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スポーツコーチの休息

はじめに

こんにちは!

早いもので、もう9月も中旬ですね。

秋リーグももう折り返し、修士論文の研究と執筆に追われる日々ですが、二兎をしっかり捕まえ切りたいと思います。

さて、今回はタイトルにもあるように

コーチの休息についてです。

スポーツ場面では、近年

アスリートセンタード・コーチング

として、アスリートを主体に。
指導者は「化学反応の速度を変化させる触媒のような役割」

として、コーチング場面で心がけるよう提唱されています。

コーチ研修などが全国で実施され

アスリートセンタード・コーチングは、どんどんと広がっていく中で

自分自身も参加した今年の8/20~9/1に同志社大学で開催されていた第73回日本体育・スポーツ健康学会においての、シンポジウムなどでは、アスリードセンタードだけでなく、コーチ、また選手をサポートするアントラージュの幸福などにも焦点を当てられたディスカッションなどがいくつかのセッションで実施されていました。

もちろん、アスリードセンタードの考え方で選手主体で行うことも大切

しかし、選手だけでなく指導者や周りの方々もスポーツを通して、幸福になっていけるようにすることが重要ということだとまとめられていました。

そのことに関しては、自分自身も確かなそうだな。と思うと同時に、とはいいうものの、資金面や環境面で中々難しい現状だなとも感じました。

その中で論文などをあさっていると、今回のテーマでもある
「コーチの休養」について調査を実施し、論文化された研究を見つけましたので、まとめていければと思います。

よければ、ご覧いただきご自身の活動などに活用していただければと思います。


どんな研究?

先述しているように、選手と同様にコーチにも休養が必要だということは、当然のことだと思います。

自分自身もコーチとして活動している中で感じることがありますが、休日や練習とは関係ない時であってもその競技のことを考えたり、競技のための準備をしていることがあったりもします。

もちろん、自分自身はその競技が単に好きなので、それを見ることが休養としての良い過ごし方なのですが、これから先何十年もコーチとして、競技に関わっていく中では、オフの日に別のことを差し置いて、競技のことについて考えなければならない状況などもあったり、休息の概念が曖昧になってしまっている状況もあるのではないかということが問題点として挙げられています。

また、休息を行うにしても、その休養の具体的な中身(身体的・心理的など)については検討されていないそうです。

そこで、今回まとめていく研究はNCAAディビジョンIのコーチ22名を対象に

休養がコーチにとってどのような意味を持つか
コーチングにおける休養の主な障壁
これらの障壁に直面した際に休養を得るために採用した戦略

についてインタビューを行い、まとめた論文になります。

結果・考察

明らかになったコーチの休養に必要な大まかな結果は以下の通り

(a)仕事について考えることの休止
(b)一般的な努力型思考からの休止
(c)コーチング以外の生活への参加

もちろん、上記3つ以外の要素も観察されています。

(a)仕事について考えることの休止

仕事以外のことに没頭して時間を過ごすことで、仕事から切り離すべきである。
これは、仕事以外の活動、特に、吸収力があり、楽しく、現在に集中する必要がある活動に従事することで容易になる。
スイッチオフのさらなる一助として、コーチは通常の勤務時間外に接触する機会を積極的に減らすべきであり、おそらく選手やスタッフと適切な接触理由や時間について規範を定めるべきである。

要は、コーチ自身の趣味などを中心としたプライベートの時間も大切になるということです。

自分自身も若干、趣味ハンドボール・スポーツでもあるので、読書やサウナなどあまりスポーツに関係していないことにも時間を充てられるようにしていきたいなと思いました。
(とはいうものの、その中でもスポーツに応用できそうなものを探してしまうときもありますが)

(b)一般的な努力型思考からの休止

一般的に努力型思考からの脱却を達成するためには、コーチが従事する活動やその物理的・社会的環境は、比較的低い認知的要求のみを課すべきである。
特に社会的環境については、自己呈示の精神的コストを減らすために、コーチは一人で過ごすか、親しい友人や家族と過ごすべきである。

自分自身は、一人でチームを監督・コーチとして運営していくという経験をしたことはないですが

コーチは孤独

というのは、なんとなく実感できるような気がしています。

どうしてもチーム内だと選手と同じようにはいかない部分もあり孤独になってしまうようなこともあるので、1人で過ごしたり、親しい友人や家族と過ごすことで、1度自身の主となるフィールドから離れ、思考をリセットしたり、チーム以外にも自分の居場所があるということを再認識することが重要なのかなと感じました。

また、後半部分に関しては、選手の目標達成のために、スモールステップで目標を設定することの重要性は以前のnoteにてまとめていますが、コーチの目標設定もスモールステップを意識することが「比較的低い認知的要求のみを課す」ためにも、重要なのかなと感じました。

(c)コーチング以外の生活への参加

仕事以外の生活領域を見逃してしまうことへの不満を軽減するために、コーチはこれらの生活領域と関わるための近々の機会(例えば、仕事上の要求が自然に小康状態になるなど)を特定し、それを囲い込むべきである。
組織レベルでは、コーチ教育プログラムは、アスリートへの指導にとどまらず、コーチのセルフケアについても考慮すべきです。
組織は、コーチが高負荷に直面しても精神的に支えられていると感じ、必要な休養をとるための効果的な方法についての情報を得られるように、社会的支援を提供するコーチネットワークやメンタリングプログラムを開発すべきである

こちらも、上記2点に共通している部分も多いですが

要は、休むぞ。といったような意志だけでなく、休むことができるシステムなどを構築しておくことの重要性を述べているのかなと思います。

このことに関しては、個人でできることの範疇を超えた要因も多いと思うので、あまり深く言及できませんが、スポーツの価値などを高めていくためにも、スポーツ界にとって今後の重要な課題なのかもしれません。(コーチの給料や労働基準法のような法律など?)

感想

また、この論文の考察の最後には、コーチの不十分な休息はコーチのバーンアウト(燃え尽き)の一要因になるとされています。

Powellら(2022)によって実施された過去の研究では、NCAA DIコーチは、「自分のスポーツとは無関係と考えられることに時間を割いたときに、ストレスが最もよく管理された」と報告いているように、コーチ自身がその競技の専門性を強く持つためにその競技に関わることももちろん大切ですが、その競技以外の趣味などを持つことも必要だなと感じました。

また、この研究では

そのような趣味などを通して、競技以外のことに集中したりするといったような心理スキルが休息のためには重要となり、メンタルトレーニングをコーチ自身も実践し、トレーニングしていくことで、より良いコーチの休息が実践されるのではないか。

と述べられています。

コーチの心理的状態が選手に伝染するといったことを示唆するような研究もいくつか発表されています。

選手には、しっかりコンディショニングを整えて競技に臨むように。と指導しているコーチ自身がコンディション不足では、選手にも届きにくいものもあるのかもしれません(その姿を見て、頑張ってくれる選手もいると思いますが)

大切なことは、選手も指導者もその周りの人たちもスポーツを通して、幸福であること。三報良しである状態を作ることができるのか。ということが今後のスポーツに求められていくことなのかもしれません。

自分自身にできることは、かなり少ないないかもしれませんが、まずは自分自身がしっかりと今回の記事を踏まえて休息を意識するところから始めていきたいと思います。

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