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人生の再生速度を変えてみる

病気をして、人生の再生速度が変わったと感じている。

がんになるまでの35年間は、振り返ると「駆け足」で人生を送ってきたように思う。
時間を守るとかいうことではなく、常に
「自分はもっと出来るはずなのに」とか
「親や世間の期待に応えていないような気がする」
といった焦燥感を抱えていた。

学校や世間の作ったものさしで評価されることに何も疑問を感じず、八方美人になっていった10代。

20代は自己主張することを覚え、やりたいことを見つけ挑戦するも、慣れない縦割り組織や人間関係にどんどん疲弊していった。

出産を機に個人で仕事をし始めた30代。
育児と少しずつ増えていく仕事を必死でこなしていくうちに、自分の体と心をゆっくり見つめる時間は激減した。

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そして訪れたパラダイム変革。
周りの顔色を伺って一喜一憂し、自分の感情や生活は二の次にしてきた自分の価値観がガラッと変わった。

恐怖に押し潰されながら手術台に足を掛けたとき、
本当は自分でしか自分を守れないし、幸せにしてあげられるのも自分だけなんだ、とやっと気付いた。

麻酔から目を覚ました時、「生きている」という実感だけが心を満たしていて、自分が自分の世界の全てなんだと悟った。

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手術の翌日から歩行訓練が始まった。
起き上がることすらできなくて、周りに全てを頼るしかなかった。
自分の無力さを認め、素直に周りに話してお願いしたら、みんなが慰め喜んで助けてくれた。
そこでハッと気がついた。
自分の抱えているどうしようも無い不安や焦燥感について、家族や友人にありのままの心で飾らず話したのは人生で初めてのことだったのだ。

親や友人の反応を気にして、今までどんなに自分を大きく見せていたことだろう。
今までの人生を「駆け足」と感じていたのは、他人に見せている自分の虚構の影を、本当姿の私が常に必死に追いかけていたからかもしれない。
自分の偽りの影を追うことをやめたとき、人生の速度が心地よく減速していって、身近に転がっていた小さな幸せに気づくことができた。

これからはもう少し人生をスローモーションで再生してみて、自分の体や心に耳を傾けてみたり、周りにいる人の声をもっとじっくり聞いたりして丁寧に生きてみたいと思う。

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