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歌のシェフのおいしいお話(1)歌のシェフって…

コレペティはフランス語でchef de chant、直訳すると「歌のシェフ」。シェフといえば日本ではプロの料理人をイメージしますが、日常のフランス語では組織やチームの長を指します。サラリーマンも上司のことを「僕のシェフが…」と言っています。

でも、歌のシェフと言われても、別に何のチームを束ねている訳でもないのだけれど…
劇場では、指揮者に稽古を引き渡す以前の音楽稽古全般の責任者という意味でシェフなのだと思いますが、フリーで働く(家で個人レッスンをしたりする)コレペティも同じ呼称なので、その場合は私のように履歴書の職歴に”chef de chant particulier”(個人営業の歌のシェフ)と書く羽目になります。なんだか何も束ねていないのに長を名乗って名前負けのようですが、そういうものらしいです。

ちなみにコレペティは英語ではrepetiteurといいますが、これはフランス語から輸入した言葉なので(-eurという語尾がいかにもフランス語っぽい)、パリに着いたばかりの頃の私はフランス語でもコレペティのことはrépétiteurと言うに違いないと思い込んでいて、クラスの振り分けを決めるための音楽院のディレクターとの面接で「私はrépétiteurになりたいんです!」と力説してあんまり伝わらなかった記憶があります。それもそのはず、現在はrépétiteurといえばフランス語では復習や補習のための家庭教師を指すそうです。
留学前に自分のやりたいことをその国の言葉で言えるようにしておかないようなアホは私以外にあまりいないとは思いますが、私だってそれなりに準備したつもりだったのにそんなこと誰も教えてくれなかった(フランス語の先生は音楽の専門ではなかったのでこういうニッチな仕事の呼称なんか知らなくて、私がrépétiteurと言うならそれでいいんだろうというくらいに思っていた)ので、どうぞご注意ください!

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