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第3章 始動 ④「様々な被爆者」

 2回目の聞き取りは、他の2人が都合が悪かったので私1人で原爆資料館に行った。この日は被爆体験というより、原爆の実相や核問題を巡る世界の動きといった理論的なことをお話してくださった。中でも印象に残っているお話は「被爆者の分類」についてだ。

勲さんが作成した「被爆者の定義」レジュメ(筆者撮影)

  私達がいつも想像する「被爆者」は、直接原爆の被害に遭った方のことだろう。彼らのことは「1号被爆者­=直接被爆者」という。しかし被爆者はそれだけではないんだよ、と勲さんは教えてくださった。
 実は、1号~4号に分かれるというのだ。

 2号被爆者は「入市被爆者」と呼ぶ。これは、原爆投下後2週間以内(長崎原爆の場合は8月23日まで)に爆心地に入った人のことを指す。市内に入って間接的に被爆する、これを入市被爆と呼ぶ。
 3号被爆者は「救護被爆者」と呼ぶ。これは、被爆者の救護や死体の処理に当たった人、その後体に放射能の影響を受けるような事情のあった人を指す。
 最後に4号被爆者は「胎内被爆者」と呼ぶ。これは、原爆投下時に1号~3号被爆者の胎内におり、翌年の1946年6月3日までに生まれた赤子のことを指す。母親を通して間接的に被爆をするということだ。

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 私はこの事実を初めて学んだ。原爆投下地点にいた人だけでなく、救助の応援に駆けつけた人や、まだこの世に生を受けていない命にまで影響を及ぼす。そしてその傷や被爆の影響への不安は、生涯にわたり彼らを悩ませ、苦しめる。

 「そこが、通常兵器と放射線を発する核兵器との違いなんだよ」と勲さんは語った。こんな核兵器など、地球上に存在していいわけがない。

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