大学受験英語を本気で楽しむ
はじめに
英語の勉強は好きですか? 「英単語覚えるのきついなあ」とか「長文で意味が分からないとつまらない」といったこともあると思います。
基礎的なことはやはり身に付けなければなりませんが、その上で、思い切って多読と多聴を中心に勉強をしていくという方法もあります。今回はそのことについてお話しできたらなと思います。
ここでは、私が受験生時代にやっていた勉強を紹介していきます。私がやっていた勉強そのままではなくて、受験を終えたいま振り返ってみての反省を含めつつ、整理したものとなっています(実際にはここで紹介するほどきれいな道ではなくて、もう少し行ったり来たりしながら手さぐりで勉強を進めていました)。
イメージとしては、自分自身がしてきた勉強を軸に今からみた反省を加えて、高校1年の自分に「どのように勉強したらいいか」と聞かれたら答えたい内容です(ちょっとわかりにくかったらすみません)。
私自身の特殊性(私が特別な人だという意味ではなくて、それぞれが持っている好みや個性という特殊さ)もありますから、特別薦められる勉強のやり方ではありません。もう少し広く薦められるような勉強としては、『大学受験英語の標準的な勉強法』も参照してみてください。
私がやっていた勉強法のすべてを取り入れるわけではなくとも、一部を取り入れたり、考え方を自分の勉強に活かして新しいものを生み出したり、「そういうのもあるんだ」と自分のやり方を相対化してみたり、いろいろ受容の仕方はあると思います。
自分なりのやり方で、何かを得てもらえたら嬉しいです。
まず、これから他の科目についても書こうと思っている「大学受験を本気で楽しむ」シリーズ共通で、「楽しむ」の方向性についてお話しします。
毎回同じものを載せることになるので、他の科目の記事で読んだ方は飛ばしていただいてかまいません。
私にとっての「楽しさ」
私は、学ぶことが本当に好きです。「なるほど」と感じたときや、自分が普段見ていたものを別の視点から見ると違ったように現れてくることに気づいたとき、すごく楽しいなって思うんです。
でも、「学ぶことが好き」と言っても、「読書をするのは好き」「自分で考えて知識を整理していくのは好き」とか、「ただただ暗記していくのはあまり好きじゃない」というような好みがありました。
だから、大学受験に向けて勉強をするとなったときに、自分の好みに合っていて、なおかつ合格にも繋がるやり方はないだろうか、と考えることになりました。
その結果として、読書をベースに勉強をしていくことに決めました。「何かを読む」というかたちでの勉強が、自分にとっては、最も多くを感じ、学びを得られるやり方に思えたからです。
さらに言えば、読書をベースにすると、どの科目にも共通して活き、また受験を超えて価値のある読解力や、幅広い分野に対する知識が身についてくるからです。
たとえば英語なら英文の多読多聴、現代文なら(まさに)読書、古文漢文ならとにかく原文読解、世界史なら通史を扱ったものをとにかく読む、などです。
とはいえ同時に、「自分が普段見ていたものを別の視点から見ると違ったように現れてくることに気づ」く楽しさも味わいたくて、そのために読書ベースの勉強とは少し違ったものを考えてみたりもしました。
これについては少し説明しにくいので、英語の具体的な例(「英語"を"学ぶ」)と共にお話しできたらと思います。
さて、それでは本論に入っていきたいと思います。本当は、「英語の勉強を楽しむ」といった形で、本論に入ることを示す大見出しを入れたかったのですが、分類の都合で、本論にあたる4つの節をすべて大見出しで表記します。
その4つの節について簡単に説明を行います。
私の英語の勉強には、次の2つの軸がありました。「英語"で"学ぶ(多読多聴)」と「英語"を"学ぶ(英語学)」というものです。
前者では、英語を通して読んでいる文章の内容(国際問題だったり脳神経科学だったりするそういう英文のテーマ)を楽しむことになります。
一方、後者では、英語というものがどういった文化的背景のもとでどういうかたちで成り立っているのかを知ることを楽しむことになるのです。
そのため、以下では「英語"で"学ぶ」と「英語"を"学ぶ」という2つを中心に節を作っています。ただ、それに加えて、前段階としての「英語の基礎知識養成」と、受験に向けた「英語の受験知識補強」という節も入れています。
英語の基礎知識養成
