見出し画像

オリーブ畑の住人たち

7月も終わり。
あっという間に、時は過ぎていく。
今年は涼しいかな…と思った夏の始まりだったけど
体温を超える気温の日々もあって、やっぱり、夏は夏。

あまりにも暑くて、お隣のシニョーラは、外にすら出てこない。
日中ずっと、家の中で息を潜めている。
太陽の燦々と降りそそぐ中、
外に出て、オリーブ畑を歩き回っているのは、私くらいなものかもしれない。

草刈りをしてもらって、すっかり歩きやすくなったから、
向こうの際にあるオリーブがどうなっているかを見に行った。
春先、あんなに頑張って、刈り取った根元から生えていたオリーブの小さな茎は
まるでそんな事はなかったかのように、ニョキニョキと背を伸ばしていた。
あーあ…とは思ったけれど、
沢山の実をつけている木々たちを見て、少し嬉しくなった。

そんなに大きくない土地だけれども、
歩いていると、じわじわと汗をかいて、しばらくすると、滴り落ちてきた。
そろそろ戻ろうと、家に向かっていると、ピョンと跳ね上がるものがいた。
動きのない中に動く、私以外の者。
その正体は、大きな野うさぎだった。
私はちょっと嬉しくなったけど、野うさぎの方は、さぞかしビックリしたに違いない。

普段、目にする事はないけれど、オリーブ畑には、いろんな住民がいる。
ハトやツバメ、カササギやワシ、ネズミやイノシシ
時々、向こうのほうで、鹿を見たこともある。
鳥たちは頭上を飛んでいるけれど、他の動物たちは、ヒト気の無い時に出てくるみたいだ。

オリーブ畑の一角で、小さな小さな家庭菜園をしている。
昨年植えた洋梨が、今年は沢山の実をつけていた。
「熟すまで、もう少し待った方が良さそうね。」
お隣のシニョーラの言う通り、熟すのをずっと待っていた。
少しずつそれが無くなっていることに気づいたのは、先々週のこと。
ポタッと落ちている実があって、後から拾おうと思っていたのに
買い物から帰ると、跡形もなかった。
気のせいかと思った。
まだついている実には、鳥たちの突いた跡がある。
鳥は突いて、その一部の実を味わうが、
ポトリと落ちたものは、きっと、別の者が持ち帰っている。
動物たちの連携プレーは、この洋梨に限らず、
今年も手にすることが出来なかったアプリコットも、同様の手口のような気がした。

オリーブ畑の住人が、地球上にいるのは自分たち人間だけではないと教えてくれる。
洋梨の木は、近所にもいくつかあるけれど、
結局、ウチの分は、全滅した。
きっと美味しかったのだ…と思うことにしている。
自然の恵みを味わうのは、私達だけではない。


オリーブだけ、そっとしておいてくれれば、それでいい。
この期に及んで、まだ、そんな事を思うのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?