教材研究は何のため?

以前私のTwitterで教員の皆様に、「教材研究ではどんなことをされていますか?」とツイートしたところ、予想以上に盛り上がりました。

さまざまなご意見や議論があり、反響もそこそこあったようなので、拙いですが私なりの考えを3項目に分けてつらつらと。

【1】教材って何?

そもそも教材って何でしょう?
私が大学の教職課程で受けた講義では、「生徒・先生が共に持っていて、学習する対象となるもの=教材」という風に言われた記憶があります。
(うろ覚えですが)
細かい話になりますが、教材の「材」というのは材料の「材」ともいえます。
これにちなんでですが、料理では「食材」になんて言いますよね。
最近ふと思ったのですが、「教材」と「食材」はこんな風に対比できるのではないでしょうか。

・「教材」から新たな知識を得る=「食材」から栄養を得る
・「教材」の内容が理解できる=「食材」が食べやすい
・「教材」を使って楽しく学ぶ=「食材」を美味しく食べられる
・「教材」を使って新たな思考を生み出す=「食材」を使って自分で何か作りたいと思える

結局のところ、教材というのは学習するための素材・材料ということになるということで。
ちなみに、教材と似た言葉で「教具」というものがあります。
教具とは、先生が所有していて、授業をわかりやすくするための「道具」と言われた覚えがあります。
これを料理で例えると、包丁・鍋・フライパンなどの調理器具に当てはまりますね。
ただ、食材を調理するにしても適切な調理器具を使わなければならないのと同様、教材を扱って授業をするときは、教具の特徴を知った上で使うといい授業ができるといったところでしょうか。

【2】教材研究は何のため?

では、何のために教材研究を行うのでしょうか?
知識の伝え方、あるいは問題の解説のしかたなど、多分先生方によっていろいろなお考えがあることでしょう。
また、理科の場合、分野によって研究方法が大きく違うことがあるかもしれません。
ただ、先程の料理の例とつなげると、「食べやすく、美味しく、自分でも作りたいと思える料理をどうやって作るか」という風に考えられます。

では、教材研究はどのような位置づけになるか。

素材(教材)の特徴を知ること。

教材から疑問・問いを導くこと。

この2点だと思います。

私個人としてはですが、学習の究極の目的は、自ら考えられる生徒の育成にあると考えています。
そのために、日々の授業の中で、問いを立てて、生徒自身で考える機会を作らなければならないと自戒しています。
といっても、なかなかうまく進んでないというのが現状ですが(^_^;)
先日の私のTwitterで、教材研究と教授法に関する話題が出ました。
生徒に問いを立てて考えてもらう=指導法ではないかとご意見もいただきましたが、実は指導法と教材研究は重なっているのではないかとも思っています。
私の場合、いろいろな問いを立てながら授業をしているつもりですが、大まかに4つのタイプで問いのタイプを整理しました。

その前に、補足事項として私の解釈を述べておきます。
 教科書「を」教える=教科書から知識を得る。
 教科書「で」教える=日常の出来事や自然現象を教科書の内容と当てはめて理解する。

①  教科書「を」教える+オープンに考えられる問い
・教科書の写真を見て気づいたことを挙げてもらう。
 例えば「教科書に載っている微生物の写真を見て、気づいたことを挙げてみましょう」

②  教科書「を」教える+クローズドな問い
・教科書に記されていることをクイズ形式で問う。
 例えば「地球上で現在知られている生物は何種類くらいあるか?」
・問題演習
・小テスト
・前回の授業で学んだことの復習・確認

③  教科書「で」教える+クローズドな問い
・一見教科書の内容と離れているように見えるけど、教科書の内容と照らし合わせて考えると「そういうことだったのか!」と思える問い
 例えば、中学校で学んだ内容と高校の教科書にある内容をつなげて考えるような問い
 「空気よりも重い気体は何?」・・・気体の平均分子量と密度の関係から考える
 「純水・食塩水・砂糖水のうち、電気を流すのはどれ?」・・・演示実験をしながらイオンについて理解する

④  教科書「で」教える+オープンな問い
・興味づけための導入
 例えば「〇〇について思うことを挙げてみましょう」
・探究学習
・答えのない社会問題について、授業で学んだことを応用して考える問い
 →生徒自身で意見を述べられるようになるところまでいけばいいんですけどね。

ひょっとしたら、分類のしかたが違うのではないかと思われる先生がいらっしゃるのではないかと思います。
私自身でも分類が難しいところがありますが、一つの提案として紹介をさせていただきます。

【3】「問い」と「知識」

問いを立てて答えてもらうにも、前提の知識はきちんと伝えないといけないと思われている先生もいらっしゃるでしょう。
私もそう思います。
ただ、私自身が知識を生徒に伝える際、問いと歴史的な背景を意識しています。
というのは、中高で学ぶ理科では、過去の偉人たちが研究して知識を見出す追体験をしているような面があるからです。
特に、物理や化学の授業をする際、教科書に記されている知識がどのような過程で見出されたかが重要ではないかと思っています。
過去の偉人たちも、いろいろな問いを立てながら、現在知られている知識を見出したのでしょう。
私自身が歴史的な背景を知っておくことで、その単元を学ぶ意義を生徒にきちんと伝えられるように努めています。
特に化学の授業をする際、生徒にとっては化学=とっつきにくいというイメージがあるので、歴史的な背景はその都度語るようにしています。

また、授業中で生徒から鋭い質問が飛んでくることもあリます。
教員自身が教材研究の段階で問いを立てておくことは、それに備えることもにつながります。
とはいっても、私自身も生徒の鋭い質問に上手く答えられないことはしょっちゅうあります(^_^;)
こういう場合、私は生徒に自分で調べるように指示しています。
(この17年間で本当に調べてきたのは3人だけでした^^;)
これが探究にもつながるわけで。
そもそも、自分自身もきちんと学んでおかなければならないと自戒しています。

では、その背景知識を得て、活かすためにはどうするか?
私もそうですが、多くの場合は教科書・資料集・受験参考書だけを使うのがほとんどだと思います。
やはり、普段から読書することが必要だと思います。
といっても無闇に本を漁るのではなく、普段から興味・関心・目的意識を持った上で本を読んで知識を深めることが私自身、教員として大事だと思っています。
それが、深い授業ができるための底力になると勝手に解釈しています。
(そんなわけで読書レビューもこれから記事にしようと考えてはいます)
しかし、大量に積読すると、後で整理するのが大変ですのでご注意ください(笑)

【後記】

何だか今回は随分偉そうなことを長々と綴ってしまいました。
正直なところ、私自身、こんな大上段から振りかぶったことを言えるような立場ではございません。
しかも、かなりブレたことを綴ってるのではないかと自覚しています。
今回の記事は、私自身のこれまでの授業実践の振り返りや思考整理の途中経過として綴り、一つの考え方として皆様方に紹介させていただきました。
作る料理の種類によって、同じ食材でも調理のしかたは変わります。
それと同様、単元の特質によって、教材の扱い方・問いのたて方・知識の身につけ方は変わってくるでしょう。
今回の記事が、先生方がよりよい授業をするためのご参考になれば幸いです。

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