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短編 人魚姫の恋物語

つい最近、なぜか先生と生徒との恋の夢を見ました。
些細な夢でしたが、そのときの自分の夢を創作してノリで小説にしてみました。

鬼滅の刃とは全く関係ございませんが、
せっかく書いたのでこちらで披露します。 

短編小説を書くのは今回初めてなので、お手柔らかにお読み下さい。

※エロはないですが、キスシーンありです。

※こちらでの反応が良かったら、
「魔法のiらんど」に本気で投稿しようかと思ってます (笑)

登場人物

海生うい→島の高校2年生。不登校。
母親の不倫愛の末、生まれた娘。
幼い頃からののしられて、「不貞の子」と馬鹿にされ、肩身の狭い思いをして生きてきた。島の外から来た父親に似て色白の女の子。

りく→島の高校の教員。本島の教員をしている時に、不良のせいで身に覚えのない罪をきせられて、島へ左遷された。海生ういとの衝突事故で記憶喪失になる。27歳。

海生ういの母親→島から来た男性に恋をした。その男性が既婚者だった。
母はそのまま島でスナックを経営しながら一人娘の海生ういを育てる。

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やっとうるさい生徒らに解放される夏休み目前の終業式の夜。

煙草を買いに、小銭を握りしめながら、角を曲がろうとした。


キィキキーー!、


俺は自転車と衝突した。


その相手の自転車に乗っていたのが「海を生きる」と書いて「うい」だ。

島人には見えないぐらい色白で透き通った肌。
華奢で顔立ちが整った美人だ。

しかし、性格は生意気な女の子。

そこを指摘すると「うるさい!」と、よく怒られた。

海生は、怪我はなかったそうだが、俺は頭を打って少し気絶をしていたらしい。

足から血が出てたので、とりあえず海生の家の路地裏のスナックで手当てをしてもらった。
記憶が戻るまでしばらく空き部屋で居候をすることになった。


俺の名前はりくだ。

名前は覚えていたが、
「自分はなぜここにいる?」「一体自分は何者?」と、一時的な記憶喪失となった。

今思うと、 
俺と海生ういとの出逢いは、まるで漫画のよくあるシーンだったと思う。

なんなら、男女入れ替わりパターンの方が良かったな。

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俺は海生ういにお願いして島を案内してもらった。

それはすごく楽しい時間だった。

島の図書館にもよく行った。

海生は意外にも読書家だ。

よく心理書を読んでいた。

宿題や勉強しなくていいのか?と聞いた時には、

「いいの、いいの、だって必要ないもん!海生は頭がいいからさ」って。

恋人は?と聞いた時には、

「海生さまに見合う男なんて、そうそういないも〜ん。
ほら海生って、海に生きるって書くから人魚姫みたいでしょ?」
と、冗談まじりだが半ば本気の答えだった。


8月の満月の夜。

一面に広がる星空に、満月が支配しているようで神秘的だった。

海を眺めていた海生の髪の毛がなびいて、月の光が白い肌に反射してキラキラ輝いていた。
満月に願いごとをすると叶うんだと言ってきたから、手を合わせてお祈りをした。

お祈りしながら横目で見ると、彼女の美しさが頭から離れなかった。

「この子は本当に人魚姫なのかもしれない」と真剣に思った。


海生は自分の方が10歳ぐらい年下なのに、とてつもなく偉そうだ。

「お〜い!陸!外行くぞー!早く用意しろー!」と、階段の下から叫んでくる。

「女の子なのに口の利き方に気をつけなよ。もっとおしとやかにすること!」と注意すると、

「はいはい、先生みたいな説教ですね!」
と、拗ねていた。

今思うと、それは違和感のない自然な返しだった。


8月中頃が過ぎた。

いつものように海生と歩いているところ、

突然「陸せんせーい!!」と声を掛けられた。

その生徒からの言葉をきっかけに、自分が教員だということが分かった。

そこからは猛スピードで記憶が日に日に蘇って、
思い出すことができた。

あの夜の満月の下で祈った願い事が叶ったんだと思った。

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それから、
徐々に海生ういが階段の下から誘ってくる頻度が減っていた。

毎日のように一緒にいたから、その心境の変化が気になっていた。

もうすぐ夏休みも終わるということで、勤務していた高校を訪ねた。

校長先生に事情を説明して、これからのことを話し合った。

そこで、4月から一度も登校していないクラスの子の話になり、

その子の名前は、海生ういだった!