多読多聴などの勉強に、まず初めから入るのは中々難しいことです。そこに入るための前準備として、基本的な英文法や英単語の知識は持っておく必要があります。
一般的によく使われる参考書などは、『大学受験英語の標準的な勉強法』にて紹介しているので、そちらを参考にしてください。ここでは私が個人的におすすめするものを挙げていきます。
英文法
英文法の参考書としては、やはり川崎芳人・久保田廣美・高田有現・高橋克美・土屋満明・Guy Fisher・山田光・墺タカユキ・鈴木希明(2022)『総合英語Evergreen』(いいずな書店)を薦めます。
分かりやすく基礎的なことから書いてあるだけでなく、英文法の知識として申し分ないほど内容も充実しているからです。この一冊くらいは熟読してみましょう。
それに加えて、英文を自ら作る(英作文)という観点から英文法を学んでみると、より理解が深まります。そこで、大矢復(2024)『大学入試 英作文 ハイパートレーニング 和文英訳編 新装版』(桐原書店)を薦めます。英作文に留まらず、英文を読むときにも役立つ知識が得られるはずです。
これさえあれば、多読多聴に入るための英文法の知識としては十分ではあると思いますが、どうしても大学受験に挑むにあたっては文法問題集を完璧にすることが求められます。
長文では見かけないような細かい文法知識もありますが、同時に基礎的な知識の確認となることも間違いないので、1冊ほど固めてみましょう。
文法問題集については、「私はこれを薦める!」という1冊があるわけではないのですが、私にとっては瓜生豊・篠田重晃(2024)『Next Stage 英文法・語法問題[4th Edition]入試英語頻出ポイント 218の征服』(桐原書店)が馴染み深い参考書です。
中尾孝司(2017)『スクランブル英文法・語法 4th Edition』(旺文社)や、篠田重晃・米山達郎(2023)『英文法・語法 Vintage 4th Edition』(いいずな書店)でも構いません。
英単語
英文法の知識だけでなく、英単語の知識もまずは一度養成しなくてはなりません。相棒となる英単語帳を1冊決めて、固めていきましょう。
私が特におすすめしたいのは、竹岡広信(2018)『必携英単語LEAP』(数検出版)です。
単語の意味や使い方、ニュアンスが丁寧に説明してあり、訳語一つで捉えきれない広さを感じながら英単語を覚えていくことができます。基礎的な単語の使い方に重点が置いてあったり、用例が短いフレーズ中心であるなど、英作文にも役立つのも魅力です。
できることなら、英単語だけでなく、英熟語も固めておきたいところです。花本金吾(2021)『英熟語ターゲット1000 5訂版』(旺文社)などを使ってもよいのですが、『Next Stage』などに載っているイディオムを覚えるのでも良いと思います。
あるいは、『必携英単語LEAP』を固めていれば、特別に英熟語の勉強をしなくてもしばらくは何とかなりますから、この「英語の基礎知識養成」段階では英熟語を飛ばして、「英語"で"学ぶ」の段階で温井史朗・岡田賢三(2024)『速読英熟語 改訂版』(Z会)を使ってみるのも良いと思います。
英文解釈
ここまで紹介してきたものを使って、英文法と英単語の基礎を固めれば、十分に長文演習に入っていけるはずです。とはいえ、実際には長文の中に解釈の難しい英文もあることが多いですから、英文解釈の練習を少し積むのもよいでしょう。
参考書としては、竹岡広信(2019)『入門英文問題精講 4訂版』(旺文社)を薦めます。
さて、次からは多読多聴(長文演習)に入ります。基礎知識を覚えるのにはつらいところもあるかもしれませんが、英文をたくさん読んでいく段階は楽しさに溢れていますよ。
英語"で"学ぶ
多読多聴は有意義なのか
この記事のメインとも呼べる部分です。私は、大学受験英語の勉強としては、多読多聴を重視するのが良いと思っています。
多読が効果的な理由については、門田修平・髙瀬敦子・川﨑眞理子(2021)『英語リーディングの認知科学 文字学習と多読の効果をさぐる』(くろしお出版)などでも述べられており、研究も進んでいます。
でも、研究成果と一般理論はそういった書籍に譲って、ここでは「(私にとって)有意義であった」という経験を中心に、話してみたいと思います。
英文の多読多聴を行うと、多くの文章を読むことになります。
