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濃い茶38Lとともに夫の帰りを待つ #別居婚

夫は「おーいお茶 濃い茶」が大好きだ。
もうメチャクチャ好きだ。

濃い茶とは、「おーいお茶」ブランドの中で苦み・渋みが特に強いお茶だ。苦みの理由はカテキンの量にある。カテキンが一般的な緑茶の2倍(400mg/500ml)含まれているらしい。2004年に販売開始し、2019年には「実は体脂肪を減らす」お茶として打ち出したところ、前年比35%増を記録するヒット商品に。今ではスタンダードの「おーいお茶」に次ぐ人気商品となっている。

人気のお茶だから飲んでいる人は多いけど、夫の「濃い茶愛」は群を抜いている。コンビニやスーパーで買うお茶は100%「濃い茶」だ。濃茶以外ありえない。なんと10年以上も濃い茶ばかり飲む生活を続けているらしい。夫から「お茶を買ってきて」と言われれば、濃い茶一択だ。濃い茶愛はとどまるところを知らず、ついに社内報で夫の自己紹介が掲載されたときにも、3分の2は濃い茶愛で埋めていたほどだ。見せてもらったけれど、大好きな濃い茶を語っているだけあって結構おもしろい。会社でどんな評判だったかは知らないけれど、、

そんな夫と結婚し、家を買うと、当然のように濃い茶(2L)をストックするようになった。今は冷蔵庫に3本、キッチンの棚に16本しまわれている。別居婚をしているので、夫は基本週末しか帰ってこない。それでも気づけば濃い茶が飲み尽くされているほどだ。。

一緒に暮らすようになってから、いつの間にか濃い茶を注文するのがわたしの役目になっていた。最初は親切心のつもりで、夫の代わりに濃い茶を仕入れてあげた。でも自分から注文したのが悪かった。それ以降、2Lペットボトルの数が減ったら、わたしが注文するのが暗黙のルールのようになった。当然、濃い茶狂の夫がほとんど飲みほしている。なぜ私が注文しなきゃいけないんだろうか? 何度か夫に抗議したものの、ことごとくスルー。ただ濃い茶しか飲まない夫は、濃茶がなければ干からびてしまうかもしれない。死因が濃い茶不足なんてダサすぎる。結局、私がしぶしぶ濃い茶の仕入れを続けている。

ただ最近は夫が海外出張へいくようになり、濃い茶が全く減らなくなった。もう3週間ほど、本数に動きがない。いつまでも減らない濃い茶って、なんだか不思議だ。

家で濃い茶を飲んでいる夫が懐かしい。冷蔵庫から冷えた濃い茶(2L)を取り出し、窓辺の椅子から空や海、遠くの工場を眺めながらお茶を飲む。何万回も「いい景色だな〜」と言いながら。少し離れた場所で、私は本や漫画を読んでいる。日曜日になると、濃い茶2Lを2本ほど空けて帰ってく。濃茶代を払うのは癪だけど、あの穏やかな時間はよかったなぁ。

うちにある濃い茶を数えてみたら全部で19本、38Lが眠っていた。もったいないから飲まないようにしていたけれど。夫が帰ってくるまで、私も濃い茶を飲みながら待っていようかと思う。


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