目と耳を疑った。

海生は、自分のクラスの生徒だったのだ。

その後、どうやって家まで帰ったのか分からない。


もうこの時にはすでに海生のことを本気で好きになっていたのだ。


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二学期の始業式前日の夜。

突然、家に入ってきた海生ういがキスをしてきた。


眠ろうと油断していた目がパッと見開いた。

海生はハニカミながら、

「ねぇ、タバコ臭いんだけど?」と言った。

「うっさいな」と返した。

実はかなり動揺していた。

脳裏に「自分は海生の担任だ」という言葉が邪魔して離れない。

それとは真逆の言葉で、

「俺…このまま寝ているフリしていい…?」と口走っていた。

海生の長くて細い髪が頬にあたる。

そして、またキスをしてきた。
さすがに2回は感情が抑えられない。

今にも押し倒しそうになる。


好きだ海生…もっとしたい…もっと…もっと…と、

心の声が出そうになるの飲み込んだ。

けれど体は正直で、寝ているフリだった体を起こした。

それからはまるで恋人のように、

無言で唇を重ねた。

海生の吐息と柔らかい唇と舌のぬくもりが、

理性という壁を吹っ飛ばしたと思う。

もう無理…我慢できないと、

無意識に右手がスーッと海生のシャツをまくっていた。

その瞬間、
海生がサッと顔を離して、

「ありがとう… もうじゅうぶんだから、急にこんなことしてごめん…」

そう言いながら突き放して去っていった。


一瞬にして我に返った。

追いかけて海生を捕まえたい。

けれど、何と声を掛けたらいいのか分からない…

まだ頭の中はふわふわして、まるで夢の中にいるようで、

どうしたらいいか分からない。 


もう一層の事、夢の中の出来事でも、それはそれでいいと思えた…


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気がついたら、朝を迎えていた。

二学期の始業式当日。

久しぶりに学校へ行った。

教室に海生ういの姿はなかった。

海生とのキスが、別れの挨拶だったのかと嫌な予感が頭をよぎった。

「(あの、馬鹿やろう!!)」

心の中で叫んでいた時には、教室を抜け出していた。


クラスをほっぽり出して、自分が先生だということを忘れて、校門を出て、とにかく走った。

こういう追いかけるドラマのシーンって、自転車で追いかけたらいいのにって思ってた。

けど自分がその立場になったら、無我夢中になって走っていた。

海生を探しに家に行ったが、いなかった…

海生は島を出る船に乗っていた!!

やっと見つけた。


そのタイミングで出港の汽笛が鳴り響く。

もう、必死だった。

「ういぃー!! 
絶対に手紙を書くんだぞー!それとなー!!
俺は海生のことが…」

最後の、その声は惜しくも海生には届かなかったように思う。

ただ、笑顔で大きく手を振る彼女は、なんだか清々しくかっこよく見えた。

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そして、

手紙が届いたのは海生ういが島を出た半年後だった。

その手紙には、

父親の方に世話になっていること、
母親を心配していること、
賢い大学に行って心理カウンセラーを目指すこと、
それに向けて、アルバイトもしているという内容だった。

手紙の最後は、

「p.s.島に帰ったらあの夜の続き、してもいいよ」

という一文で締め括られていた。

おもわず「あいつらしいな!」と笑ってしまった。

なんだか拍子抜けして、とても気分が良かった。

ずっと我慢していたタバコについつい手が出そうになった。


それから

半年が経ち、暑い夏休みが来た。

俺は海生の帰りをすごく心待ちにしていた。




島に帰ってきたのは、




燃え散った骨になった海生ういだった。








人伝えに聞いた話では、

父親の親族に海生を取られたと勘違いした母親が、包丁を持って乗り込んだところ、
たまたまそこにいた海生が…刺されたと…

そのまま海生は病院で息を引き取ったって…



信じられなかった。

あの海生が…



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海生ういの父親がわざわざ訪ねてきてくれた。

「是非、君にも見て欲しい」と、

海生の手帳を渡してきた。


手帳に挟まった写真のページを開くと、8月のページだった。

写真は綺麗な海を背景にした俺の写真だった。

こんな写真いつ撮られたんだろう…


8月12日
「満月!スタージョンムーン」

『陸と一緒に満月に向かって願いごとをした。
陸の願いは「記憶を思い出しますように」だったけど、
私の願いは「陸が記憶を思い出しませんように」と祈った。
もちろん内緒。
私は自分勝手な姫だ。』


8月23日
「二学期の始業式まであと10日」

『どうしよう、陸の記憶が戻った。
お母さんも私みたいにきっとこうやってお父さんのことで悩んだんだよね。
今の私ならお母さんの気持ち分かるよ』


9月1日始業式 

「海生が島を出発する日」

『本日をもってわたくし、人魚姫は海を渡ります!!
堂々と陸にいけるまで…さらば!私の王子様〜!』

と書いてあった。


その次の日から、

手帳の日付には、毎日毎日カウントダウンが書かれていた。



「陸まであと90日!」

「陸まであと36日!」

「陸まであと12日!」


毎日毎日…

毎日毎日… 



「陸まであと1日!!」





これが最後だった…


その日が海生の命日となってしまった。



海生という人魚姫は王子様の陸にはいけず、遠く暗い海の中に沈んだのだ。



何もできずにただ帰りを待つだけだった俺は自分が情けなくて、崩れ落ちた。



すると、海生の父が静かに口を開いた。

「陸さんが海生の担任の先生だったと聞いたときは、正直なところ動揺しました。

母親の心の病気を治すために心理カウンセラーになる!そのために大学に行くんだって…
その母親の持っていた包丁が娘に…

全て私のいたらぬ結果が招いたことだった…
すまない…」

その言葉と同時に、

「手帳は君が持っていて欲しい」と

もちろん、そんな大事なものはいただけないと断った。


「この手帳は、ほとんど君のことしか書かれてないんだよ。

前に一度娘から聞いたことがあって、

『次は記憶喪失じゃなく、私と陸が入れ替わってるかも! 
そしたら陸が私の手帳を見て、きっと私を探してくれる』って…


陸さん…海生はきっと君のことを愛していたんだね。

ありがとうございました…」


そう言って、父親は帰っていった。


俺は、手帳の最後のページにこう書いた。


『それから人魚姫は王子様と結婚し、永遠に幸せに暮らしましたとさ。   

おしまい』


まるで俺と海生との物語がお伽話になるように。








《おわり》

次は海生目線で書きました。

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