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たこさんウインナーで、自分に小さなご褒美を。

たこさんウインナーは、誰かのためにつくることが多い。

子どもにせがまれて親がつくってあげたり、時間がある朝に家族のためにつくってみたり、恋人のためにつくるお弁当にそっと添えたり……。たこさんウインナーが誕生する時、たいてい自分以外の誰かの顔が頭に浮かんでいる。

だけど私は、自分のためだけにたこさんウインナーを作ってみた。

一人きりの朝食を作る時、ふいにたこさんウインナーが食べたくなった日があった。あの日は2度寝して30分も遅く起きていた。普通なら遅刻だけど、幸い在宅ワークのだった。勤め先はフレックスタイム制なので、厳密な始業時間はない。「まあ今日はちょっとくらい遅れてもいいよね」という不真面目な気持ちが芽生え、私はたこさんウインナーを作り始めた。

たこさんウインナーをつくるのは何年ぶりだろうか。シャウエッセンの袋から2本のウインナーを取り出し、半分に切る。切り口を8つに分け、タコの足をつくる。温めたフライパンにウインナーを載せてジュゥジュゥ炒める。しばらくすると、足がスカートのように広がってきた。足先がほんのり焦げ、肉の脂の香ばしい匂いが漂ってきたところで、生まれたてのたこさんをお皿にのせ、食卓へ運んだ。

たこさんウインナーは、格段にうまかった。8本の足はカリっと香ばしく、噛むと熱い肉汁が溢れ出した。シャウエッセンはもともと美味しいけれど、遅く起きた朝には贅沢すぎるほど、たこさんウインナーは美味しかった。わたしは4匹のたこさんをペロリと平らげた。

たこさんウインナーは誰かのためにつくるものだと思っていたけど、自分のためにつくるのも悪くない。おかげで朝からほんのり幸せな気分になれた。

在宅ワークにより、忙しい朝にも自由な時間がつくれるようになった。そんな今だからこそ、自分のご機嫌をとるために「たこさんウインナー」をつくってみてはいかがだろうか?

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