(日本語で)何か本を読もう、文章を読もうと考えると、自分にとって関心のある分野の文章を手にとりがちですよね。それは何も悪いことではありません。でも、「英語の勉強」という名目があると、自分が興味のない文章を触れることになり、「そういう分野もあるんだ」というような刺激が得られるのです。
また、入試では特定の科目の受験者があまり有利にならないように(世界史を選択している方が日本史を選択しているよりも内容が理解しやすいといった事態にならないように)、入試科目の領域からは離れた分野の英文がよく出題されます。
そのようにして、英文の多読多聴を通すと、自分が触れることのなかった新しい分野の理解を深めることができ、それが魅力的なのです。
もちろん、英語力を高めるという意味でも多読多聴はとても有意義です。
たとえば、英単語は日本語の単語と一対一で対応するものではありません。日本語がそうであるように、英語もまた、訳一つに囚われないような豊饒さ、意味の広がりを持っているのです。
原理的に考えてみれば、「意味(の定義)」が先にあって英単語が使われているのではなくて、英単語が使われていて、その使われ方をもとに「意味(の定義)」が決められていることが大半です(実際には相互作用があるとも言えますが)。
そうした、豊かな意味を捉えるためには、英単語の勉強として日本語との対応で捉えていくのではなくて、その英単語の使われている文章を何度も読みながら、馴染ませていくことが必要です。その意味でも、多読多聴は大切です。
あるいは、もっと実践的な話をすることもできます。
英語の入試は、たいていの場合、長文の形で出題されます。限られた時間の中で、長文を読み切って、理解し、解答するためには、「英語を読む」ことに慣れ、素早くできなくてはいけません。一般に「速読力が必要だ」とも言われる話です。
「速読をしよう」と思ってしているのでは、重要な箇所をしっかりと読めなかったりすることもあります。もちろん速読のための考え方があるのは間違いないですが、英語に親しみ、馴染むことで、自然と速読ができるようにもなるのです。
多読多聴が有意義であることについて、少し長めに話してきました。これでもまだ説明不足なようには思えるので、また別の記事を書こうと思います。とはいえ、ここまでの説明でも、多読多聴のイメージがつかめたかなと思います。
ここからは、そのために使える参考書をどんどん紹介していきます。それぞれの参考書の細かいレビューについてもこれから書いていく予定なので、この記事は、参考書まとめ的な役割を果たしてもいます。
ここで紹介するのは多読の参考書がほとんどですが、最近の参考書はどれも付属で長文の音源がついています。長文を読む前に、あるいは読んだ後に音源を繰り返し流したりして、多聴も行っていきましょう。
「速読英単語」シリーズ
とにかく英文をたくさん読んでいきましょう。長文問題集を最初から使っていくのでもかまいません。
でも、個人的には、「長文演習」と思うと身構えてしまうところもあるかなと思うので、もうちょっと読書的に読めるものを最初に薦めます。そうする方が、「英文を読みながら楽しむ」という意識になりやすい気がします。
まずは「速読英単語」シリーズを紹介します。
ご存じの通り、「速読英単語」シリーズは、あくまで単語帳です。でも、単語帳だからこそ、これを一通り読むと、必須英単語にすべて触れることにもなるのです。『必携英単語LEAP』などを使って覚えた単語の定着度の確認にもなります。
「速読英単語」シリーズの一つとして、まずは風早寛(2021)『速読英単語 入門編 改訂第3版』(Z会)があります。これは「入門編」なので、「必修編」よりも易しいです。
とはいえ、基本的な単語を中心に書かれた文章をサッと読んでいくのも大切です。わからなかったら適宜右ページの日本語訳を確認しつつ全長文を読んでみましょう。
そして、風早寛(2022)『速読英単語 必修編 改訂第7版増補版』(Z会)ですね。これが、概ね『必携英単語LEAP』と同じくらいの範囲になるので、『速読英単語 必修編』を全部読めるかどうか確認してみましょう。
先ほど英熟語について説明したときに、温井史朗・岡田賢三(2024)『速読英熟語 改訂版』(Z会)をやってみるのもアリだということを話しました。多読の一環として『速読英熟語』を読みながら、わからなかった熟語を覚えていくということです。
