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ハーブのある暮らし「ベニシアのハーブ便り」

この本を読んで、子供の頃読んだ「赤毛のアン」のことを思い出した。
第1巻が有名だが「赤毛のアン」はシリーズもので、特にアンの新婚生活を描いた「アンの夢の家」の話が好きだった。新婚生活の全てが順調なのだが、かつての教え子との交流や隣人との交流で、アンは自分自身でなく、他人の悩みに触れることになる。
一方では、悲しい話でもあったが、ラストは感動的で、何より、アンの新婚生活が穏やかで、素晴らしかった。
近くに小川があり、アンは森の中をかつての教え子と歩いた。
ご近所問題はあったものの、アンの新婚生活は理想そのものだった。
人生最良の時を過ごしていたアンとベニシアさんの姿が重なった。

ベニシアさんの夢のコテージ

ハーブ研究家のベニシアさんは、長年NHKの番組に出演されており、私も毎回必ず見ていたわけではなかったが、お気に入りの番組の1つだった。ベニシアさんはイギリスロンドン出身のハーブ研究家である。
京都府の大原に移住。『猫のしっぽ カエルの手 京都大原 ベニシアの手作りの暮らし』というドキュメンタリーがNHKで放送されていた。2013年には映画にもなった。

ベニシアさんの著作を手に取った事はなかったが、6月にお亡くなりになったという報道に触れて、今更ながら、ベニシアさんの本を手に取った。生きていらっしゃるうちに読むべきだった。しかし、追悼の仕方は、人それぞれだ。憧れの人の軌跡をたどるやり方もあるだろう。

ベニシアさんの母の実家は建物は著名な建築家の手になるもので、今は歴史的建造物として保護されている。ケドルストンホールと呼ばれる18世紀半ばに建てられた邸宅である。ベニシアさんは子供の頃、その邸宅が建つ村で童話に出てくる妖精のすみかのようなコテージに出会った。将来こんな家に住みたいという理想の姿がベニシアさんの心の中にはずっとあった。
ベニシアさんの著書にこんな言葉がある。
「庭で植物たちと過ごしていると、日ごろの私のストレス、不安や心配な気持ちが溶けていくようでした。ー(中略)ー地球と自分がつながっているような幸せな時間です」
私も我が家の荒れ果てた庭を眺めていて、気持ちが落ち着くことがある。今年の春はハーブを庭にたくさん植えて、香りもよくなった。

この本に書かれていたことではないが、日本人は虫の声を騒音と感じない特殊な感覚を持っているらしいという記事を読んだことがある。他言語はまず子音からとらえるのだが、日本語は母音を聞き取るらしい。それが音を柔らかく受け止めることにつながっている。

ちょうど7月20日から朝に夕に庭で蜩(ひぐらし)が鳴き始めた。この本を読みながら、夜にコオロギや蝦蟇(ひきがえる)の鳴き声を聞いていると、確かに胸につかえている不安が一時溶けていくような気がした。

作ってみたいベニシアさんのレシピ

本の中にはハーブの利用法が多く書かれていた。
イギリスではかつてハイティーは労働者階級、ローティーは上流階級のものだった。しかし、いつしかその垣根もなくなってただのティーとなった。凝ったアフタヌーンティーを楽しむことはいまはめったになくなったらしい。日本ではここ数年”ヌン活”と言ってアフタヌーンティーを楽しむことが流行り、私も影響を受けたが、それは現代の一般的なイギリス式ティーではないようだ。

クリームチーズとフェンネルとスモークサーモンを挟んだサンドイッチはアフタヌーンティーより、ピクニックや日当たりのよい窓辺で食事するのに似つかわしいだろう。
猛暑の夏、私がもっとも作ってみたいと思ったベニシアさんのレシピはレモンバームのレモネードだ。
我が家でレモンバームはもっとも生育の悪いミントハーブのひとつだ。ベニシアさんのレシピには量が足りないので、暑い日に特別に一杯分だけ作ってみたい。

ハーブではじめるSDGs

わたしがこれから環境のためにできることは何があるだろうか。
ベニシアさんは京都府の大原に移住した当初、生活排水が垂れ流しになっていることに衝撃を受けた。そこで、昔の人は何で洗濯や食器洗い、家の掃除をしていたのか調べた。そして、合成洗剤の使用をやめることにした。石油が原料に使われる合成洗剤は分解できずに土壌に残留するからだ。ベニシアさんが大原に移住したのは1990年代である。

今はかつてより、環境に配慮された洗剤が世の中に出回るようになったと思う。しかし、それらを意識して生活することは難しい。私は体を洗うボディーソープには天然由来のものを使っている。しかし、それは私が肌が弱いので自分のためにやっていることだ。家庭菜園にも天然成分の除虫剤を使って、自分でも虫よけを手作りしたりしているけれど、野菜につく虫がうっとうしくてならないこともある。
こんな風に虫がたくさんいて、花が咲き、実り豊かな庭を楽しめるようになったら、私自身が自然物に還って食べられるような存在になれるのかもしれない。

昔の日本人は酢や塩で髪を洗い、コンディショナーに椿油を使っていた。酢は匂いがつくだろうし、椿油は高価だ。なかなか真似できないが、ネットで手作り石鹸キットを購入してみた。すぐに蜜蝋などでハーブ石鹸を作る自信はないが、少しずつ私にあった継続可能なストレスフリーなライフスタイルを模索していきたい。

例えば、トイレや流しの掃除には、重曹と酢を3:1で混ぜたペーストが使えると書いてあった。我が家にはたくさん掃除用洗剤があるけれど、それらを使い終わったら、手作り洗剤を試してみたい。

これからのわたしの夢


今年7月、通信教育ではあるが民間の薬草コーディネーターの資格を取得した。まだこれをどうやって活かせるか考えられていない。しかし、これからもハーブを含めた薬草の知識は自分の中に少しずつ蓄えていきたいと思っている。
私は自然豊かな場所で育った。子供の頃は、景色を眺めるのが好きで、野草もよく摘んでいた。しかし、寄生虫が怖いようなことを言われ、いつの間にかやめてしまった。そのころ、もっとよく野草について勉強していれば、なんとなく恐れるのではなく、正しい利用法が身についただろう。もったいないことをしたと思う。

3年前に実家に戻り、このnoteを始めた。野草やガーデニングの記事をたくさん見かけて、子供の頃の興味が蘇った。庭で家庭菜園を始めた1年目。2年目に花を植え始め、3年目の今年、ハーブをたくさん植えた。
去年同様、猛暑になってローズマリーは枯れてしまった。グランドカバーにしようとしていたタイムは、家族が草と間違えて根こそぎ引き抜いてしまった。
なかなか前進しないガーデニングライフであるけれど、そんな風にがっかりすることばかりではない。思いがけない喜びもある。
冬越しに成功した花。こぼれ種子で芽を出した植物たち。挿し芽に成功したミントやトマト。
noteでは、ミントがカルキ抜きに良いとコメントをもらい、7月からせっせとミント氷を作っている。そのままお茶になってお手軽だ。

私の人生は今混迷を極めていて、悩むことが多い。しかし、ふと窓から見える庭に安らぎがあればいいと思うようになった。窓辺で飼い猫が私の庭作業を眺めていてくれること。猫と一緒に庭を眺められること。

庭の景色を一変させることはできないが、我が家の庭が私の心象風景であるならば、少しずつ改善していきたい。地球と自分がつながっているような、静けさに包まれた素敵な時間を庭にいつか持ちたい。

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