもないから
ここでみつけた このメロディ

『カナデトモスソラ』

 

6.幸

  奏はどんな曲を作りたいのだろうか。いや、勿論救いの曲を作るというのは理解した。しかし『救いの曲』を作ることは私にとっては『義務』に近い。

メインストーリー 第10話 「足りない音」

  幸せ
幸せとはなんだろうか。父の曲を聞いている時の母はすごく幸せそうだったという。心がポカポカすると。奏の目指す幸せはそんな自分が味わった感覚を他人にも知ってもらいたい。感じてもらいたい。それが始まりだと思うわけだが…今の奏の状態を見る限りとてもじゃないが作曲が『義務』に見えるのだ。まるで父の『養う』のように。

イベントストーリー いつか、絶望の底から 第7話 「そして、巡り会う」

  小学生の頃の奏と中学生の頃の奏とは明らかに作曲に対する向き合い方が変化している。それは父の状態であることは明白。
  小学生奏は「聴いた人を幸せにできる曲」を作っていた。それが中学生奏は「どんな人でも救える曲を」目的が変化している。でも、私は奏が本当に作るべき曲は後者ではなく前者にあると思っている。幸せと救い。似ているようで全く違う。
  幸せは受け取り側の感情メーターが上がることだ。幸せは受動的である。自分ではない他の作用によって現れるモノだ。対して、救いは能動的。そして能動的な救いは『良くない』のだ。何故か?それは『他人への依存』が関係する。

  他人がいないと成立しないモノは他人が居なくなった時、無力になる。つまり奏にとって「どんな人でも救える曲を」という目的は『奏の見えうる範囲で皆を救えてしまえたら役目が終わる』のだ。しかし「聴いた人を幸せにできる曲」であれば、自分の知らない場所で『勝手に幸せになってくれる』
勿論、それを知る術がないのだからそれはそれで辛いとなるかもしれない。
  でも、他人への依存を考慮した際に奏がどんな曲を作るべきかは小学生時代の奏のような思考が必要だ。

イベントストーリー いつか、絶望の底から 第8話 「微かな光のほうへ」


7.『トリコロージュ』

  『いつか、絶望の底から』にも触れたので、テーマソングである『トリコロージュ』にも触れていきたい。煮ル果実氏による『トリコロージュ』

この生活の虜になっちゃうよLady
光を失った おさがりの宝石を
永久に纏ってく

『トリコロージュ』

  家族団らんが奏にとっての生活(=生命活動)の虜であれば嬉しいですね。
おさがりの宝石。光は失っている。でもそれを奏は永久に纏う。
  つまりは『父(=おさがり)の曲作り(=宝石)センス(=輝き)』を奏が継承する。

救われたあの日から 救いが義務になるなんて
まるでフィクション トレパネーション
受けた気分になってんだ
足枷と腐りに縛られて たった一度の光出会うため
この部屋でずっと忘れた 何かを待つ囚人

『トリコロージュ』

  やはり『救いが義務』になってるのかもしれません。奏にとって救われた日というのはいつでしょうか。もし既に来ているのであれば、おそらく『父が生存確認できた日』でしょう。父から貰った失った宝石の輝きを取り戻すには奏しかいませんから。
  トレパネーション、聞き覚えのない用語ですが簡単に言うと『頭蓋骨に穴を開ける療法』なので、奏にとって頭に穴が開くような出来事で作り話だと思いたい。そんな気持ちが伺えます。
  足枷~ からは『カナデトモスソラ』でも私の言葉でもやはり父の言葉に苦しめられてると推察できます。

出されたものは 満遍なく残さず平らげて
優等生な屍人 誰よりも無個性だった
住めば都って暗い歌 また何度も何度も吐き捨てて
挙句の果て 食べる行為が それ自体が苦手になった

『トリコロージュ』

  ここら辺はまふゆが非常に当てはまるのですが、奏目線で語るとすればやはり、食事は奏にとって優先度は低いですからね。食べる行為が苦手というのも理解できます。

夜中 ふと目に映った きらめく仮面の舞踏会
馬鹿らしいほどに 狂おしいほどに
年甲斐も無く惹き込まれたら

『トリコロージュ』

  奏にとってインプットは少ないです。だからこそ、知らない世界を見た時の衝撃は自分じゃないみたいに惹き込まれるでしょう。シークレット・ディスタンスみたいなインプットが重要。

