見出し画像

『ホークス3軍はなぜ成功したのか?』を読み終えて

 昨日、圧倒的な力の差を見せつけて日本シリーズを制した福岡ソフトバンクホークス。なんとなく横目で見ていただけでも、出てくる選手出てくる選手、みんな凄くてお腹いっぱい状態になりましたが、この本を読んでいたので、まあ納得の試合ではありました。

 友人たちと話していても、やはり親会社の財力の差だろうと言うのですが、それだけで終わってしまっては面白くもなんともありません。

 膨大な情報の中から私のスカスカな頭に突き刺さったのは、人の力、組織を強くしていくために尽くされた人智の素晴らしさでした。

 私が福岡に住んでいた頃のダイエーホークスは本当に弱くて、万年Bクラスでしたが、根本陸夫さんが代表取締役兼監督になってから、短期間でみるみるうちに強くなっていったのが印象的でした。

 夕方のニュースの後にあった「とべとべホークス」というミニ番組で、若手選手たちがアイドル的な人気を得ていったのも、面白く見ていました。

 それがもう30年近くも前のこと。でも、その時に根本さんが撒いた種を王貞治さんが引き継いで、小林至さん、小川一夫さんらが手足となって育ててきたのだと思うと、その壮大さに脱帽して平伏したい思いです。

 ただ、最初に言ったことと矛盾しますが、やはりこの壮大な計画を実行に移せるだけの潤沢な資金が、ソフトバンクという親会社によってもたらされていることは事実です。そして、これはパリーグのいくつかの球団にも当てはまりますが、ファームが立派なのは地方都市を拠点にしているから。土地代も税金も都会より安いので、大都会に居を構えるセ・リーグの球団には真似のできないことでもあります。少なくとも、讀賣以外は難しそうです。

 じゃあ、どうするか。

 筆者が作った計算式で出された「選手1人あたりの試合数」というのがあります。

東京ヤクルト46・3(総試合数274、支配下68人、育成3人)
北海道日本ハム46・8(総試合数271、支配下68人、育成2人)
巨人46・6(総試合数338、支配下68人、育成21人)
福岡ソフトバンク45・1(総試合数338、支配下69人、育成21人)
横浜DeNA43・6(総試合数269、支配下70人、育成4人)
千葉ロッテ43・5(総試合数268、支配下70人、育成4人)
阪神43・2(総試合数263、支配下69人、育成4人)
中日43・1(総試合数262、支配下67人、育成6人)
埼玉西武43・1(総試合数262、支配下67人、育成6人)
広島41・7(総試合数264、支配下70人、育成6人)
オリックス41・1(総試合数260、支配下70人、育成6人)
東北楽天38・5(総試合数266、支配下70人、育成13人)

喜瀬 雅則. ホークス3軍はなぜ成功したのか?~才能を見抜き、開花させる育成力~ (Japanese Edition) (Kindle の位置No.672-685). Kindle 版. 

 ソフトバンクと巨人は三軍を含めているので、これを二軍制に変換すると

福岡ソフトバンク34.7
巨人36.3

 どういうことかというと、逸材を見つけるために育成を増やしても、出場機会がなければ能力を見極められないし、試合の中で育つ力も育たない、ということです。

 育成選手を多く獲り、尚且つ試合にも出させるためには、独立リーグや社会人、あるいは学生との試合の機会も作らなければならない。増えた選手たちが暮らす環境も整えなければいけない。しかし分母が大きくなれば、逸材も生まれやすい。それが三軍制の意義です。

 分母を大きくする=育成選手を多く取り三軍を作る=施設も育成にかけるお金も増える。やはり結局のところはお金です。

 そう考えると、対極にいる日本ハムファイターズと我が東京ヤクルトスワローズの状況はどうでしょう。少数精鋭では強くなれないのでしょうか。

 ファイターズは「育成の日本ハム」と言われ、数々の名選手を育成してきました。しかしながら、2018年のドラフトまで、育成選手というものを獲ってこなかったチームでもあります。それでリーグ優勝5回、日本一2回(北海道移転後から2019年間での16シーズンで)。

 ホークスや巨人みたいにお金がないからできない、は言い訳だということになります。少数精鋭でも強くなれるのです。

 それでも、鎌ヶ谷スタジアムなどを見ていると、少ない選手たちをよい環境で育成しようという気持ちが感じられて、とても羨ましいと思います。ホークスの筑後の設備とまで行かなくても、鎌ヶ谷も寮の目の前に室内練習場やスタジアムがあり、恵まれた環境と言えます。少数精鋭でも、お金をかけるところにはちゃんとかけている印象です。

 一方、スワローズの戸田球場は、昨年水没したことで有名になりました。戸田球場は彩湖・道満グリーンパークに隣接、荒川第一調節池の一部であり、荒川の氾濫が想定されるときにはあえて水を入れて水没させる場所にあります。(駐車場には猿も出ます)

 土手から観戦できるのどかさや、おそらくどこよりも近い距離で選手の練習を見られるのが戸田球場の魅力ではありますが、流石に水没して機材が壊れ、道具が流されたと聞いたときには、少しくらいはお金をかけて、安全な場所に球場を作って欲しいと思いました。

 そうした部分も含め、将来に渡って愛されるスワローズ、できればAクラス常連くらいに強いスワローズを目指して、パースペクティブな視点と強い信念を持った誰か、ホークスにとっての根本さん、王さんのような存在がいるのかどうか。残念ながら今までは感じることができませんでした。

 ただ、今年小川淳司GMが就任してから、少しずつではありますが、変化の兆しは見えているような気がします。小川GMが根本さんや王さんのような存在になれるのかどうか。淳司さんを支えるブレインはいるのか。ファンの優しさに甘えてきた姿勢を変える気が球団にあるのかどうか、とても注目しています。

 ただ球団批判をするのではなく、どこを見ればいいのかを、この本に教えてもらった気がします。

 他にもいろんな示唆を受けました。また機会があれば、思うことを書いてみようと思います。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,937件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?