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窓辺の猫 第五十一回「三毛猫が覚えた四つの言葉」


申し訳ありません。
猫に芸を教えようとしたことがあります。
お手をして欲しかったのです。
いまだにしてくれません。

三毛猫セミは芸達者?

ゴロン/降りて/待て/ダメ。

セミ猫はこの4つの言葉を理解しています。この言葉からわかる事は、猫は褒め言葉を理解しません。
指示しか聞きません。
さらに気分によっては分かっていてもやりません。

「やれやれ、今言うこと聞かないとダメなの。そんな気分じゃないんだけどなぁ。仕方がないなぁ」

指示を聞いてくれても、いかにもしょうがないから従ってやるという態度を示すこともあります。
かと思えば、セミ猫に言ったわけでもないのに、テレビから「ゴローン」という言葉が聞こえると、自分に言われたかと思って、横になって転がることがあります。セミ猫はおそらく飼い主のいうこと以外は聞かない猫というではありません。人間に対する警戒心がとても薄い猫です。

セミ猫が猫らしくない理由

セミ猫はまだキトンブルーの目の頃に母猫とはぐれて我が家の庭に現れたので、猫としての社会性に乏しいようです。
後輩のトンボ猫が来てから、猫らしいワンパクさが増しました。それでも二匹のメス猫は活発とは言えないようです。
SNSなどを見ると、よその猫様たちは、よく鳴き、よく戦闘態勢に入るようです。我が家の猫たちにそんな事はありません。

特にセミ猫はトンボ猫がどたばたやっていると、
「なんなんだろう。この生き物は。はしたないわね」
とぼう然と見ていることがよくあります。

トンボ猫が部屋から締め出されて、扉の前でじっと待っていたり、悲しそうにガリガリやっていたりすると、扉のそばに行って開けてやってくれと人間に頼むことが多いです。猫は他の猫がお腹いっぱいかどうか判断することはできないようです。だからトンボ猫の方がたくさんご飯を食べていても、セミ猫はひと口しか食べないで、もっとご飯が欲しいと鳴くトンボ猫に「かわいそうだから」とご飯を譲ってしまうのです。

別々の部屋でご飯をあげても、トンボ猫がごはんを食べていないんじゃないかと心配してしまうようです。トンボ猫がご飯を食べる姿を見るのが単純に好きなのかもしれません。

人間とは、ボディーランゲージでやり取りすることも多いです。また、猫たちが勝手に人間に押し付けてくるルールもあります。

私や母が編んだものは、全て猫が使えると思っています。

セミ猫は人間の膝に乗りたい時も、人間が膝にひざ掛けをしてくれるのを待っています。何か敷物がないと、人間の膝に座り難いのです。潔癖症でお腹を舐める癖が治らず、避妊手術をして以来、お腹はずっとツルツルです。4年近く前の手術痕はもうほとんど見えません。お腹を舐めたり、お腹をなでられたりすることが、セミ猫にとって至福のものとなってしまったようです。

お腹を撫でられたいときには、ゴロンと転がって仰向けになります。慣れないと顔をひょいと持ち上げて、半目で見てきます。
「早く撫でてくださいな」と人間の都合はお構いなしです。

かと思えば、編み物をしている途中にじゃれついてくるトンボ猫と違って、セミ猫を膝の上に乗せたまま、編み物をしてもじゃれついて来ません。代わりに完成したら自分のものだと考えています。
また作ってもらったものが壊れるのも好みません。カーテンにもじゃれつかず、編み物も破壊しない(マフラー、ぬいぐるみは除く)猫なのです。

枕は猫のベッドよ?!

ところが、トンボ猫がリボンではなく、ロープにじゃれつくのを見て、「いったい何をしているんだろう」という顔で見ながら、疎外感を覚えることもあるようです。

猫をその気にする方法

トンボ猫は基本的に自分の名前しかわかっていません。言葉ではなく、大体の雰囲気で状況を読み取って態度で示すようです。また人間のこともよく観察しています。

「トンボちゃん」
と名前を呼べば必ず来ます。以前は犬のように駆け寄ってきていました。けれども、そんなに慌てて行っても、ごはんをもらえたりおかわりごはんをもらえたり、あわよくばごはんをもらえるなんてことが毎回あるわけではないと悟ったらしく、ゆっくり歩いてくることも多くなりました。

一方で、セミ猫は呼んでも来ません。名前を呼ばれたらその場で立ち止まって必ずお座りして待っています。場合によってはゴロンと横になってしまいます。

そこで考えました。セミ猫には、セミ猫に言わないことが効果的なのではないかと。

「セミちゃん、ゴローン」
相変わらず、わかっていても気分が乗らないとやらないセミ猫。もちろんご飯には釣られません。

代わりにトンボ猫を名前で呼び寄せてみました。

タタタタ。

相変わらず無言の我が家の猫。
するとそれをおすわりして見ていたセミ猫が、近づいてきました。

トンボ猫がブラッシングを嫌がっている隙に、まるでトンボ猫に言う振りをしてゴローンと言ったら、隣でドテッと横になり、仰向けになりました。

天邪鬼なセミ猫。自分の気分が乗らなくても、他の猫がやらないと「私ならできるよ!」と自慢するのです。
朝から一生懸命人間に甘えて見せびらかしてみたり、それが後輩猫の怒りを買って最近飛びかかられてしまうんですね。

セミ猫は人間の前ではすぐにギャッと鳴いて負けた振りをします。噛みつかれるのが嫌なのは本音でしょう。
しかし、ちょっと離れたところで観察するとお返しとばかりに飛びかかって追い回したりしています。

猫をその気にさせるには、嫉妬させたり、敵愾心を持たせるのが有効なようです。

一方で、あまりに楽しい気分にさせると、他の猫も参加してくるので、かわいそうだけれども、できない方の猫を当て馬にしてできる方の猫をやる気にしなければなりません。人間なら、あまりに理不尽な所業です。
セミ猫にできなくてトンボ猫にできることを探してみるものの、より食いしん坊であることぐらいしか見つかりません。

枕がないと人間も眠れないので枕のそばにクッションの寝床を作って退けてもらいました。

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