この生活の虜になっちゃうよLady
「よく似合ってる」ってさ 「おあつらえ向き」ってさ
その後のことは見向きもしないくせに
生活の虜になっちゃうよLady Lady
痛みだってさ 癒えぬ傷だってさ
すべて生きてくため 乗り越える試練
他愛もないことでしょう

『トリコロージュ』

  どんな言葉もどんな傷も奏にとってはただの試練。救われる曲を作り続ける壁は”他愛もないこと”なのでしょう。

少し欠けてるピンクオパール 迷子になったアイオライト
埃を被るトパーズ 孤独なアメトリンもみんな
それぞれ着飾って 濁って重くなってって
奈落の底の牢屋に 沈んでいくとしても

『トリコロージュ』

  宝石にも言葉があります。
ピンクオパール』は愛と神秘の宝石で別名『キューピットストーン』とも呼ばれています。また、ピンクオパールにはやり直しのパワーがあります。それが少し欠けているのであれば、愛が欠けている・神秘が欠けている・やり直しが欠けているのでしょう。一番この言葉に当てはまるのは宵崎奏、ただ一人でしょう。

アイオライト』は多色性の石で見る角度や光によって色が変化して見える現象のこと。また、第三の目(=本質を見抜く)を活性化させる石でもある。誠実・貞操・徳望の象徴。それが迷子になっているのであれば、やはりこの石は朝比奈まふゆ他ならないでしょう。

トパーズ』は何と色がいっぱいあるんですね!!自然界のトパーズは通常無色らしいです。そんなトパーズは友情・希望・誠実・潔白が主な言葉です。また、色によっては知性・能力の向上・恋愛を成就など異なる力が宿っているとのこと。それが埃を被っているのであれば東雲絵名でしょう。是非その無色のキャンバスを自分色に染めてください、えななん。

アメトリン』はアメジストとシトリンの2つが生成されるので2つの顔を持つと言われています。調和・安定・光と影という言葉やアメジストの謙虚・心の平安、愛の守護、癒し、気品の象徴、シトリンの繁栄、成功、富、幸福、希望、目標達成、更には『まるで太陽のように明るく光を放つシトリンには、人間関係をサポートするパワーがあると考えられている』とのことです。それが孤独なのですから…もうここまで言わなくてもわかりますね。暁山瑞希です。

ああ 訪れた幸せが ほら
祝祭日みたいに 既に決められた予定調和で
一瞬で失せてしまう 慰めでも構わないよと
希望有りきの絶望にさ 依存 依存

『トリコロージュ』

  希望有りきの絶望に依存しているのも中学生奏以降の思考による曲作りへの考え方ですよね。

生活の虜になっちゃうよLady
「いつか報われる」 「認めて貰える」
気休めの呪文で己を騙すの
生活の終わりはすぐそこLady Lady
妬み嫉み 野次馬 劣等 面子だって
生きてくため乗り越える試練
仕様がないことでしょう

『トリコロージュ』

  それを仕様がない(=しょうがない)と言い放つ奏。思考を少しでも変化すれば、奏自身も変化するのですが…

この生活の虜になっちゃうよLady
当たり障りないような 大衆的な宝石は
もう必要はない 濁りすらも綺麗

『トリコロージュ』

  当たり障りない、大衆的。必要ないと言ってます。まるで『私たちは多数派じゃなくていい、少数派でいい』とも捉えることができます。

生活の虜になっちゃえよLady Lady
「古臭い」ってさ 「金にならない」ってさ
琴線を奏でない 言葉は無用
生活の虜になっちゃったLady Lady
痛みだってさ 言えぬ秘密もあっていいんだ
そう生きてくため纏うものだろ
他愛もないことでしょう

『トリコロージュ』

  ここにきて父に向けた言葉です。こんなことを言える日が来るのでしょうか?来るならとても辛いですが、奏は確実に一歩前に進めています。

  こんなにも奏は未熟で未完成で正解を必ず辿っているわけではないにも関わらず、我々に最後こう言い放つのです。

Lady Lady
あなたも虜でしょう

『トリコロージュ』

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