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日本とイタリアでは前提が違う…という話

「チッ」

信号のある交差点で、「赤」なのに渡り始める私に、イタリア人のおばあちゃんが、舌打ちをした。
「えへ」と、はにかみながら、おばあちゃんを見る。

どんな風に自分の事を棚に上げたとしても、
法的にいうと、おばあちゃんは、100%、正しい。

イタリアに来たばかりの頃、信号無視して渡るイタリア人に、「ちょっと…」と、私も思ってた。
信号が「普通」に機能しているのは、日本では当たり前の事だし、だから、信号を守るのも、基本、当たり前の話。

初めてナポリに行った時のこと。
信号が「青」になったから、渡ろうとすると、凄い勢いで走ってくる車が何台も続き、なかなか渡れず、そうしているうちに「赤」になり、次に「青」になるのを待って、「青」になったから渡ろうとしても、相も変わらず車は走り続けていて、また渡れず、そんなのを繰り返していたら、後ろから来たナポリのおっちゃんにそっと教えられた。
「君は渡っていいんだよ。」と。

いや、でも、こんな勢いで走ってきたら、渡れないでしょ…

心でそう思いつつ、戸惑っていると、「自分の後ろについて、渡りなさい。」と言われる。
ナポリのおっちゃんは、落ち着きはらって、歩き出した。
行き交う車を上手く避け、渡りきるおっちゃん。あと少しのところで、勢いよくやってくる車が見えたから、小走りをしたら、クラクションを鳴らされた。悪いのは、あっちなのに。

「ナポリで信号を渡る時はね、ゆっくり渡って大丈夫なんだ。みんな運転が上手いからね。歩く速度に合わせて、向こうで調節してくれるから、決して、走っちゃいけないよ。予定が狂っちゃうから。」
そう、教えてくれた。

ナポリではなくても、信号無視は、あちこちである。

あれは、確か2年前。
私は、イタリアで車の免許を取り直した。

交通法なんて、世界どこでも一緒でしょ…

そう思ってた私が、イタリアの交通法を学んだ時、ちょっと、目から鱗だった事を思い出す。
「信号が壊れている場合の優先順位」とか、「平ではない道の標識」とか。
こんなの、日本には無かったなぁ…と、遠い記憶を辿った事がある。

そもそもが違うのだ。

私たちが思う「普通」は、イタリア人にとって、「普通」でない事がある。
それぞれが、それぞれのリズムで生きている。
だから、信号無視していいとは限らないんだけど、その時の状況に応じて臨機応変に生きるイタリア人を見ていると、なにか思うものがあったりする…ってワケである。

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