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成長よりも大切なこと

幼稚園のお迎えのときに先生から聞いたのですが、息子が園庭でお弁当を食べたいと言い出したそうです。

担任の先生に了解をもらって、だれもいない園庭で、加配でついてくださっている先生とふたりきりでお弁当を食べたとのこと。

そして、食後はそのまま先生と、だれもいない園庭で遊んでいたそうです。

大好きな先生との園庭デート。きっと、普段他の子たちがいる中で先生と過ごすのとは違う特別感があったことでしょう。


発達に遅れがある息子。年中の終わり頃までは、幼稚園ではとにかく周りの子から刺激を受けてほしいと私は願っていました。

友だちと関わることがどういうことか知ってほしい。

子ども同士の関わりから生まれる喜びや悲しみやいろいろな感情を経験してほしい。

私には友だちは用意してあげられないから、幼稚園でたくさん関わってほしい。

そして、ほぼ諦めてはいたけれど完全には諦めきれなかった願い。叶うなら仲良しの友だちを作ってほしい。

そんなことばかり考えていました。


でも、年中が終わり、幼稚園生活も残り一年だと思ったとき、急に刺激とか関わりとかどうでもよくなったんです。

自分の中で煮えたぎっていたものがスーッと冷めていくような感覚でした。

代わりに出てきたのは、その場所で過ごす時間をしっかり味わってほしいという思い。五感と感情で園生活を目いっぱい感じてほしいという思いでした。

成長とか刺激とかは二の次三の次。今しか生きられない幼稚園児時代を存分に生きることがなにより貴重だ、って。


去年の今頃、息子はほとんど集団活動に参加できず、トイレでひたすらドアを開け閉めしたり、窓から園の外にある信号をずっと眺めていたりしていたそうです。

先生からそんな彼の様子を聞いて、せっかく幼稚園にいるのに意味ないなと私は思っていました。

でも、今思えばきっと意味のない時間ではなかったはず。

「みんなと同じことをしたくない」という気持ち、「怖い」なのか「嫌」なのか、そういう感情はあったはずだし、ドアを開け閉めしながら、信号を眺めながら、目の端に他の子の姿も入っていたかもしれない。声も聞こえていたはず。加配の先生がそばにいてくれる安心感も。

トイレのドアを開け閉めしている時間も、信号を眺めている時間も、彼の大切な幼稚園生活のワンシーン。今ならそう素直に思えます。


こんなに幼稚園や先生たちのことが大好きなのに、あと1か月半でこの生活が終わってしまう。そう思うと辛くなります。本人はきっとそのことをわかっていないだろうからなおさら辛い。

最後まで休園なく通えますように。そして、最後の最後まで、息子らしい思い出がたくさんできますように。



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