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【北欧図書館の仕掛け1】アーティストに壁を貸す

北欧では公共図書館がアーティストとコラボレーションする話をはよく聞く。それはデビューしたばかりの作家が図書館を訪問して新作のプロモーションをすることだったり、俳優が図書館で演劇のワークショップを開催することだったり、とにかくいろいろな芸術プログラムが図書館で開催されるのだ。ある日、図書館を訪ねるといつもは素通しのガラスの一面が、インスタレーションの対象素材になっていて、メッセージで埋め尽くされていたこともあった。図書館とアートはとても相性がよい。

図書館のスペースを新進のアーティストに開放して、図書館で美術作品の展示会を開くこともよくあるが、フィンランドのカッリオ図書館では、アーティストに「壁を」貸していた。カッリオ図書館は1階に広い吹き抜けがあって、周囲の壁にアート作品が展示されている。よく見ると作品にはQRコードがついている。

フィンランド・カッリオ図書館

このQRコードから作品の詳細やアーティストの情報などがその場で入手することができる。図書館のウェブサイトにも展示中の作家についての情報が掲載されている。若いアーティストにとって、民間のギャラリーでの個展は高額のスペースチャージのせいでかなりハードルが高い。だが図書館の「壁」は無料である。
 
図書館に来る人に自分の作品を無料で見てもらえるチャンスということで、この壁面スペースは大人気で、常に順番待ちらしい。図書館スペースをアーティストに貸し出す制度はヘルシンキでは一般的で、小さい図書館でも作品が展示されているのをよく見かけた。この方法は公共図書館とアーティストのコラボレーションをとても自然な形で実現している。


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