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神の怒りにふれた新人編集者

やっちまった。親愛なる神を怒らせちまった。

編プロの編集者になって早1年、できる仕事も少しずつ増えた時だった。入社したばかりの頃は不明点だらけで、基本的には先輩の指示に従う必要があった。言われたとおりに原稿を書き、〆切までに仕上げる。でも今はそれだけじゃない。クライアントの意向をくみ取って、社外スタッフや社内に伝達する媒介的な仕事もするようになってきた。まだ新人なので先輩のサポートなしにはできないけれど、ちょっとずつ編集者っぽくなってきたのかなぁ、なんて思い始めた頃だった。

ちょうど今、ある冊子の制作を担当しており、クライアントの修正内容を取りまとめる仕事をしている。入稿まであと数日、ようやく終わりが見えてきた。クライアントからの赤字指示も減ってきた……と思いきや、ここへきて大爆発。「なんでいま言う?」みたいな赤字が大量に押し寄せてきた。〆切直前の赤字襲来は、きっと制作あるあるなのだろう。正直やめてほしい。やめてほしいが、できるだけクライアントの要望には応えたい。自分なりに赤字指示を解釈し、修正指示のことばを和らげ、デザイナーさんに連携した。

約30分後、珍しい方からメールが届いた。
私は、神の怒りに触れてしまった。

送り主は、普段やりとりするデザイナーさんの上司だった。私は一度しか会ってないけど、会社の先輩は何度か仕事をしているらしい。見覚えのある広告をいくつも手掛けたベテランデザイナーさん。

そんなスゴイ人から私あてにきた初めてのメールが、怒りのメールだった。怒りの原因は、当然わたし。穏やかな言い方ながら「このタイミングでこの修正指示は困る」と言わせてしまった。クライアントの指示を丸投げしたわけではないけれど、本来であれば私とクライアントで赤字内容を調整すべきだった。それをせず、粗いまま大量の修正を投げてしまったのだから、そりゃ怒りに触れて当然だ。いや怒りというより苦言の方が正しいかもしれない。いずれにしろ、編集者である私の調整不足で迷惑をかけたのには変わりなかった。あぁ、やってしまった。。

編プロに転職してから、主にデザイナーさんやイラストレーターさん、漫画家さんは「神」だと思うようになった。自分では決してできない神業的な仕事をしていただけるから。こちらの拙い要望を、期日までにデザインや絵に変身させてくれる。かわいい。カッコいい。オシャレ。分かりやすい。もう、本当にすごい。絵心やデザインセンスのない私からすれば、もう偉大なる神だ。尊敬しかない。社内のやりとりであっても、デザイナーさん・イラストレーターさん・漫画家さんは絶対「さん付け」で呼ぶくらいに。

それだけ尊敬する神を怒らせたのは、本当にしんどかった。自分が怒られた凹みよりも、相手を怒らせてしまった悲しみの方が強い。あぁ、不出来なわたしのせいで迷惑をかけてしまうなんて……。

今回の件は、頼れる先輩がクライアントやデザイナーさんと上手く調整いただいたおかげで、どうにか無理ない範囲の修正におさめられた。あぁ、よかった……。今日の出来事によって、新人編集者としてたるんだ気持ちを一気に引き締めてくれた。

編集者のわたしにとって、クリエイターは神様だ。デザイナーさんやイラストレーターさん、漫画家さん、カメラマンさん。自分には決してできない仕事をやり遂げる。みなさん本当にすごい。だからこそ編集者としてしっかり調整し、働きやすい環境を整えなければいけないのだろう。

でも神々の意に沿う対応がすべてではない、らしい。先輩からきいた話では、クライアントや読者のためにデザイナーさん方を説得し、無理なお願いもしなければいけないときもあるようだ。新人の私は、まだまだその域まで達しないけど。でも神々がもっと輝く存在になれるためには、いつか必要な試練なんだろう。

わたしの神々が、神らしく光り輝いてもらうためにも、編集者として一生懸命頑張りたい。頑張って、努力して、、、いつか神々と仲良くお酒が飲めたら、嬉しいな……。


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