「速読英単語」のシリーズでは、他に、風早寛(2023)『速読英単語 上級編 改訂第5版』(Z会)もあります。これは少し難易度が高めですが、どこかのタイミングで読んでみると良いと思います。英単語のレベルが高い分、内容も面白い気がします。
「英検 文で覚える単熟語」シリーズ
英検対策用の参考書である、旺文社編(2022)「英検 文で覚える単熟語」シリーズ(旺文社)というのもあります。知っている単語が中心の文章を素早く読む練習としては「英検2級」のものが使えます。
単語の補強も兼ねた勉強としては「英検準1級」のものが使えます。英検準1級レベルの英単語は、大学受験においても、出題されうるくらいの難易度です。
さらに高難易度の長文を読みたいと言うことであれば、「英検1級」のものも使ってみてもよいかもしれません。
『話題別英単語リンガメタリカ』
あまり有名なものではありませんが、中澤幸夫(2006)『話題別英単語リンガメタリカ 改訂版』(Z会)という単語帳があります。
入試の出題頻度順などではなくて、「グローバル化」や「経済」「社会問題」といったテーマごとに長文があり、その長文内の単語の解説が載っているというものです。テーマ別にした「速読英単語」のような形です。
英語に限らず大学受験に向けて持っておきたい、様々なテーマに関する基礎知識を手に入れるのにちょうどよい参考書です。英文も興味深いものが多いです。
「テーマ別英単語 ACADEMIC」シリーズ
『リンガメタリカ』の難易度をさらに上げたような単語帳として、中澤幸夫(2009-2010)「テーマ別英単語 ACADEMIC」シリーズ(Z会)があります。
こちらは、初級・中級・上級に分かれていて、中級・上級については、それぞれに人文・社会科学編と自然科学編があります。
初級でも割と難易度は高いです。上級になると、大学受験レベルは基本的に超えた難易度になります。それでも、どれも興味深い英文が多く、非常に楽しめます。
長文を掲載したその他の単語帳
いろんなものがありますが、まず、宇佐美光昭(2020)『英文で覚える 英単語ターゲットR 英単語ターゲット1900レベル 改訂版』(旺文社)というのがあります。お馴染みの単語帳『英単語ターゲット1900』に準拠したものですね。
『英熟語ターゲット1000』対応のものなど、何種類かあります。
松本茂編(2017-2024)「速読速聴・英単語」シリーズ(Z会)というのもあります。「速読英単語」シリーズと同じくZ会のもので、似たような構成です。Basic 2400・Core 1900・Advanced 1100・Daily 1500・Opinion 1100・Business 1200・STANDARD 1800・GLOBAL 900と、種類が多くあります。
最近出版されたものですが、松本茂編(2022)「英単語Issue」シリーズ(Z会)というのもあります。良質な英文がそろっていて、環境編と、キャリア・学び編の2冊があります。
難易度はかなり高めにはなりますが、北村一真・八島純(2022)『上級英単語 LOGOPHILIA ロゴフィリア』(アスク)というのもあります。大学受験対策にしては少し難易度が高いものの、興味があれば使ってみてもよいでしょう。
長文を掲載した単語帳の紹介はここで一度終えます。
「大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリス」シリーズ
ここからは、長文問題集を紹介していきます。
多読多聴、と言われれば、長文演習を行っていくのがスタンダードですから、多くの受験生はここで紹介するような問題集を多く解き進めていくことになるでしょう。
『大学受験英語の標準的な勉強法』にて紹介したものがほとんどになっていますが、ご了承ください。
まずは、関正生「大学入試問題集 関正生の英語長文ポラリス」シリーズ(KADOKAWA)があります。基礎レベル・標準レベル・応用レベル・発展レベルがあります。多読用教材としても使いやすいです。
「イチから鍛える英語長文」シリーズ
武藤一也・内川貴司「イチから鍛える英語長文」シリーズ(学研プラス)は、各長文に対する解説やサポートが充実している丁寧な参考書です。
音読などの復習用にトレーニングブックがついており、多読に向いています。難易度は、Basic・300・500・700の4つがあります。
「システム英語長文頻出問題」シリーズ
『システム英単語』の章立てとリンクしている、霜康司「システム英語長文頻出問題」シリーズ(駿台文庫)という問題集もあります。
