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【読書】『走る?』中田永一、柴崎友香 ほか

ときどき行く本屋のスポーツコーナーでランニング関係の本を見ていたら、実用書に混ざって小説が置いてありました。14人の作家が走ることをテーマに競作した短編集とのことで、興味を惹かれて手に取りました。もともとは「Number Do」という雑誌に掲載されたものだということです。

参加した作家がとても豪華です。数人を私が読んだことのある著書とともに挙げると、中田永一(『くちびるに歌を』)、柴崎友香(『きょうのできごと』)、王城夕紀(『青の数学』)、服部文祥(『息子と狩猟に』)といった方たちです。

内容もバラエティに富んでいて、ランニングを正面から取り上げたものもあれば、使いっ走りをさせられる高校生だとか、「走らないこと」を相手の条件として結婚した女性とか、さらには羽の生えた人が出てくるSFのような話とか、さまざまです。

私は、王城夕紀さんの「ホープ・ソング」(DNGを改造した強化アスリートが大半を占めるようになった世界で、昔ながらの"ネイティブ"な体のまま陸上の大会に挑む選手の話)、そして服部文祥さんの「小さな帝国」(高校時代に走ることでも恋でもどうしても勝てなかった相手に、40歳を過ぎてマスターズ陸上でふたたび挑む話)が特に好きでした。王城さんは、高校生とか若者向きではない作品を読んでみたいなと思いましたし、服部さんは「サバイバル登山」を扱った紀行やエッセイも好きですが小説家としての文才もある人なのだなと感嘆しました。各話、20~30ページほどなので、ちょっとした時間に読むことができるのもよかったです。

本自体も楽しめましたが、スポーツ雑誌と作家が共同でこうした企画に取り組み、それが本になり、書店では文芸書のコーナーだけでなくランニングのコーナーにも置かれるという、そのつながりの妙に、何だかうれしくなりました。

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