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夜更かしの小さな秘密

誰かと一緒なら、夜更かしは案外簡単なものだ。

友達が「一緒に勉強をしよう」と誘ってくれたから、電話を繋ぎながら勉強をすることにした。0時30分を指す時計。真夜中の勉強会が始まった。おしゃべりは無し、ただずっとお互いに自分の勉強をするだけ。

そうそう、最適な勉強への取り組み方というのは、本当に人それぞれだなあと思った。

この前、ある友達が「家は休むところだから勉強なんかできない。」って言っていた。その人は、勉強するときにはいつも学校の図書館やどこかのカフェだったりと絶対に外に出るんだって。終わるまで帰れないから早く片付けてしまおうと、自然と怠ける気持ちはセーブされて集中力も高まるし、なにより家では最大にリラックスできるようになるらしい。すごくメリハリのついた勉強方法だなと思う。

一方でわたしという人間は、外界への緊張感が存在する環境では勉強ができないということを最近知った。(もう22年間も生きているのにね。)誰かがそばにいると無意識にアンテナを張って、そこから発される「なにか」を感じ取ろうとしてしまう。つまり、脳みそを回転させるための内側への集中力は無くなって、物音や会話、空気を察知しようとする外界への集中力だけになっちゃうんだ。

おうちの中では外界への緊張感なんてゼロ。すーぐ椅子の上に足なんかのっけちゃうし(みっともない)、お菓子も食べちゃうし(これはセーフ)、歌だって歌っちゃう(隣の部屋から対抗する歌が聞こえてきて、初めて自分が歌ってることに気づくこともあるくらい無意識)。

だからさ、世間がこんなことになってしまって、家の中から簡単に出られない毎日が続いているけど、幸せなことにわたしの勉強への支障は、あんまりない。そう、あんまり、ね。

ちっとも支障がない。といえなかったのには理由がある。少し休憩しようとベッドに体を委ねたが最後、そこから最低1時間は出られない、っていうことを今日までに数えきれないほどやっているから。どうにかベッドから早く抜け出せる方法を見つけなきゃいけない。これはちょっとだけ勉強の支障だからね。

ベッドの居心地を悪くしてしまえばいいんだけど、それをやるくらいなら勉強なんかしなくてもいいって思っちゃうかも。ベッドが家の中で、いや、外を含めても大好きな場所のひとつだから。

春とは知らない間に別れを告げていたみたいで、季節はもう夏。気づいたら冷房がなきゃ過ごせなくなっているし、太陽はいつもよりも早く顔を見せるようになってきた。もう5時になりそうだ。

そろそろ勉強もやめて眠ろうかなと思って、電話をつなげていたことを思い出した。ひとりで勉強するよりもずっと長く頑張れた。気がする。

電話を切らなきゃなって思って、家族を起こさないようにいつもよりも小さな声で話してみたら、なんだか他の人には話せないような秘密のお話をしているみたいだった。

夜の終わりがけの生ぬるい空気の中に浮かぶ。

まぶたは少しだけ重たい。

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