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石原さとみさんはなぜ吉田恵輔監督を選んだのか

私は洋画、邦画を問わず、映画は監督で観るタイプだ。脚本家も気にする。洋画の場合、脚本家までは分からないが、邦画なら覚えられる。
今、スマッシュヒットしている映画『ミッシング』(主演石原さとみ)は、吉田恵輔監督作品。
結果的に、『ミッシング』は私が好きな映画第一位になっている。僅差で杉咲花さんの『市子』が続ていて、『市子』は一度しか観ていないから、気分によっては時々、逆転するかも知れない。
コロナ禍以降、良い映画が増えた。

【予告編を作った人、上手すぎる笑】



実は、私は吉田恵輔監督作品が好きではない。
一番嫌いな映画は、題名も監督も覚えてないが、そうじゃない映画、つまり有名な映画で一番嫌いなのが、吉田恵輔監督、脚本の『空白』だ。
「こんな気分の悪い胸糞映画、観たことないわ」
と憤るくらいで、まさに、「この監督の映画は二度と見ない」というわけ。
ところが、一番好きな女優の石原さとみさんが、吉田監督に直談判して、映画『ミッシング」を撮影したと聞いて、呆然。
そこで『ヒメアノ~ル』も観た。


「また、胸糞悪い映画だな、おい!」
主演の森田剛さん演じる森田という男が、学生時代の虐めで頭がおかしくなり、手当たり次第に気に入らない人を殺し、女はその場でレイプする話。脚本も同監督。
無論、『空白』も『ヒメアノ~ル』も深いテーマがある。
どちらも主人公の男が暴走するのだが、その「きっかけ」があり、「誰が悪いのか」という隠しネタがある。
実話が元でどれくらい脚色してるのが分からないが、『空白』はたんに毒親の主人公が悪いだけだと思っている。娘が交通事故で死んだのも、その交通事故を起こさせてしまったスーパーの店主のスーパーが潰れたのも、娘を車で轢いてしまった真面目な女性が自殺したのも、「ぜーんぶ、おまえのせい」だと私は譲らない。『ミッシング』同様、マスゴミがスーパーの店主(松坂桃李)を追い詰めるが、古田新太さん演じるそのバカ父親の気分の悪い態度と言ったら、目の前にいたらボコボコに殴りたいほどで、実話が元とはいえ、「この不快感を映画にして伝える必要があるのか」と思っていた。

ただ、吉田恵輔監督は世の中の事をよく観察しているし、男と女のことも経験豊富な様子がうかがえて、リアリティはすごい。
『ヒメアノ~ル』では、濱田岳演じる童貞の男と佐津川愛美演じる恋愛経験豊富なカップルのベッドシーンでありがちな会話が続いて、ベッドシーンが下手な監督に比べて違和感がない。
殺人鬼になった森田という男が、殺した男の近くに若い女がいたらレイプもするが、昔に超有名大御所監督が「そういうシーンで女に何もしない映画が多いがありえない」と呆れていた。吉田恵輔監督は、そこはきっちりと撮影している。ラストも、森田が好きな女をレイプしに行くのだが、抵抗する彼女に「殺してからやってもいいんだぞ」と脅す。サイコパスなら言う台詞だし、そんな事件も日本であった。戦場レイプもそれが半数だろう。
それから、『ヒメアノ~ル』では、学校で虐めをされていた時に、オナニーをさせられるのが作品の要にもなっている。
森田は女子生徒の前で、オナニーをさせられる弱々しい男だが、
「まさか、ここまでしないだろう」
と思う観客に、吉田恵輔監督は、「いや、ここまでされる生徒もいる」と訴えているのだ。

私が通っていた中学でも性的な虐めは横行していた。男子は殴る蹴るが多かったが、女子は、スカートを捲られて裾を縛られて、授業が始まるまで下着が丸見えにされているなんてよく見かけた。私の知らないところではもっとえぐい性的暴行があったと思う。吉田恵輔監督は、学校でそういう痛ましい事件が起きていて、それを教師らがスルーしているのを知っていて、その悪を世に問いたいのだ。
石原さとみさんがそれらのシーンを繰り返し直視していたのかどうか知らないが、石原さとみさん曰く、

森田剛さんの豹変した演技に驚愕した。

とのことだ。
確かに、『空白』の古田新太さんも、良いおじさんの役が多く、それに比べたら、あまりにも自分勝手で口が悪く暴力的な…もう言葉か出てこないほどムカつくおっさん。森田剛さんなら、元アイドルだし、ファンをすべて無くしそうだ。
石原さとみさんはインタビューでも応えていたし、吉田恵輔監督にもはっきりと、「港区女子」と言われたくらいで、イメージが定着しすぎている。それに悩んでいた時に、吉田恵輔監督作品に出会ったようだ。
そして映画『ミッシング』で見事に汚れ役を演じきった。
もう迫真の演技、大絶賛だ。
ただ、吉田恵輔監督にしてはあれで緩い方。(笑)
だから、ヒットしているのだと思う。
石原さとみさんじゃなければ、夫(青木崇高)とヤケクソなベッドシーンがあったと思うし、弟(森優作)が誰かにもっと暴行を受けるシーンがあったかもしれない。
じゃあ、その方がよりリアルでいいのかと言うと、私は「これくらいがちょうどいい。不必要なシーンはいらない」と思った。
夫婦喧嘩は十分していて、セックスするしないまで描く必要はないし、弟も十分やられている。
それほど悲しく、辛過ぎる話なのだから、各々の暴走をこれくらいにとどめておいてよかった、と映画館で三回鑑賞し、思った。

余談だが、私はセックスシーン、性的なシーン、また恋愛の会話が下手な監督は、恋愛経験が少ないと分かるから観ない。
『監督』である以上、自分が経験上詳しいか、またはよく調べているテーマを映像化すればいい。




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