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いきなり集客に投資しても、だいたい失敗してしまう。栗原康太氏(才流)

世界へボカン社・代表取締役の徳田祐希です。前回に引き続き、BtoBマーケティングの第一人者である株式会社才流(サイル)の栗原康太さんにお話を伺います。 

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■まずは「ニーズに応えるサービス」を。

徳田 具体的に、オンラインセールス・オンラインマーケティングをどう始めるかについて伺います。実際のところ、Nice to haveからMust haveまでいろいろな商材を持っている会社があると思いますが、どのあたりから手を付ければいいのでしょうか?
 
栗原 そうですね、こちらもスライドを投影させてください。 

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栗原 「オンラインマーケティング始めの一歩」とありますが、始めるときによくある失敗は何かというとこのステップ3「集客に投資する」から着手してしまうケースですね。
 
例えばマーケティングだと「デジタルの広告予算を増やさなきゃ」「コンテンツを急いで作らなきゃ」「オンライン商談の数を取りに行かなきゃ」みたいに思ってしまうのですが、これは時期尚早というか。
 
まずはステップ1、「新サービス開発および既存サービスのメッセージ変更」というところからですね。前編でもお話したように、Nice to haveなものって今は投資が下りにくいので。

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今求められているものはMust have、不景気なのでコスト削減だしテレワーク化・リモートワーク化する必要がある。このニーズに応える商材は、今でも引き続きすごく売れています。弊社の調査でも、そうしたプロダクトは前月比5倍から10倍で売れていたり。テレワークを推進するようなものって、それぐらい需要があるんです。
 
市場のニーズが変わったことを踏まえ、まずはニーズに応えられる新しいサービスを作る必要がありますし、類似したサービスをすでに扱っているのであればマーケティングやセールスのメッセージをまず整える。それがステップ1になります。

徳田 なるほど、PMFのところですね。

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栗原 そうですね、マーケットが変わった以上プロダクトも変えなきゃいけないよということですね。
 
基本的に、売れないものを頑張って広告してもやっぱり売れないので。本質的には売れるものをマーケティングする、売れるものを営業するというのが正しいので、「基本に立ち返りましょう」「扱うものを変えましょう」というのがステップ1になります。

■バケツの穴を塞ぎましょう

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栗原 そしてステップ2は「バケツの穴を塞ぐ」です。これはオンラインマーケティングに絞って書いていますが、集客などに投資する前に、ステップ1で整えた製品やサービスの価値をちゃんとウェブサイトやLPで正確に表現しましょうということですね。

よくあるのは、ウェブサイトでは「扱っているものはコレで、お客さんの課題はこうで、こういう対象で」という情報がわからないケース。あるいは、そもそもコンバージョンを取れるサイト構成になっていないとか。
 
この状態で広告に投資しても、バケツの底から水が流れてすごくもったいないことになります。まずはバケツの穴を塞ぎましょう。

セールスであれば、営業資料ですね。たまに「営業資料は3年変えていません、30ページあるけど2ページしか使っていません」みたいなケースがあります。せっかくのタイミングなので、ウェブサイトやランディングページ、営業資料をもう一度見直しましょうというのがステップ2です。
 
徳田 なるほど。

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栗原 もう一つ見逃しがちなのは、既存のハウスリストです。ほとんどの企業さんって、数年数十年とビジネスをやっているので、既存のリストをお持ちのはずなんですね。まずは、そこの方々とのコミュニケーションを改めて見直すところからだと思います。
 
過去に1万件のリードを取ったなら、コンテンツの配信やメールマーケティング、営業さんなら数百社数千社と営業されていると思いますので、一度商談した/失注した会社さんなどのリストを見直すこと。それが重要になります。 
 
ステップ1と2を踏まえて、ステップ3の「集客」に移るなら、バケツの底がふさがった状態になっていると思います。
 
徳田 なるほどですね。才流さんに相談すると、プロダクトの部分から見ていただけるのですか?
 

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栗原 そうですね。プロダクトをどういうメッセージで表現するか、どのように打ち出していくかというところからフレームワークを持っています。これは弊社の場合、テレワーク化になる前からずっとやっていますね。
 
徳田 僕らももともと海外(WEBマーケティング)だったので、テレワークを前提としてスタートしました。

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顧客の購買決定要因、何にふれて購入に至ったのかをひたすら解像度を高めてサイトに落とし込んでいく作業をやっていたんですが、すごく通じるものがあります。才流さんにはたくさん学ばせていただいています。
 
栗原 一緒ですね。この1、2をうまくやれる、もしくは相談できる会社さんを見つけられるといいのだと思います。テレワークとかコロナに関係なく、ステップ3という手段ベースのところから飛びついてしまうと、いつの時代も成果は出にくいですよね。

■BtoBマーケティングの未来について

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徳田 最後は少し大きな話になるのですが、BtoB営業、マーケティングの今後の未来について。今後、属人性の高い営業マンは本当に活躍できなくなってしまうと思います。 
 
栗原 そうですね。まあZoomにシフトして営業できればいいと思うんですが、飲みに行ったりゴルフに行ったりして案件を取ってた人たちは結構大変になるのかなと思いますね。
 
