経営者のタイプと取締役会のガバナンスについて:Federo et al. (2020)
今回からはFedero et al. (2020)をレビューします。
この論文では経営者のタイプと取締役会のガバナンスの関係を詳細な先行研究レビューを通じて明らかにしようとするものです。
冒頭のアブストラクトには・・・
①経営者と取締役会のガバナンスに関する既存文献のレビューでは家族、単独創業者、企業、機関投資家、国家、ベンチャーキャピタルという6つの異なるタイプが取締役会の構造、構成、およびプロセスとして定義される取締役会のガバナンスをどのように形成するかについて論じている
②経営者のタイプが取締役会の機能的パフォーマンス(モニタリング、リソース提供、戦略的関与など)に与える影響や経営者と取締役会の関係が企業の様々なアウトカム(業績やコンプライアンスに関連する)に与える影響についても明らかにしている
との記述がありました。
今後、少しずつ考察していきますが本日は「先行研究レビュー」に用いる先行研究の収集方法についてです。
先行研究の収集
今回の論文の対象となるのは「Financial Times Research Rank (FT50)に含まれる50のトップジャーナルとコーポレートガバナンスの分野をカバーするその他の専門ジャーナル」です。
検索キーワードは「board AND/OR owner」です。
そのうえで・・・
(1)最初の検索で出てきた2278件の論文のアブストラクトを読む
(2)2095件の論文についてboardとownerの関係をカバーしていないという理由で削除する
(3)残りの183件の論文のフル原稿を読み、経営者のタイプと取締役会のガバナンスの関係に焦点を当てていない論文を除外したところ56件の関連論文が得られた
という手順をとっています。
経営者のタイプについては論文で取り上げられているタイプを正確な用語としてコード化し、互いに排他的な6つの経営者のタイプ(家族、単独創業者、企業、機関投資家、国家、ベンチャーキャピタル)に分類しました。
ここまでの作業を通じて先行研究がこれまで経営者のタイプをどのように捉えてきたのかを整理したのです。
さらにここから・・・
(1)Scopusデータベースを使って、それぞれのタイプを示す追加のキーワードを使って検索を拡張する(4056本の論文が得られる)
→board AND/ORowner/family/founder/corporate/institution/state/venture
(2)重複した2362件の論文を削除する
(3)残りの1694件の論文のアブストラクトを読む(379本にまで絞られる)
(4)経営者のタイプと取締役会のガバナンスの関係を明示的にカバーしていない261件の論文を除外する(118本)
(5)スノーボール法を用いて8件の論文を新たに抽出する
(6)論文を読んでいるうちに、ファイナンス系の雑誌ではアブストラクトの表示方法が異なり、データベース検索で使用したキーワードが反映されていないことに気がついたために、最初の検索に戻って金融ジャーナルの論文のフルテキストを読む(19本の論文が新たに抽出される)
(7)最終的にレビューに含まれた関連論文の数は145本となる
→75本がFT50誌、70本が非FT50誌からの論文でした
拙稿ではありますが・・・
筆者は昨年「情報開示が投資の効率性に与える影響」としてメタアナリシスによる先行研究レビューを行いました
論文収集については特に雑誌を指定することなく論文のタイトルに「investment efficiency(投資の効率性)」が含まれているすべての論文を熟読して必要な論文を抽出しました
時間はかかりましたがやはり先行研究レビューをより精緻にするには欠かせない作業だったと今でも感じます。
さてさて次回からはいよいよ抽出された先行研究レビューに関する話題になります。
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