【美術散歩】メキシコの現代画家ルイス・ニシザワ~San Miguel de Allende編~
サン・ミゲル・デ・アジェンデ滞在中に2か所の美術施設に訪れた。どちらも雰囲気のある空間で、しかも無料。ゆったりとアート鑑賞ができた。
1. Museo "Casa del Mayorazgo de la Canal"
アジェンデ庭園の北西角にある、昔の大邸宅を改築したMuseo "Casa del Mayorazgo de la Canal"は、現在メキシコの銀行Banamexが所有し、美術コレクションを展示している。入口を見ただけでも、いかにもお屋敷だったのがうかがえる。
常設展エリアに加え、特別展も開催されており、思った以上に多くの作品をみることができた。その中で気になった作品をメモしておく。
ディエゴ・リベラ(Diego Rivera 1886-1957)
メキシコ壁画運動の中心人物のメキシコ人画家。
これまでに彼の有名な壁画作品見てきたが、彼のデッサンに気付いたのはおそらく初めてだった。彼の作品だから目をとめたわけではない。なんだか目を離せず、また目線は合わないのに見られているようにも感じた。あたりまえだけど、有名な画家はデッサンが魅力的だ。
ルイス・ニシザワ(Luis Nishizawa Flores 1918-2014)
印象的な女の子。ずっと見ていたくなった。黒と白がやわらかく描かれている。これは油彩画。とても気に入って画家の名前を見たら、Nishizawaとある。日本にルーツがある現代画家だった。
メキシコシティに戻り、友人らにこの絵の話をしたら、彼らがUNAMの大学生時代の先生だったという。ニシザワ氏は、いつも真面目な表情をしていたようだが、話している内容はユーモアにあふれていて、面白い授業だったらしい。楽しそうに当時の話をしてくれた。なんだか、現実に存在する人物として一気に親近感を感じた。
ニシザワ氏はメキシコ生まれだが、彼の父親が長野県出身の日本人だったようだ。藤田嗣治氏やイサム・ ノグチ氏をはじめ、多くの日本人芸術家とも知り合っており、20世紀のメキシコを代表する芸術家だったことを知る。
メキシコ先住民族マサワの織物文化 現代芸術作品展
この特別展、伝統的な織物を越えた芸術作品を生みだす作家の作品が展示されている。伝統と革新とはまさにこういうことだなと思った展覧会。覚書としてここにメモしておく(きっとまたどこかで出会える気がする。その時にちゃんと考察を書こう)。主な作品の写真は特別展のHPに掲載あり。
中庭に面した回廊からは教会が見えた。
2. Centro Cultural Ignacio Ramírez El Nigromante
ここは昔の修道院を改築した場所で、現在は「エル二グロマンテ文化会館」という美術工芸学校になっている。誰でも中に入れる。見学箇所としてはそれほど広くはないけれど、メキシコ壁画画家の三大巨匠に数えられるシケイロスの作品を見ることができる。
入口脇に牛の彫像があるので、よい目印になっている。
上の写真は2024年のもの。そして下の写真が2013年のもの。
間違い探しができそう。
中庭には静かに過ごせるカフェもあり、散策の休憩にぴったりの場所だ。朝食もやっているので、次回訪問時は行ってみたいな。
ダビッド・アルファロ・シケイロス(David Alfaro Siqueiros 1896-1974)
メキシコ三大壁画画家の一人として知られるシケイロス。三大巨匠の中でも、私の関心が最も薄い人物ということもあり、これまでほとんど注目してこなかった。
革命をテーマに人物が力強く描かれた作品が多い中、珍しく幾何学的な絵柄で不思議に思いつつも、むしろ、この方が好きだなと思った。でも実はこの作品、学長との政治的意見の相違により制作が中断された「未完の作品」だったらしい。未完なのに完成しているように見えるところが面白い。
全然似てもいないし、テーマの共通性もないと思うが、広間に入った時、ふと奈義町現代美術館の「太陽の部屋」に入った瞬間を思い出した。
ペドロ・マルティネス(Pedro Martínez 1901-1961)
メキシコ・モンテレイ生まれの芸術家。彼について調べてみたが、あまり多くの情報が得られなかった。
この最初の作品は、中央の男性が怒っているように見えるが、周りの人物がいたって普通の表情で見返しているところがなんとも可笑しく見える。後方右の男性は冷ややかに笑っているようにすら見える。ありふれた酒場の滑稽な一場面を描いたように見えるが、壁画運動のことを考えると、何か他のメッセージもあるのかもしれない。
回廊も素敵
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