見出し画像

小林正観の「幸せ」②感謝すると求めなくても「夢」と「希望」が叶う法則がマズローにもコトラーにもある

 前回の続きです。
 前回は私たちが無条件に肯定している「夢」や「希望」も、それがないものねだりになってしまって、返って「夢」や「希望」を(歪んだ形で)もつことで人生がおかしくなる話を整理しました。

 これについては、高橋さんからいただいたコメントが、多分大多数の方の反応かな、と思いました。

 たしかに「幸せ」なのですが、「でもな~」って、つい思っちゃうんですよね。

多分正論かもしれないけどいまいち
納得感がないという感想をみんなお持ちではないかと思える

 では、もうちっと実利的に、今感謝したほうが損得勘定で(笑)得だ!ということを実感するにはどうしたら良いでしょうか。

 例えば、ちょっと本日一生懸命出典を探したのですが、どうしてもみつからなかった(すいません)小林正観さんの講演会の法話みたいなものがあります。小林正観さんが好きな人はみんな知っている話なので、出典が明記できないのですが、こんな話だということでそれを書いてみます。

お客に感謝すると仕事につながる
ある団体の会長が、会員数が減って困っていました。そこで、小林正観さんに相談しました。すると、小林正観さんは「まず、今いる会員に感謝の気持ちを伝えましょう。そして、その感謝の気持ちをもっと広げて、新しい人たちにも伝えましょう」とアドバイスをされました。

会長は、小林正観さんのアドバイスに従い、会員に感謝の気持ちを伝えるようになりました。すると、その感謝の気持ちが伝わったことで、今まであまり活発に活動していなかった会員たちが団体に積極的に参加するようになりました。

さらに、今まで団体に興味がなかった人たちも、その感謝の気持ちが伝わったことで、興味を持ち始め、新しい会員として入会するようになったのです。このように、会員に感謝することが、新しい会員獲得につながることがある、という話です。

 これなどは、新規会員を増やそうとするよりも既存客を大事にしようというマーケティングの基本的な考え方に合致していますね。

 でもこれだと、理論的じゃないのでこれもいまいちインパクトに欠ける。じゃあ、みこちゃん的にアクロバティックに他の王道理論を持ってきましょう。

 これです。

日経クロストレンド「マーケティング視点のDX(=DX2.0)を進めよう」

 小林正観さんの「現在に感謝せよ」というのは、エイブラハム・マズローとフィリップ・コトラーを援用するとくっきりと腑に落ちます。

マーケティング4.0は、自己実現のマーケティングとも呼ばれます。その商品・サービスは自分らしさを体現するものであり、時にSNSを通じて熱心なエバンジェリスト(伝道師)となって、ブランドに深く関与していくことを求める。そんな関係性の構築を目指すものです。

上記記事より引用

 これは、小林正観さんの現在に感謝することによって会員数が増えたある団体の会長さんの話の理論的裏付けですね。

 ちなみにコトラーのマーケティング理論の歴史は、そのままマーケティングという学問における人間理解の変遷になっていて、さすがは巨匠コトラーだなと思います。

 こんな感じです。

【マーケティング1.0】1900年代〜1960年代産業革命を機に大量生産・大量消費の時代に突入したことによる「製品中心」のマーケティング

【マーケティング2.0】1970年代〜1980年代オイルショックによる経済活動の停滞を背景とした、消費者を満足させるための「消費者志向」マーケティング

【マーケティング3.0】1990年代〜2000年代インターネットやソーシャルメディアが発達して消費者が主体的に情報収集できるようになったことを背景とした、企業理念や社会問題の解決といった価値をメッセージとして届ける「価値主導」のマーケティング

マーケティング4.0で重要な「5A」フレームワーク
マーケティング4.0の中で重要な意味を持っているフレームワークに、「5A」と呼ばれるものがあります。これは、消費者が商品・サービスを購入するまでの道筋を示した「カスタマージャーニー」のひとつです。
マーケティング4.0が登場する以前は、カスタマージャーニーを示すフレームワークとしては「4A」が主流でした。これは、消費者の行動をAwareness(認知)→Attitude(態度)→Act(購買)→Act again(再購買)に分解したもので、消費者が商品・サービスをリピートすることを最終段階に位置付けています。

