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オリーブオイルの値段の本当

先日、知り合いに聞かれた。
「レストランで扱っているオリーブオイルが500mlで850円って、値段的にどうですか?」

500mlで850円…

暫し、思考が止まる。
ユーロにしたら、5ユーロちょっと。安すぎないか?
オリーブオイルの中でも高いと評判のトスカーナに居るから、そう思うのだろうか。
いくら大量に輸入したとして、その金額は、トスカーナの標準的なオリーブ農家が作るオリーブオイルの金額からいくと、完全に原価割れしている。…と思う。

オリーブオイルを生産するのに、どういった金額がかかってくるのか…というのを生産者としてちゃんと説明する必要があるのかもしれない。

生産量の話になるけれど、基本、一本の木から摂れるオリーブオイルの量はマックスで2リットルと言われている。もちろん、樹齢やその年によって、つける実の量にもよるから、あくまでも、ひとつの目安だけれど。

実際、我がオリーブ畑では、そこまでの収穫量は見込めず、もう少し、少ない。
樹齢が若くて、痩せている木もあるから。
そこから出来るオリーブオイルの少ない事の理由のひとつとして、「搾油率」というのがある。
エキストラヴァージンオリーブオイルと称して売られるオリーブオイルは、その規定として、コールドプレスである事が前提だけれど、設定温度が17度くらいと24度くらいとでは、搾油出来る率も当然、変わってくる。
搾油していくと、摩擦によってどんどん温度が上昇していってしまうから、その調節を真面目にやる所とそうでない所とでは、量や質に大きく差が出てくる。
量をとるか、質を取るか。
作り手としては、搾油所を選ぶのに、そういった観点も大事になってくる。
ちなみに、我がオリーブオイルの昨年の搾油率は、12〜14%。
収穫したオリーブの量から搾り取れるオリーブオイルは、それだけ少ない。

オリーブの実自体の金額はどうか。

たまたま、ご近所さんから教えてもらった話。
お隣さんが近くの農家さんに売った金額は、100kgで70ユーロ。収穫代は別。
別のご近所さんがフィレンツェの農家さんに売った金額は、収穫も含めて100kgで130ユーロ。

仮に、100kgの搾油率が13%として、13kgと考えても、それだけで1kgのオリーブオイルは10ユーロ。
お隣さんのは、収穫代を含めると、もっと高くなって、多分最低でも、13ユーロくらい。

トスカーナでは、収穫が少なかった時、他の農家さんから収穫量の半分ほど購入出来るのだそうだが、これでは金額がもっと上がってしまうし、今年のトスカーナのオリーブオイルが高くなった原因のひとつは、これもあると思う。ご近所さんのオリーブを、フィレンツェ近辺の農家さんがこぞって買っていったそうだ。

さらに、オリーブの実自体の金額に搾油代やら剪定代、除草代や収穫代が加わってくる。
4ヘクタールの土地でかかった金額は、収穫代だけでも2500ユーロ。1リットルあたり5〜6ユーロくらいになった。搾油代は、タンクの保持やボトル詰めなども含めて、1リットルあたり3〜4ユーロくらい。

これに、ボトル代、ラベル、梱包材など諸々加えていくと、とてもじゃないけれど、500mlで5ユーロはとうに超えてしまう。


大きなメーカーの平坦地で作られているものは、この限りではないとしても、斜面の多いトスカーナのオリーブ畑は、収穫や剪定は、ほとんど、人の手によるものであるから、多分、他より高い…というのもある。

いずれにしても、決して安くはない。
安くは出来ない。


だから、より一層思う。
極力、良質のものを提供できるようにしたい…と。
かかった金額に見合うようなものが提供できたら、本当に嬉しい。

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