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"いい先生"とはどんな先生? 『学力の経済学』を読んで①

1. 教員の「数」に関する議論は多いけれども・・・

学校=ブラックというイメージが社会へ浸透したおかげで、先生になりたい人がすごくへっているみたいです。

教員不人気は大学の教員養成学部にも影響を及ぼしています。教育学部の志願者数はこの10年間で激減しています。私が在籍する大学を例に挙げると2010年と2018年の教育学部志願者数を比較した時、なんと471人も志願者が減少しています。

また、最近では「常勤講師」の増加もニュースに取り上げられるようになりました。常勤講師とは、通常の教員と業務内容はほぼ変わらず、契約が1年の会社でいう契約社員みたいなポジションです。

自治体によっては常勤講師の割合が10%を超えているところもあります。1割の先生は1年ごとに学校を転々としなければいけないという、何とも酷な制度です。

教員の不人気による教員養成学部志願者の減少や常勤講師の増加はいずれも、教員の「数」に関する話題です。教員不足の問題はニュースで取り上げられますが、教員の「質」について取り上げられることは滅多にないように思われます。質についての議論が行われても、主観的な意見であったりエビデンスのない議論になりがちです。

今回は教員の「質」について考えていきたいと思います。

2. "Value-Added"という考え方

「質」が高い、つまり「いい先生」とはどんな先生でしょうか。皆さんも思い出してみてください。今まで出会った「いい先生」の共通点はありますか?授業がうまいとか、板書が綺麗とか、話が面白い、とか美人とかw。(実際美人の先生ほど授業評価が高かったという研究もあります。)

授業がうまいことは先生にとって最も大事なスキルの一つですね。でも授業がうまい=教師の質が高いと言えるのでしょうか。そもそも「授業がうまい」というのをどうやって測定したらいいのでしょうか。

今回は『学力の経済学』に書かれていた教員の質を測定する方法の一つを紹介します。

その方法は「教員の担当した子供の成績の変化で見る」というものです。

例えば1学期の期末試験で英語が55点だったA君が、2学期の期末試験で75点を取ったとします。このあいだのテストスコアの上昇分をこの生徒の担任の教育力によってもたらされたものだと考えるわけです。

どうやらこの学力の変化は経済用語で「付加価値(Value-Added)」と呼ばれるらしいです。

僕もみてびっくりしたのですが、アメリカのある州では先生の名前を打ち込むだけで、その先生が教えた生徒の学力変化、付加価値がみられるという取り組みがあります。

実際適当に名前を打ち込んでやってみました。

1枚目の写真は、ある先生の数学の付加価値を表しています。

※分布の右に位置する教員ほど、付加価値が高く、分布の左に位置する教員ほど付加価値が低い。

この教員はMoreという区分にあるので、平均よりも付加価値が高いということになります。

ある研究者の研究によると付加価値の考え方をもとに教員の質を測定する方法は極めてバイアスのすくない測定方法であることが明らかになっています。

まとめ

・ある子供の学力の上昇幅で表される「付加価値」は教員の質を測定する指標として有用

他校、他県の生徒と比較するのではなく、過去の生徒自身と比較して昨日より今日、今日より明日と伸ばしてやれる先生が「いい先生」

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