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Yoko Ono “Music of the Mind”@Tate Modern/London

小野洋子さんのアーチスト活動において、東京、ニューヨークに次いで重要な都市であるロンドン。ジョン・レノンとの出会いも、ロンドンのギャラリーで行っていた展覧会だった事実は広く知られている。現代美術の殿堂テイト・モダンでの英国において最大となる大規模な個展が開催中だ。いかなるキュレーションがほどこされているのか尽きない興味と少々の不安を持ちつつ足を運んでみた。
 新館の5階スペースを占める広々とした空間を使用し、初期のコンセプト・アートやそれに使用されたインストラクションや様々なインスタレーションにこれまたそれに使用された素材、当時のパフォーマンンスの様子をうかがえる写真や映像などが白いスペースに並んだ。見る、観る、聞く、聴く、読む、参加する、そして感じる作品は200点ほど。
  50年代から60年代、東京とニューヨーク、ロンドンを股にかけ精力的に活動した彼女の湧き出るようなコンセプトをなぞる内容で、どの作品も観る者が自分なりに考えることを要するあたりがカギとなっている。当時活躍した、日米の前衛アーチストのクリエイティブなエネジーを体感とまではいかないが、想像できた。半世紀以上にいたアーチスたちの、戦後から経済成長期にかけた時代的背景のなかで、反戦や資本主義経済で洗いさらわれつつある社会に、体当たりした意気込みが感じられた。最初の夫である一柳慧さんやジョン・ケージやラ・モント・ヤングとのコラボなども興味深い。 これまで本や記事で読んでなじみのある作品、観客が洋子さんの洋服を刻んでいく“カット・ピース”、黒い布袋に観客を入れる“バッグ・ピース”など・・多くの作品を実際に見れる貴重な体験だ。(フラクサス時代の作品はテイト・モダンの常設展で展示)
 有名な世界平和の願いをこめたジョン・レノンとのベッドインの映像は壁一面を使用してループで上映されていた。音楽にも才能をみせた彼女のソロアルバムやジョン・レノンとの共作などのヴァイナル・アルバムも壁に展示され、その脇ではヘッドフォーンで音源も聞ける。10代のころ、初めてきいて洋子さんの狂気と天才の間から聞こえる音楽に、おののいたことが懐かしい。当時はあまりに強烈すぎた・・。
 彼女の類まれな才能と、発想の豊かさには圧倒されるばかりだが、最も心を打つのは観客参加型作品と、その時代を越えコネクトできる普遍性。たとえばキャンバスにくぎを打つ作品。若い世代が楽しそうに金槌を持つ姿が印象的だった。1960年のコンセプトを現代版におきかえた“ADD COLUR|REFUGEE BOAT”(色を加えるペインティング。難民船)、白い部屋に白い壁、観る人たちが青いマーカーで色をぬったり描いたりできる。オープン当時は真っ白だったものが現在は観客の書き込みで青い空のように真っ青。後の部屋は”My Mommy is Beautiful”観客に母への思いを白い紙に綴ってもらうというもの。部屋いっぱいに張り付けられた、メモを1枚1枚を読むのは心温まる瞬間だ。ずっと英国を離れていたので、5月に見ることになったが、開催3か月目を迎えたタイミングだったからこそ進化した作品が見れた点でよかった。
  アーチストとしてだけでなく、ミュージシャンとして、アクティビストとして70年にも及ぶ彼女の広域にわたるか活動をうまく集大成した、見ごたえある展覧会だ。

Tate Modern exhibit
Bag Piece
Add Colur Refugee Boat


My Mommy is Beautiful
Harf a Room

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