徳田 そうですね、いわゆる空気や雰囲気というものがZoomとかのデジタル会議では通用しないじゃないですか。音声情報と映像情報しかなくなるので、体感や嗅覚という部分が封じられたとは当然攻め手を変えなくてはいけない。状況が変わっている以上、これは必須ですよね。 
 
栗原 ここで一つ、スライドを共有させていただきます。

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栗原 こちらは2015年にForresterっていうアメリカの調査会社が発表した「Death of a B2B Salesman」っていう業界でも有名なレポートなんですけども。

サマリーでお伝えすると、BtoBの購読担当者は製品サービスを検討する時、営業マンに相談するより自分で調べたい、自己学習したい、かつオンラインで購入するほうが便利だと大半の人が思っていますと。これはアメリカのデータですが、5年前から言われてるんですね。
 
一方で営業が要らないのかというとそんなこともなくて、BtoB購買担当者の大半は「ちゃんと話のわかる営業担当をやり取りをしたい」と思っています。特に高価格帯のサービスや製品では、価格交渉や複雑な契約のやり取り、導入時のサポートや運用時のサポートなどですね。
 
逆に、それ以外の価格交渉の領域、低単価商材に関してはセルフサーブで情報収集して契約までいきたい、もしくはeコマースで買いたいというのが当時から言われています。

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しかしながら企業側は未だにオフライン中心かつ営業マンファーストな価値観で構成されているので、ギャップがすごくありました。例えば私も経営者という立場でいろいろな製品やサービスを検討するのですが、とてもじゃないけどオンラインだけで情報収集して意思決定できるほど情報が出ていないですよね。
 
まさにオフラインの営業マンファーストで、営業さんと商談すると教えてくれるんですが、商談しない限りは教えてもらえないと。購買担当者、発注企業側からするとミスマッチの部分は昔からありました。
 
「Death of a B2B Salesman」でも、相対的にはフィールドセールスよりはインサイドセールス、内勤営業的な方とか見込み顧客づくりをやるリードジェネレーション、デマンドジェネレーションを行なうマーケティング部門の比重が組織内ですでに上がってきていると当時から言われていました。
 
今後残っていくフィールドセールスの担当は、いわゆるお客さんの購買をナビゲートできるコンサルティング的なスキルを持っている人ですね。御用聞きでなく、お客さんにコンサルできる人は残っていくので、そういう人を採用してちゃんと育成の投資をしましょうということですね。

■「やる/やらない」ではなく「いつやるか」

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栗原 今後、企業としてはこういったハイスキルな営業人材を採用する、それから当たり前のマーケティング施策を打つこと。eコマースやwebサイト、そもそものセグメントやポジショニングの見直し。コンテンツやナーチャリングの領域、データ分析をして適切なタイミングで適切なお客さんにあたれるようにすること。
 
なぜならお客さんは自己学習したいし、オンラインで購入したいって言ってるわけですから。こういうことが、今後起こる未来の話かなと思います。
 
徳田 2015年から、こういうことが言われていたんですね。今これが現実となって、購買担当者とセールス側企業の情報ギャップを埋めていける企業からどんどん売上を伸ばし、生き残っていくイメージなんですね。
 
栗原 そうですね。

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徳田 海外の営業担当社って、大きな会社でも人数が少ないんですね。代理店営業の方も少ないので、そもそもリードが来すぎても困るんですよね。情報をしっかり出して、良質なリード獲得に力を入れないといけない。これは僕もいつもお伝えしていることです。
 
例えば、安かろう悪かろうな商品を欲している人に、海外営業が時間を使っちゃうともったいないですよね。今スグのお客さん、そのうちのお客さんに分けてしっかりフォローしていくのは大事だなと、特にテレワーク時代になって感じるところです。
 
栗原 本当にそうですよね。情報を発信していると、それに合ったようなお客さんが自然と集まってくるところがあります。例えば単価が高いセグメントとそうでもないセグメントが出たときに、単価の高いセグメントのお客さんからだけ問い合わせが来る仕組みを作ったり、そのお客さんとだけ商談をセッティングする仕組みづくりって全然構築可能なので。
 
しかしながら、「単価が低い人来ちゃうのでイヤなんですよね」っていって何も取り組まないと、そもそもリードが取れなくなってしまう。オフラインが使えない時代なので。それこそMust have、やったほうがいいよねではなく「やらないといけない」ことで、これはほとんどの会社で起きていることではないかと思います。
 
徳田 そうですね、いつやるかという話ですね。

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栗原 やっぱり人間なかなかこういう危機のときじゃないと、それこそMust haveじゃないと変わる機会もなかったりするので。ある意味しっかりした営業体制、本質的なマーケティング体制にしていくすごくいい機会ではないかと思います。
 
徳田 わかりました。本日は、すごく貴重なお話をありがとうございました!


栗原 康太 氏(くりはら・こうた)
代表取締役社長
1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。
2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。
カンファレンスでの登壇、主要業界紙での執筆、取材実績多数。
 
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参照元:いきなり集客に投資しても、だいたい失敗してしまう。栗原康太氏(才流)

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