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自分の中の未知の世界を知る…

美味しいオリーブオイルがあるから、朝からパンを焼く。
一年で、この時期にしか味わえない搾りたてオリーブオイルを味わうには、味のしないパンが一番合う。
トスカーナパンって美味しくないと思っていたのに、今ではこれが美味しく思えるのだから、郷にいれば郷に従っていくと、変わる感覚というのもあるのだと思う。

自分でパンを焼くようになって、数年が経つ。
もともと、パンもケーキも買うものだと思っていた。日本ではその方が安く済むし、確実に美味しい。
料理をするのは嫌いではないけれど、人にもてなすほどでもないし、料理好きな人間に囲まれているおかげで、どちらかというと、もてなされる側で、だから、料理家ではなく、愛食家だと自分では思っているし、まさか自分でパンなんて焼けないでしょって、普通に思っていた。
気軽にいつでも買えるという環境が、ハードルを上げているって事もあったかもしれない。

フィレンツェあたりに住んでいると、当たり前だけど、トスカーナパンが主流で、日本のベーカリーショップにあるような、ふんわりバターの匂いや、柔らかいモチっとした食感みたいなパンに出会うのは、まず、難しい。
手に入れることが難しいと思うと、より食べたくなるのが、人の性。
そんな時にSNSなんかで美味しそうな写真を見かけると、たまらなかった。

食べたい…

そんな思いが、「自分にはムリ」に打ち勝った時、初めて、自分でパンを焼くようになった。
もちろん、最初から上手くなんていかない。
ホームベーカリーなんて便利な代物もなく、素人が手探りで作るのに、意味もわからず捏ねたり、発酵させたり。
それでも、なんとかカタチになったりする。
人は、多くのことを、「所詮、ムリ」で通してしまうんじゃないかと思う。

先日、作った肉まんの写真をアップしたら、みんなに驚かれた。
予想に反する多くの「いいね!」に、私が驚いた。

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これも、イタリアでは普通に買えない代物だから、「食べたい!」って思ったら、作るしかない。
家にはオイスターソースとか、そんな粋なものはないから、イタリアで普通に買える材料のみで、それらしく作る。
作っておいて、それが出来たことに、自分が一番驚いた。

出来るんだ…って。

イタリア生活って、ほどほどに不便。
でも、その不便な生活のおかげで、自分の中の未知の世界を発見している。
で、それは、なかなかオモシロイ事だと思ったりするのである。

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