【写真集】『うたたね』川内倫子

川内倫子さんが愛用していることで知られるローライフレックス2.8F。サンライズカメラのサイトでは、

「日本における二眼レフ人気のかなりの部分は、もしかすると川内倫子が形作ったとさえいえるかもしれません。」

とまで書かれています。

そんな川内さんの写真集ですが、自分もローライフレックス好きでありながら、これまで見たことがありませんでした。それで、この写真集から手に取ってみることにしました。

アマゾンの商品説明には

鯉、雲、カラス、カーテン…なにげない風景、ともすれば見落としてしまいそうな草花や小さな虫たちに目を向ける。ただ日常を撮りながらも、やさしさと隣り合わせに存在する怖さ、生と死を強く感じさせる写真集。

と書いてありました。穏やかな雰囲気の写真の中に鳩やスズメバチ、蝶の死骸が写っているものがあったりしてドキリとします。これが「いい写真集」なのかどうか、2, 3度見ただけでは、自分の中の判断がまだできません。木村伊兵衛賞を獲るほどですから、写真界の中で高く評価されたのは確実なのですが、写真集は詩集と同じように、見る人の感覚によって好き・嫌いがかなり分かれるものだと思います。私にとって『うたたね』は、その判別がしづらい一冊です。

でも、いいなと思ったことが二つありました。まず、写真集の中にキャプションも前書き・後書きも解説も、テキスト情報が一切なく、写真の受け止め方が読者に完全に委ねられていること。この手法は向き不向きがあると思いますが、この写真集の場合は成功していると感じました。一つ一つの写真を見ながら、それが意味するのはなんだろうと、読者が解釈する余地を持つことができます。

もうひとつは、ローライフレックスはこんなに色々な場面で写真を撮ることができるんだと、このカメラが持つ幅広い可能性が伝わってきたことです。一般的な人物や風景に加え、雷が落ちた瞬間や電車の中、渦を巻く洗濯機や夜祭り、ジャンプするイルカなど、視点や切り取り方が流石だなと思うのはもちろん、こんなに多様な使い方ができるんだなというのが、読んでいていちばんワクワクしたところです。


最近ちょっと出番が減り気味だった我が家のローライフレックス、この写真集を見て、もっといろんなところに連れ出してみようという気持ちになりました。



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