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(全文公開)自分でない人、今でない時間、ここではない場所を想像する力

6日(日)、本マガジンのライター、永井亮氏の公開講座を聞いた。
Facebookのこちらのページ【GU】SDGsPicksからまだ見ることができる。

永井氏は小学生のときから環境問題について考えていて、その後国際青年環境NGOを経て現在は行政機関で環境政策に従事しているという、筋金入りの専門家だ。

気候変動の具体的なデータやそれが我々の暮らしにもたらす変化についてなど、興味深い講座の全貌はビデオを観ていただくとして、マガジンの共同執筆者として印象深かったのは、彼が、このような大きなテーマをみんな(環境問題の専門家でない我々みんな)に実感を持ってもらえるように伝えることは難しい、そして行動に移してもらえるような仕方で伝えることはもっと難しい、自分の書く記事でもその点に留意している、という意味のことを話していたことだ。

確かに、化石燃料の枯渇と言われても、海面が上昇していると言われても、普通に暮らしている分にはそんなに困らないし、何らかの対策を行動に移そうと思えるほどに問題を実感するには、大変な想像力が要る。

目の前にないものを思い描く力。自分でない人、今でない時間に思いを馳せる力。

…それって、アートの出番じゃない?

そう、環境のことも開発のことにも素人の私がこのマガジンに参加している(そして参加しませんかと誘ってもらった)理由の一つは、よりよい世界、よりよい未来をみんなで考えるにあたって、アートに携わる私の立場から呼びかけられることがある、ということなのだと思う。

恐ろしい未来を描いたSFを見れば、フィクションだとわかっていても、「このまま気候変動が続いたらどうなるんだろう…」と思わずにはいられない。古典的なところでは、2004年のアメリカ映画《デイ・アフター・トゥモロー》は、地球温暖化で南極の氷が溶けたことによって海流が変化して突然訪れた氷河期を描いている。学者のジャックが事前に危機を訴えていたものの、政府の要人には相手にされていなかったのである。
この記事のように、映画の結末が楽観的で、気候変動が長期的にみればよいことであるかのようなメッセージを与えかねない「惜しい」作品、という批判もある。
とはいえ、こんな世界は来るのか、映画の結末についてどう思うか、考えを巡らせることがまず最初の一歩だ。
ちょうど今朝、アメリカのコロラド州で現実に24時間で31度急落したというニュースもある。

2008年に大ヒットした《ウォーリー(WALL-E)》は、汚染し尽くされゴミの山となった2805年の地球で働き続けるゴミ処理ロボットが主人公。物語はとてもかわいらしく微笑ましいのだが、ゴミに塗れた街や、地球から脱出して巨大宇宙船で生活するうちに自分の足で歩く力を失った人間たちなど、強烈なメッセージが随所に込められている。

突飛な設定であまりヒットもしなかった映画、のはずが、コロナ禍の最中に「10年後の新型ウイルスの災禍を予見したかのようだ」ということで再び注目を浴びたのが2011年の《コンテイジョン》
パニックに陥った人々が怪しい情報に振り回される様子は、今日の我々への警鐘である。

一方、SF映画とは「想像力の掻き立て方」が全然違うけれど、そして時代も文脈も大ジャンプだけれど、「世界を俯瞰的に眺める」という意味でぜひ読者に紹介したい音楽が、ハイドン作曲の《天地創造》。旧約聖書の創世記冒頭、6日間に亘る、神による天地創造の過程と、アダムとイヴの物語が、天使ガブリエル、ウリエル、ラファエルによって語られる。
カオスに始まり、光が生まれ、空と海と陸が創られ、さらに草木と星が創られる第一部を経て、例えばこれは作品の第二部、空の生物と海の生物に続いて、ライオン、虎、鹿、馬、牛、羊、虫など、陸の生物が創られたよ!と天使ラファエルが告げる場面(に続く歌)〈今こそ天は光に満ちて輝き〉
動物たちが溢れている様子が歌われ、イメージとしては《ライオン・キング》の冒頭そのものである。途中で2回聞こえるゾウの雄叫び(のようなブォーっ!という音、1’09”, 1’16”あたり)にはコントラファゴットという、なかなかそのへんではお目にかかれない楽器が使われている。
私自身はキリスト教徒ではないけれど、この彩り豊かな聖書的な生の世界にはわくわくする。

とはいえ我々は環境問題をうまく解決してこの動物の楽園を再建してくれるような都合の良い神様に期待することはできないから、自然を利用し汚してきた人間、でもこれからも快適に生きたいと思っている人間として、この「天地」の行方に責任がある。

…………………
おまけ。
《天地創造》の最終曲〈全ての声よ、主に向かいて歌え〉。天地創造の大仕事が完成され、アダムとイヴが楽園で結ばれ、全ての声が神への賛美と感謝を力強く歌っている。

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