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山ペンギン 27 梅満開

梅というものは普通、1輪1輪咲いて行くものだと認識している。

だが、今年はなぜか梅が一度に咲いて満開だ。
香りも強い。

「梅が咲いてるね。」

お前の目当ては梅酒の実だろう。
喰えるのは実がなってから来年以降の話だぞ。

「まるで桃源郷ね。」

咲いてるのは梅です。主任。

「あなたが見たいのは…」

金銀パラジウム合金、どれも要りません!

イマドが斜面を滑り降りていく。

また泉に落ちた音がしたが、女神はここにいる。

「誰だ!こんなタヌキカピバラドリを落としたのは?!」

今までで最もイマドを適確に表現した、ヒゲのじいさんがイマドを持って現れた。
反応も普通だ。

「あ、専務。」
と女神。

専務て何!?

「上司です。なぜうちの泉に?」
「見回りだ。最近、お前この泉にいるか?」

「いえ。いません。」
いけしゃあしゃあと女神が応える。
職場放棄だろ。

「そうか、それならそれでいい。」
いいのか?!
ていうか、あんたたちの職種何!

「世界は広いな。見て回るのもいい。」  

「桃源郷も楽園もこの世界にあるのです。」

梅だっちゅうに!!!

専務は時々、オレの部屋に人生ゲームをやりにくるようになった。

人生…ですか…。





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