過去に難関大学で出題された良質な英文が揃っています。Basic・Standard・Advanced・Finalがあります。
その他の長文問題集
まずは、長文の問題数が比較的多めの、杉山俊一・塚越友幸・山下博子「やっておきたい英語長文」シリーズ(河合出版)があります。300・500・700・1000の4つです。
他に、Z会から出版されている、「合格へ導く英語長文Rise 読解演習」シリーズ(Z会)もあります。これは、基礎編・基礎~標準編・標準~難関編・最難関編の4つです。
読み方に力点を置いていて、初心者でも取り組みやすいものとして、関正生「関正生のThe Rules英語長文問題集」シリーズ(旺文社)もあります。入試基礎・入試標準・入試難関・入試最難関に分かれています。
肘井学(2020-2021)「大学入試 レベル別 英語長文問題 ソリューション」シリーズ(かんき出版)というのもあります。難易度は、スタンダードレベル・ハイレベル・トップレベルに分かれています。それぞれ、最新テーマ編という別バージョンもあるため、計6冊あることになります。
レベルが細かく設定されている、安河内哲也・大岩秀樹(2023)「英語長文レベル別問題集」シリーズ(ナガセ)というのもあります。レベルは、超基礎編・初級編・標準編・中級編・上級編・最上級編の6段階です。
少し知名度は落ちますが、宮下卓也(2022-2023)「大学入試 英語長文プラス トレーニング問題集」シリーズ(旺文社)というのもあります。採点できるように細かく基準が記載されています。速読・記述式・頻出テーマ10ノ3冊があります。
長文問題集の紹介はここで一度終えます。
「伊藤サムの反訳トレーニング」シリーズ
受験参考書ではありませんが、英作文寄りで多読に使えるものとして、「伊藤サムの反訳トレーニング」シリーズ(NHK出版)があります。
NHKの、高校生からはじめる「現代英語」という講座(今は、ニュースで学ぶ「現代英語」)をもとに作成されたテキストです。英語のニュース記事が載っていて、そのあとに、日本語から英語に訳すトレーニングをするページがあります。
多読のトレーニングと日→英のトレーニングを兼ねた試みとして使ってみてもよいかもしれません。
統一的なタイトルがあるわけではないので細かく示しておくと、次の5冊があります(初めのものがVol.1とVol.2に分かれてます)。
伊藤サム(2018-2019)「NHK CD BOOK 高校生からはじめる「現代英語」 即効! 伊藤サムの反訳トレーニング」シリーズ(NHK出版)
伊藤サム(2020)『NHK CD BOOK 高校生からはじめる「現代英語」 ニュース英語で上級を目指せ! 書ける話せる反訳トレーニング』(NHK出版)
伊藤サム(2022)『音声DL BOOK NHK高校生からはじめる「現代英語」 あなたの発話力を底上げする 名スピーチで反訳トレーニング』(NHK出版)
伊藤サム(2022)『音声DL BOOK 伊藤サムの 反訳トレーニングでマスター! 現代ニュース英語』(NHK出版)
「新 キムタツの東大英語リスニング」シリーズ
ここまでは主に多読用の参考書を紹介してきて、多聴については、付属の音源をこまめに聞くようにということしか述べていませんでした。とはいえ実際のところ、注意しておかないとリスニングは疎かになってしまいがちです。
そう考えると、多読は多読で進めるとして、多聴については「1日この分」と自分で決めて進めていく方が良いかもしれません。リスニングは継続が命ですから。
リスニングの参考書はそれほど多くありませんが、代表的で、多読多聴として多くの英文に触れることができるものを挙げるなら、まず、木村達哉(2021)「新 キムタツの東大英語リスニング」シリーズ(アルク)があります。
Basicは、1問1問に丁寧な解説がついています。リスニングの基礎力を身に付けるのにちょうど良いですね。
シリーズで3冊ありますが、残りの2冊は問題数が多いのでどんどん演習を積めます。Superは東大入試本番よりも少し難しめになっています。
『改訂版 鉄緑会 東大英語リスニング』
他に代表的なリスニング用の教材として、鉄緑会英語科(2021)『改訂版 鉄緑会 東大英語リスニング』(KADOKAWA)もあります。
収録問題数自体が多い上に、興味深い英文も多くあるので、多読多聴の一環として楽しめるかなと思います。
