【読書】「ハッセルブラッド紀行」田中長徳

noteでも記事を書いていらっしゃる写真家・田中長徳さんの本です。発行は2006年。田中さんと言えばライカ使いというイメージがありましたが、この本は丸ごとハッセルブラッドです。

私はどちらかというとローライが好きなのですが、ハッセルブラッドもいいな~と思いながら、この本をときどき読み返しています。ハッセルブラッドの中の異端児であり、もし機会があれば自分も使ってみたいと願っているSWCで撮った写真、しかも真四角ではなくA16のマガジンを使った6x4.5版の写真が何枚も載っているのです。ハッセルブラッド紀行 in 京都 というコーナーです。

この本には近景も遠景も人物写真もありますが、遠くまで写っている写真、特に鴨川でしょうか、彼方まで続く川と上空の雲を撮った写真に惹かれます。この超広角カメラを山歩きなどに持っていき、いいなと感じた場所でシャッターを押してみたいという思いがムクムクと湧いてくるのでは。簡単には手が出せない高額カメラであることは十分にわかっていますが。

それにしても、6x4.5サイズだとハッセルでは横長の写真だけになるのかと思っていたら、この本にはきれいな縦長の写真も何枚も載っています。カメラ自体を横に傾けて撮った、ということでしょうか?

この本を読んでよかったと感じたことが、あとふたつあります。ひとつは、「ハッセルよりもローライの方が街歩きには向いている」という記載を見つけたこと。ローライの方が音が静かで空気を乱さない、フレームファインダーを使えば動くモチーフも追える、といったことをその理由として挙げています。どういう使い方をするのかは、持ち主の好み次第で自由である(人の言うことを気にする必要はない)と頭では理解しているつもりでも、こんなことが書かれているのを見るとローライ好きとしては何となくうれしいものです。

もうひとつは、ヨセミテの風景写真で知られるアンセル・アダムスについての記載があったこと。アンセル・アダムスといえば大型カメラという印象があったのですが、ハッセルブラッドの1000Fや500Cも愛用していて、ヨセミテの「ハーフドームの月の出」という作品もハッセルの500Cにゾナー250ミリというレンズを付けて撮られたものなのだそうです。

これは私にとっては全く意外な組み合わせでしたが、1950年代とか60年代から、ハッセルブラッドがいかに時代を代表するカメラマンに使われていたかを示すひとつのエピソードだと思います。「アンセル・アダムスの作例集」という本で、彼の写真40枚ほどを例として、どのような構図や露出でそれらを撮影したのかが開設されている中に、ハッセルで写したヨセミテの写真も出ているそうです。こちらも読んでみたいものです。

<追記>
ヨセミテの「月とハーフドーム」の写真は、ハッセルブラッド社の公式サイトにも出ています。少し縦長になっているのは、トリミングされたということなのでしょうね。





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