これに対し、「5A」では、消費者が他の消費者に商品・サービスを勧めることを最終段階としています。インターネットやSNSの浸透に伴い、消費者が情報を発信できるようになった時代であることが反映されています。「5A」では、消費者の行動は次のように分解されています。

Aware(認識):商品・サービスの存在を知る
Appeal(印象):商品・サービスが記憶に残る
Ask(調査):商品・サービスについて調べる
Act(購買):商品・サービスを実際に購入する
Advocate(推奨):商品・サービスを気に入り、他の消費者に勧める

 この最後のAdovocate。これが、小林正観さんの「感謝の法則」の実利的(マーケティング的、ビジネス的)意味です。

 企業活動という、最も利益、実利を優先する現場において、現在一番大切とされているのは、下記のような自己マズローの実現段階=コトラーのマーケティング4.0段階の消費者の価値の実現、製品の価値の最大化です。

 これは、どうやって実現するかというと、欠乏動機(要求)ではなく成長動機(欲求)に着目してそれを実現することです。

 再び前回と同様、小林正観さんのこの本から引用してみましょう。

希望は、人間の向上心からくるものなのか?
「夢」や「希望」という言葉を検証してみます。
「夢」や「希望」というのは、もしかすると…、
 足りないものをあれこれ挙げつらねて、
 もっとほしい、まだまだほしい、
 手に入れたいと言っていること
 にほかならないのかもしれません。
希望という「聞き心地のよい言葉」で、実は、私たちは、欲望をかきたてられ、要求を宇宙に向かって突きつけるのがいいことだ、とずっと洗脳させられてきたのかもしれません。

 それとは逆に「今いただいているものに感謝」という概念があちこちに入り込んでくると、「夢」や「希望」というものが、いちじるしく減っていくことに気がつきました。

 人間は、「今、いただいているものに気がつき、感謝をはじめる」と、あれがほしい、これがほしいという気持ちが、いちじるしく減っていくようなのです。
「でも、人間には向上心が必要ではないのか」と言う人がいます。一般的にいわれる「向上心」というものは、本当に必要なのでしょうか?
「あれをよこせ、これもよこせ、あれもほしい、これもほしいと言っている人間の向上心」というものと、「あれに気がついて感謝」、「これに気がついて感謝」、「まわりの人に感謝」、「天上界の方々に感謝」をしている人の向上心と、どちらが本当の向上心なのでしょうか。
 世の中の出来事というのは、1人でできることなどは、たぶん、ひとつもないのではないかと思います。

すべてのことは全部、自分以外の方々のおかげで成り立っているそこに気がついて感謝することのほうがむしろ、人間として向上することなのかもしれません。
 自分の「我」で、自分の「意思」で何かを手に入れたいと思うことが、はたして向上心といえるのかどうか、よく考えてみたいところです。

上掲書

 いかがでしょうか、これはマズローとコトラーの理論をすべてやさしく言い換えたものになっています。

 つまり、感謝するということは人間の成長の本質であり、そして同時にビジネスという実利を最も追求する場所で、現在最重要に大切だとされている自己実現マーケティング(マーケティング4.0)を達成するために不可欠の考え方だったのでした。

 というわけで、ないものねだりをしているのは、コトラーで言えば【マーケティング1.0】1900年代〜1960年代産業革命を機に大量生産・大量消費の時代に突入したことによる「製品中心」のマーケティングで描かれた、貧しい時代の欠乏動機だということになります。

 何もかも物が満たされたこの現代社会において、なお私たちが不幸でありつずけているのは、自己実現を達成するために不可欠な感謝の気持をないがしろにし、極めて古い我が国で言えば高度経済成長期までの動機で今現在も生きようとしている、というアナクロニズムにあると言えるでしょう。

 だから、私たちは私達自身の欲望の形をアップデートする必要があるのです。

 その時に、マズロー、コトラーと並んで、小林正観さんの言葉は非常に参考になると思います。

 以上2回シリーズ終わり。


 また、このあたりは過去記事にも詳述していますので、興味のある方はぜひご参照ください。
(^-^)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?