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大学での講義「AIプログラミング」を終えて【AIRS-Labコラム #004】

法政大学での講義、「AIプログラミング」を今月11日に終えました。
大学での講義は初めてだったのですが、備忘録も兼ねて感想や改善点を書き連ねたいと思います。

Udemyや書籍のでの実績が評価され、2020年の11月に大学側から声がかかり兼任講師(非常勤)として2021年度下半期に講義を行うことになりました。
オンライン講師から大学講師になるというのは、まだ珍しいパターンだと思います。

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講義の概要

今回、兼任講師として授業を担当したのですが、コロナ禍の最中ということでZoomによるオンライン講義となりました。結局、キャンパスには一度も足を運ばず仕舞いです。

対象は、法政大学デザイン工学部、システムデザイン学科の学部生です。
幅広い技術や知識を組み合わせながら、人間中心にシステムをデザインする学科ということで、幅広い知識を身につけ新しい価値をデザインする学びの場を目指しているようです。

人工知能の概要から始まり、Pythonの基礎、ディープラーニングの理論、CNN、 RNN、自然言語処理、強化学習、転移学習まで扱いました。

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プログラミングに馴染みのない方も多く難易度も高かったかと思いますが、全14回の講義に最後まで付き合ってくれて感謝です。

講義の内容

講義で使用した教材は、こちらで公開しています。https://github.com/yukinaga/ai_programming

CNN、RNN、GANなどに個別の学習用ノートブックを要しました。
基本的には、Keynoteによる解説の後に、ノートブックのコードの解説と演習を行うという流れです。

開発環境にはGoogle Colaboratoryを使いました。
環境構築が非常に簡単でGPUも使えるので、人工知能、Pythonを学ぶ環境としては今最適なのではないでしょうか。

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人工知能の概要を解説した上で、Pythonの基礎、必要な数学、フレームークPyTorchの扱い方、深層学習の理論を学ぶ流れでした。
講義が進むにつれて難易度上がっていくため、数式やコードに付いていくのは大変だったかと思います。

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以上を踏まえた上で、CNN、RNN、自然言語処理、生成モデル、強化学習、転移学習をコードと共に体験ベースで学ぶ内容でした。

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コードや数式が続いても講義に飽きてしまうので、講義中にAIを使った具体的なサービスで遊んでもらう時間を設けたりもしました。

例えば、最初の講義ではDeepLを使って、オードリーヘップバーンの名言「Opportunities don’t often come along. So, when they do, you have to grab them.」の翻訳にトライしてもらいました。
DeepL翻訳: https://www.deepl.com/translator

他に遊ぶ時間を設けたのは以下のサービスです。thispersondoesnotexistはStyleGAN2を使った顔画像の生成サービスで、Petalica Paintは線画に着色するサービスです。
thispersondoesnotexist: https://thispersondoesnotexist.com/
Petalica Paint: https://petalica-paint.pixiv.dev/

成績評価

成績評価はレポートで行いました。
PythonとAI技術を用いて何らかの課題に取り組み、その結果をコードとともにGoogle Colaboratoryのノートブックにまとめる、という課題です。

次のような例を挙げて、サンプルコードを示した上で提出を求めました。
・AIを使ったゲーム戦闘曲の作曲
・ファッションアイテムを識別できるCNNのモデル
・AIによるブログ記事の生成
・GANによる企業ロゴの生成
・強化学習による動作の制御

少々難易度が高かったかもしれませんが、無理して難易度が高すぎることにトライせずに、現実的に取り組めそうな課題を探すように促しました。

評価基準は、以下の通りです。
・課題の独自性
・コードの可読性
・AI技術の理解
・アプローチの面白さ
これらの要素を総合的に考慮し、評価を行いました。

反省点

反省点は多数あります。

まずは、インタラクティブさに欠けてしまったことです。
Zoomのブレイクアウトルームを利用して、小グループでディスカッションをやりたかったのですが、予行演習時にはブレイクアウトルームが機能したにも関わらず本番ではなぜかブレイクアウトルームのボタンが表示されないというトラブルが発生しました。
そのため、予定していたディスカッションができずに授業にインタラクティブさが欠けて一方的な講義になったしまった感があります。
小グループのうち一つには僕も参加して、学生さんの生の声を聞きたかったのですが。

また、上記も関係するのですが、オンラインということもあり生徒の理解度が十分に把握できなかったことも問題でした。
結果的に、学生さんからいただいたアンケートは難しかったという意見が多数となってしまいました。
講義用の掲示板で難易度に関する意見を募集したのですが、少数の投稿に留まり十分な理解度の把握には至りませんでした。
Zoomでは僕以外ほとんどの参加者が顔表示をオフにしていたので、表情から理解度を把握することもできず、学生さんと親しくなることもできなかったのは残念でした。

講義の前半は、質問や再解説のリクエストを何度も促したこともあり質問がいくつか出ましたが、後半に移り難易度が高くなると質問回数が極端に減ったのは残念でした。
難しい内容ほど再解説を求めたり質問したりしてほしいのですが、学生さんが感じるそれらへの障壁は予想以上に大きかったのかもしれません。

以上のように、オンラインならではの「コミュニケーションの問題」が主な改善すべき点であったかと考えています。

最後に

初の大学講師、しかもオンラインということで試行錯誤しながらの講義となりました。
講義時間以外の準備に予想以上に時間がかかり、他の業務を圧迫しないようにするのが大変でしたが、何とか最後までやり遂げることができました。

オンライン授業ということでコミュニケーションの障壁が高く、僕からの一方的な講義になってしまったのが反省点です。
そんな中でも、AIの面白さ、奥深さを何らかの形で感じてもらえたのであれば、講師として嬉しい限りです。




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