「ラダーシリーズ」
ここからは、大学受験からはもう少し離れて、さらに多読多聴に特化したものを紹介していきます。
まず、これは多聴としては使えないのですが、多読用の代表的な教材である、「ラダーシリーズ」(IBCパブリッシング)があります。
難易度ごとにLEVELが1~5ではっきり分かれていて、自分の英語力にあった教材を選べます。日本語訳はついていません。物語などを、英語でとにかく読んで、英語のまま理解していく練習を積んでいけます。
「Very Short Introductions」シリーズ
「Very Short Introductions」シリーズ(Oxford University Press)というものがあります。「Logic」「Psychology」「Philosophy of Science」など、1冊1冊にテーマがあり、その分野についての解説が中心となっているものです。
入試でよく出題されるシリーズでもあります。とはいえ、日本語訳がついていないだけでなく、英語学習者向けというわけでもない、洋書なので、難易度は高めです。
実力があれば読んでみてもよいかもしれません。あるいは受験が終わったあとに触れてみるのもよいでしょう。
「Kurzgesagt – In a Nutshell」
多読多聴を行う際に伴う難点の一つに、「どんどん進んでしまうだけに、参考書を相当買わなくてはいけなくなる」というのがあります。有意義ではあっても、お金もかかるし、少し難しいですよね。
あとは、前述のように、多読用の参考書を使っていると、音源が付属しているといってもやっぱり聞かないことが多くリスニングの演習量が不足するという問題もあります。
それらを解消するものとして、Youtubeを使うという方法があります。
適当に選んで見ていると(平均して本より)質が低くなってしまうとか、入試に出るようなテーマのものではないとか、動画である分文字と向き合う入試本番より楽になってしまう、といった問題があるのも間違いありません。
それでも、継続しやすいことや、リスニングの演習が積めること、そして私とっては何より、「最高のコンテンツを見つけられたこと」から、結果として私はYoutubeを使い続けるという勉強をすることになりました。
その、「最高のコンテンツ」というのが、「Kurzgesagt – In a Nutshell」というものです。私はこのチャンネルが本当に好きで、魅力をいくらでも語れてしまうのですが、それはおいといて(また別で記事を書きます)、簡単に紹介をしておきます。
各動画に「String Theory」とか「Deep Sea」とか「Loneliness」といったテーマが1つあり、それについて10分ほど、解説をしているものです。
アニメーションが非常に美しい上に、解説がものすごく良質で、(初期のころは少し異なりますが)参考文献も各所で明記していて、非の打ち所がないほど素晴らしいです。
学習教材という意味では、英語字幕・日本語字幕がほぼすべての動画についている点も魅力です。「字幕なしだと難しいから英語字幕を利用しながら見る」「見終わった後に日本語字幕で内容を確認する」といったこともできますから。
受験対策という意味も少し含めて、1本だけ、"Can YOU Fix Climate Change?"という動画を紹介します。最高の動画たちの中でも特におすすめしたい一本です。「Kurzgesagt」の魅力が端的に現れています。
その他のYoutubeチャンネル
「Kurzgesagt – In a Nutshell」以外にも、同じような使い方で勉強ができるYoutubeチャンネルは他にもあります。
まず、有名どころだと「TED-Ed」があります。これについては、既に使っている人も多くいるかも知れません。1本は5分ほどで、1つのトピックについてアニメーションつきで解説しています。
他に、「CrashCourse」というチャンネルもあります。CrashCourseの動画は、たとえば「Geography」という分野に対して、1本10分×数十本の講義があるというような形式です。
体系的に学ぶのにはとても良いのですが、難易度は高めです。私自身は、「Kurzgesagt」の動画をすべて見終わった後に、「CrashCourse」の動画に移って勉強をしていました。
過去問演習
