Yuko Takano

ロンドン在住のライターです。見た映画や美術展、演劇、出会った本や、訪ねた所など、思うま…

Yuko Takano

ロンドン在住のライターです。見た映画や美術展、演劇、出会った本や、訪ねた所など、思うままに綴っていけたらと思います。まだまだ行ったことのない歴史あるヨーロッパの町や村を訪ねたり、歩いたりしてみたい。

最近の記事

ヨルゴス・ランティモスの新作映画『憐れみの3章』KINDS OF KINDNESS by Yorgos Lanthimos感想

 5月にカンヌ映画祭でプレミアとなったヨルゴス・ランティモスの最新作が現在イギリスで一般公開となっている。『哀れなるものたち』が公開されたのがほんの昨年の事て、こんなに早く新作が届けられるのは嬉しい。詳しい背景は不明だが、『哀れなるものたち』が豪華な映像満載で堂々の大作であるのに対して、本作は作家性の高い比較的低予算(とはいえスタジオ・レベルでの範囲においての)作品に映る。  いつもながらキャストが豪華。常連陣、エマ・ストーン、ウォルム・デフォー、ジェシー・プレモンス、マーガ

    • 『大いなる不在』藤竜也インタビューTatsuha Fuji ”GREAT ABSENCE"interview

      =近浦監督とは3作目になりますが、近浦監督との共作の魅力について教えてください。 「呼んでいただけて、とてもありがたい。初めて一緒に仕事をしたのは彼の処女作品で、読んでいただいて嬉しく感じました。2回目も声をかけていただきうれしかったです」 =大御所なので多くの作品から声がかかると思いますが、やはり声をかけてもらうごとに嬉しいですか? 「そうですね。キザな言い方だけれど、62年ほど俳優としてやってきて、なんだかずっと旅している感じですね。旅感があります。ですから、ありきた

      • Minoru Nomata”Continuum”@White Cube Mason’s Yard 野又穫展ロンドンのホワイト・キューブで開催

         野又穫さんの新作展『Continuum』がロンドンのホワイトキューブ・ギャラリーのメイフェア店で開催されている。氏にとっては2022年に続きiイギリスでの2度目の展覧会となる。オープニングにあたり、日本から野又氏もロンドン入り、7月9日には観客を相手にトークをイベントが開催された。2023年に東京のオペラ・シティーで同タイトルの展覧会が開催されていえることを踏まえれば、本展はそれをロンドンに持ち込んだ形となるのだろうか。加え2024年作もあるので、新旧作を本展のためにセレク

        • GREAT ABSENCE by Kei Chikaura大いなる不在 近浦啓 監督インタビュー

           2023年度サンセバスチャン国際映画祭コンペ作として上映され、ベテラン藤竜也さんに最優秀俳優賞をもたらした近浦啓監督の『大いなる不在』。 サンセバスチャンで監督に話をきいた。 =あなた自身の実体験に基づいた作品のようですが、どれほど事実が脚本に反映されていますか? 「きっかけだけですね。ほぼ全部フィクションです。2020年にコロナウイルスが広がって、それと全く同じタイミングで、父親が2020年の4月非常事態宣言が発令される直前に急性の認知症になったんです。劇中と同じで、警

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        • 『大いなる不在』藤竜也インタビューTatsuha Fuji ”GREAT ABSENCE"interview

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          学校は不寛容な世界の縮図ー映画『ありふれた教室』

          学校は不寛容な世界の縮図ー映画『ありふれた教室』

          SARGENT AND FASHION @Tate Britian ジョン・シンガー・サージェントの肖像画に見るファッション

           テイト・ブリテンでジョン・シンガー・サージェント展が開催された。米国人の両親のもとイタリアに生まれれ、ヨーロッパを転々としながら育ち、パリで10代の時に画家の道に入った。あえてヨーロッパで生活することを選んだ両親に育てられ、寛容な教育を受けて芸術家として、インテレクチュアルとしての才が開花したようだ。  今回の展覧会は、彼の多大なる作品の中から19世紀後半、21世紀の初めころに描いた裕福階級や芸術家などの肖像画に焦点を当てている。当時スキャンダルとなった『マダムXの肖像』『

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          THE DEAD DON'T HURT by Viggo Mortensen

           パンデミック中に認知症の父への思いを綴った『THE FALLING』で監督デビューしたヴィゴ・モーテンセン。『THE DEAD DON'T HURT』は監督作2作目だ。なんとこれはアメリカ開拓時代が時代設定のウエスタン(?)だが、カーボーイとインディアンという常識的なウエスタンではない。  まず主人公が女性、リヒテンシュタインの誇る名女優ヴィッキー・クレイプスがヴィヴィアンを演じる。時は1860年代、彼女はフランス系カナダ人という設定で、ヴィゴ演じるデンマークからの移住者ホ

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          TOM HARDY, AUSTIN BUTLER &JODIE COMER in”The Bikeriders" by JEFF NICHOLS

          60年代シカゴのバイク族の誕生と栄光、そして悲劇 米カウンターカルチャーの貴重な1ページに目を向ける映画  米国南部の深部に目を向ける名作を生み出だしてきたジェフ・ニコルス監督の新作は、60年代後半バイク族の隆盛とそれにまつわるメンバーの軌跡を追う。フォトジャーナリスト、ダニー・リオンズの同タイトル写真集(1968年)に収められた写真とインタビューをもとに監督自身が脚本化した力作。原作はリオンズがシカゴ郊外の町で結成された世界最古のバイク・クラブである(設立1935年)ア

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          Isabelle Huppert "MARY SAID WHAT SHE SAID"@Barbican Theatre 11 May 2024

          多くの映画に出演し、フランス映画界の最前線で活躍するベテラン俳優イサベル・ユペール。カンヌ映画祭もまじかの5月10日から3日間、ロンドンの舞台に立った。"MARY SAID WAHT SHE SAID"は、16世紀を生きたスコットランド女王、エリザベス1世によって断頭台に送られ44歳の命を閉じたメアリー・スチュワートの人生の最終章を描く独白ドラマだ。中世ヨーロッパの歴史は多くの国の王族の複雑な権力争いによって色塗られているが、その時代に翻弄され生きたメアリーの人生は多くの

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          Yoko Ono “Music of the Mind”@Tate Modern/London

          小野洋子さんのアーチスト活動において、東京、ニューヨークに次いで重要な都市であるロンドン。ジョン・レノンとの出会いも、ロンドンのギャラリーで行っていた展覧会だった事実は広く知られている。現代美術の殿堂テイト・モダンでの英国において最大となる大規模な個展が開催中だ。いかなるキュレーションがほどこされているのか尽きない興味と少々の不安を持ちつつ足を運んでみた。  新館の5階スペースを占める広々とした空間を使用し、初期のコンセプト・アートやそれに使用されたインストラクションや様々な

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