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立つ お辞儀する 歩く~自分の姿を客観視してより美しく

先日読んだ松浦弥太郎さんのエッセイ集の中で、彼のお気に入りの老舗バーのオーナーの言葉に胸を打たれました。

いつもヨーガを実践しながら、姿勢を正すことが深く意識とつながっていることを感じているのですが、このオーナーの言葉は、基本的な動作を美しく行うことがいかに大切であるかを分かりやすく教えてくれます。

そのバーはおいしいカクテルだけでなく、その柔らかな雰囲気が自分を癒してくれる、大好きなお店とのことなのですが、バーテンダーの方々の所作がいつも素敵なので、松浦さんはオーナーにお聞きしたそうです。

「こちらで働く人たちは、まず何を教わるのでしょうか?」

最初は立ち方です。まっすぐに力を入れて立ってみなさいと言って立たせてみると、ほとんどの人がまっすぐに立てないのです。普段の生活の中でスッとまっすぐに立つ意識を持ったことがないからでしょうね。その次に教えるのはお辞儀の仕方です。お辞儀とは感謝を伝えるものです。単に深々とお辞儀をすればよいというものでもありません。そして歩き方を教えます。姿勢よく、静かに品良く歩くのはむつかしいのですよ。
この三つを身につけるコツは、いつも自分を客観視することです。少し離れたところから自分を見て、美しいかどうかを想像して確かめることです。所作が美しいと、人から好かれ、愛されます。どんな仕事でもお客様から愛されないとやっていけないでしょう。そのためのことなのです。

「伝わる力」松浦弥太郎著


このような意識と、そしてそれを表す美しい所作で、お客様をお迎えしているからこそ、それが松浦さんにも伝わり、皆さんにとって心地よいバーとなっているのだと思います。

一番簡単なことが、実は一番むつかしいのです。一番簡単なことを美しく行うことができるようになれば一人前です。美しさとは、つつましくて、やわらかく、静かで、ゆるやかなことです。

「伝わる力」松浦弥太郎著


私たちは、この一番簡単な「立ち方」「お辞儀の仕方」「歩き方」をきちんと学ぶ機会が、あまりにもなかったのではないでしょうか。

体育の授業でやる「気をつけ、前へならえ、休め」では、美しく動く意識までは、誰も持っていなかったですよね (笑)

日本の子どもたちは、小さい時からお稽古事や受験勉強で忙しく、人間として大切な基本を教えてくれる人がいなくなっていることが、とても残念だと思いました。


でも、大人になってからでも、美しい所作の大切さに気づき、まずは「美しく立つ」「美しくお辞儀する」「美しく歩く」ことを、意識的に行っていくことから始めてみませんか。



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