多読多聴に役立つものとして、多くのものを紹介してきましたが、志望大学の過去問や問題集を使うという手もあります。
共通テストの場合なら、英語リーディングはそもそも多読に特化した試験ですから、共通テストの過去問や市販の問題集をどんどん解いていくことは、多読の練習をすることにもなります(しかも面白い英文も結構ありますから、楽しいですよね)。
最難関大学志望者なら、「〇〇大の英語25カ年」という科目別の過去問や、冠模試(実戦模試やオープン模試)の問題集が売っていることもあると思います。それを使うこともできるでしょう。特に問題集の少ないリスニング演習としてはそれが有効です。
ただし、大雑把に言って、大学の過去問題集に載っている英語長文の解説は、英語長文問題集の解説よりは薄いことが多いので注意が必要です。しっかりとした解説を使いながら勉強を進めたい場合は、問題集に取り組む期間を長くするのもアリです。
英語"を"学ぶ
「英語"を"学ぶ」とはどういうことか
多読多聴を通して英語を学ぶのは、すごく楽しいし受験にも役立つけれど、英文の内容に目を向けているわけで、英語そのものはスルーしているような側面もあります。
だから、英語そのものも学んでみたい。英語がどういう構造を持っていて、どういう文化的影響を受けていて、日本語などとはどのような違いがあるのか、そういったことは私の興味を惹きます。
そのようにして学ぶことは、それが楽しいだけでなく、英語に対するイメージを豊かにして、結果として英語力を高めることにも繋がります。
多読多聴を主軸にしつつも、たまに英語そのものに目を向けて、英語"を"学んでみると楽しいと思います。
ここからは、また参考書の紹介に移っていきます。
受験を視野に入れていると、どうしてもこの「英語"を"学ぶ」に力を注ぐのは難しくて、私自身あまり多くの本を読むことができませんでした。そのため、前節ほど多くを紹介できていませんが、ご了承ください。
『鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁』
鉄緑会英語科(2022)『改訂版 鉄緑会東大英単語熟語 鉄壁』(KADOKAWA)は言わずと知れた有名な単語帳です。
分厚いし難易度は高いし、でる順に掲載されているわけではないですから、やり終えるのには骨が折れます。特に1周目は、『鉄壁』の魅力を感じにくいかもしれません(よく言われることです)。
とはいえ、一度触れてやり終えてみると、英単語のイメージがよく定着したなということを実感できるはずです。
各英単語がどういうイメージを持つものなのか、どういった成り立ちなのか、どういった単語と近い意味を持つのか、逆に似た単語とどのようにニュアンスが異なるのか、あるいはどういう単語と対をなしているのか。そういったことに触れられます。
ぜひやってみてほしい一冊です。
「文学×英文法」シリーズ
受験ではなく一般向けの本で、倉林秀男・河田英介・今村楯夫・原田範行・山本史郎・西村義樹・森田修・柴田元幸・越前敏弥(2019-2022)「文学×英文法」シリーズ(アスク)というのがあります。
多読のつもりで手に取って読んだのですが、「英語"を"学ぶ」という側面の方が強いように思えるので、ここに分類しました。初めて読んだときには、英語の、そして文学の深みにとても感動しました。
英文法について、そのイメージと共に丁寧に解説してくれているので、理解が深まることは間違いありません。でも、それだけではなくて、単純な規則ではない「英文法」が、深みのある文学的表現を生み出していることを知ることもできます。
『言語学で解明する 英語の疑問』
手に取りやすい英語学系の本として、畠山雄二・本田謙介・田中江扶(2023)『言語学で解明する 英語の疑問』(大修館書店)があります。
言語学の本格的な本というわけではありませんが、高校まででルールとして習った英文法が、「なぜそうなのか」を考えてみる一歩になります。
たとえば、「次の文はなぜダメなのでしょうか? *I like book.」といった疑問が紹介されています(個人的に印象に残っていた疑問でした)。
「謎解きの英文法」シリーズ
もっと体系的に勉強したいという方には、久野暲・高見健一(2004-2022)「謎解きの英文法」シリーズ(くろしお出版)がおすすめです。「冠詞と名詞」「文の意味」「否定」「使役」「動詞」など、11巻に分かれています。
専門的すぎず、読みやすい解説で、英語の勉強をしていて抱くような疑問を起点にしているので、読んでいてとても面白いです。
「言語・文化選書」
もう少し専門的に英文法について勉強してみるなら、「言語・文化選書」(開拓社)を読んでみてもよいかもしれません。
シリーズ名の通り、様々な言語、文化について扱ってはいるものの、英語と日本語に関する書籍が中心となっています。
「英語"を"学ぶ」のにぜひ読んでみたいものは多くありますが、ここでは1冊、野村益寛(2020)『英文法の考え方 英語学習者のための認知英文法講義』(開拓社)だけ紹介しておきます。
英語の受験知識補強
基礎知識を養成した上で、多読多聴を通して勉強を進めていって、最後に過去問演習を通して傾向に慣れれば、志望校がどこであれ困ることはほとんどないはずです。
とはいえ、受験に向けて補強として勉強したい分野に、英文解釈と、英作文があります。
「大学受験のための 英文熟考」シリーズ
志望大学で英文解釈の問題が出題される場合、長文ではあまり見ないような、複雑な文であることもあります。その対策として、竹岡広信(2023)「大学受験のための 英文熟考」シリーズ(旺文社)を解いてみてもよいかもしれません。
最近改訂されたもので、上・下があります。この2冊を使えば、かなり英文解釈に慣れることもできるはずです。
「大学入試問題集 関正生の英文解釈ポラリス」シリーズ
英文解釈対策の参考書としてもう一冊薦めるなら、関正生(2023)「大学入試問題集 関正生の英文解釈ポラリス」シリーズ(KADOKAWA)があります。
「大学受験のための 英文熟考」よりも、こちらのデザインの方が好きという人もいるかもしれません。難易度としては、「応用レベル」がよいでしょう。
『システム英単語』
ここから、英作文対策についての説明に入ります。
「英語の基礎知識養成」のところで、『大学入試 英作文 ハイパートレーニング 和文英訳編 新装版』を紹介しましたが、それをもしやっていなければぜひやってみましょう。英文を組み立てる基礎的な力が身につきます。
その上で、まず、日→英のかたちで、使いこなせる英語表現を増やしていきたいところです。『必携英単語LEAP』は、短い用例を多く載せてくれていますから、もし使っていればそれを覚えていきましょう。
霜康司・刀祢雅彦(2019)『システム英単語〈5訂版〉』(駿台文庫)を使ってもよいでしょう。短いフレーズを、日→英とすべて訳せるように、使いこなせるようにしましょう。
『ドラゴン・イングリッシュ基本英文100』
例文を暗記していくというかたちで、使いこなせる英語表現を増やしていくのもとても重要です。
有名な例文集として、竹岡広信(2021)『改訂新版 ドラゴン・イングリッシュ基本英文100』(講談社)があります。各英文に対する解説も丁寧なので、英文を暗記するとともに、使いこなせるようによく理解していきましょう。
『基礎英作文問題精講』
さらに演習形式で英作文の演習を重ねていきましょう。和文英訳の問題を解いたあとには、その英文を次は訳せるようにしっかりと覚えるのが望ましいです。
和文英訳と自由英作文の問題が揃っている参考書として、竹岡広信(2022)『基礎英作文問題精講 3訂版』(旺文社)があります。解説も非常に丁寧なのでぜひやってみましょう。
あるいは、竹岡広信『四訂版 入試必携 英作文 Write to the Point』(数検出版)も使ってみてもよいですが、学校採用専用書籍なので持っていなければ『基礎英作文問題精講 3訂版』をやりましょう。
英作文については、大学ごとの問題傾向の差が大きいので、演習をある程度積んだら、実際に過去問をどんどん解いていくのが大切です。その中で、「書けなかった表現」「知っておきたかった表現」を覚えていきましょう。
おわりに
ずいぶんと長く書いてしまいました。
この記事は、私の「合格体験記」であり「勉強法」でもあります。自分のしたことについて話そうとすると、多くを語ろうとしすぎてしまうのかもしれません。
私は、「楽しむ」ことを意識して勉強をしていましたから、結果として、少し変わった受験勉強の道を行くことになりました。同じ道を進むことを薦められるわけではないですが、それでも、この記事の中に他の人にとって参考になる部分もあると信じています。
少しでも役に立てていたら光栄です。
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