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【You'll Never Walk Alone】J2第34節 松本山雅×ファジアーノ岡山 マッチレビュー

スタメン

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松本は敗れた前節から3枚変更。負傷離脱していた星キョーワァン、前貴之、鈴木国友がスタメンに復帰した。左WBには当初下川陽太が先発予定だったようだが、今週のトレーニング中に痛めた箇所があり、大事を取ってベンチからのスタートになったと試合後に名波監督がコメントしていた。また、小手川宏基は7試合ぶりのメンバー入り。逆にベンチ入りが増えていた米原秀亮と村越凱光がベンチ外となっている。

対する岡山は試合前の状況で4試合負けなし。しかし、ホームでは大宮戦以来3試合勝ち星を掴めていないため、是が非でも勝利をサポータに届けたいところ。オーストラリア代表に招集されていたデュークが復帰した以外は前節と同じメンバーで臨む。


アンカー脇狙いの岡山

立ち上がりから両チームともに準備してきた形を披露する。まずは岡山から見ていこう。

岡山の狙いはアンカーに入る佐藤和弘の両脇のスペースを使うこと。基本布陣はオーソドックスな4-4-2だが、マイボールになるとサイドハーフの石毛と徳元はインサイドに位置を取る。その分大外のレーンはサイドバック一人で埋めることになるが、松本もウィングバックしかいないので1対1となるだけ。逆に中盤は3対4の数的不利な状況を常に強いられることになった。

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これに対して佐藤は明確にボールサイドのサイドハーフに寄せて潰し切ることで対応しようと試みるが、それも岡山は折り込み済み。リスクを負わずに最終ラインから逆サイドへ展開することで佐藤がポジションを空けた中盤を使うことに成功する。

オフサイドに救われた前半11分のシーンもこの派生形で、佐藤がマークしているのはデュークだが、ボールサイドに中盤が偏っている現象は同じである。河合・平川・佐藤の3人が左サイドに寄ってしまえば、当然中盤はがら空きで、それを見逃さなかった石毛に展開されて徳元にフリーでシュートを許している。右WBの前貴之が絞って対応すべきという見方もできるが、それは岡山の左サイドバックのマークを捨てることを意味する。右CBの大野が縦ズレをするには距離が遠すぎるし、この場面では前は宮崎をマークすることを選んだので、瞬間的に徳元が空いてしまったというわけである。

この場面以外にも徳元と石毛を終始捕まえきれておらず、アンカー脇のスペースを好き放題に使われてしまったのは敗因のひとつ。試合中にツイートもしたのだが、佐藤が単純なパスミスを連発していた背景には、攻守にわたって相当負荷がかかっていたのもあるのかもしれない。守備時はサイドハーフに行く・行かないの判断をずーっと強いられていたし、攻撃時は最終ラインに落ちてボールを引き出すタスクも負っていたので、認知や判断の部分で限界が来ていたように思う。いわゆる脳の疲労というやつ。


前貴之を活かしきれず

対して松本も狙いを持って試合に入っていた。ポイントとなったのは右WBに入った前貴之。

星キョーワァンの左側に佐藤が落ちることで、大野を右の大外へ押し出して疑似サイドバックのような立ち位置を取らせる。それと連動して前貴之がやや内側にポジションを移すことで、岡山のマークを曖昧にして混乱に陥れたい狙い。よく見せていたのはハーフスペースから右の大外へ裏抜けしてそこに大野からロングパスを供給する動き。CBの井上を釣り出せれば中が薄くなるのでラッキーだし、宮崎が付いてくるのであれば平川がサポートに入って連携で崩しに行く。

前半36分に前貴之→鈴木国友とつないで右サイドの深くを取り、グラウンダーの折返しに河合が合わせた決定機はこの狙いがハマった形。GK梅田の好セーブもあって決めきれなかったが、この試合で最も岡山ゴールに迫った場面だったといい。とはいえ、本来はサイドバックの背後を取るのは前貴之の役割で、鈴木国友はエリア内でクロスを受ける側として配置したかったはず。

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宮崎・喜山・徳元の左サイドに理不尽な選択肢を突きつけたかったのだと思うが、なかなか上手く機能しなかった。というのも星・佐藤・常田が3バックを形成したところからボールを前進させることができず、前貴之までパスが届かなかったからである。大野や平川が前を向いてボールを持って初めてハーフスペースに漂う前貴之が生きてくるのだが、そのシチェーションが作ればければ岡山としてはそれほど怖くない。むしろ前貴之がボランチの位置まで下りてきてしまっていたので、全体として後ろに重たくなってしまった。

デュークと上門にプレッシャーを掛けられた松本の最終ラインは、前線に蹴っ飛ばしてしまうことも多かったのも残念だった部分。前半の最初は可能性を感じさせる楔のパスが何本か入っていたのだが、時間を追うごとに選手がやや消極的になっていってしまうのは気になった。

その中で『ボールをもらいたがらない症候群』というか、受けたがらないようにして相手に隠れてしまう。あとは前にサポートできず、常に逃げ場と広いスペースを探してしまう。

松本山雅公式サイト-名波監督試合後コメントより

せっかくマイボールにしたにも関わらずみすみすロングボールを蹴ることで”ボールを捨てる”格好になってしまっていたのは否めない。その原因が試合後コメントで名波監督が言及しているように、選手の意識が後ろ向きになってしまっていることなのであれば、重く受け止めざるを得ない。前所属チームではできていたことが今できていないというのは、それだけチームの抱える問題の根の深さを感じさせる。

向かい風だったことを考えると、本当はスコアレスで折り返したかったはずだが、1点ビハインドというのは概ね想定通りだろう。逆に風上に立つ後半に攻勢をかければ、と期待して前半を終える。


チームの象徴を失う

後半頭から外山凌に変えて下川陽太を投入して左サイドを活性化。もともとスタメンで使おうとしていたということなので、後半開始時点の布陣が当初の先発だったのかもしれない。

後半立ち上がりの10分ほどは松本も良いプレーを見せる。平川、常田あたりから積極的に縦パスが入るようになり、受けた河合が仕掛けるという好循環が生まれていた。ところが、10分をすぎると再び消極的な姿に戻ってしまう。名波監督は山口一真を投入してシステムを3-4-2-1に変更。前線の人数を増やして、積極的な姿勢を取り戻そうと刺激を与えるが、どうしても上手く行かない。

そんな状態で痛恨の2点目を献上してしまう。場面は松本のビルドアップから。平川がやや落ちてボールを受けると、佐藤和は岡山2トップとボランチの間に生まれたスペースにポジションを取る。そこへパスが通るのだが、トラップが少し流れたところでロストしてしまい、カウンターが発動。石毛のサイドチェンジを受けたデュークのシュートは村山がストップするも、こぼれ球を拾った徳元の冷静なラストパスを石毛に蹴り込まれて失点。

一連のプレーの起点となった佐藤のボールロストについて少し詳しく。まず佐藤が受けようとしていた位置は良かったし、チームとして受け手がいるべきお手本のようなプレーだった。しかし気になったのは受けるときの動作。本来の彼はパスをトラップする前に、首を振って背後から相手が来ていないかを確認する。しかしこの場面では首を振らずにボールを受け、トラップ際を狙われている。前述の通り、前半から認知的な疲れがピークに達していると感じさせる場面はいくつかあったが、このロストの仕方を見て不安が確信に変わってしまった。佐藤和弘のコンディションは相当悪い。かなりギリギリのコンディションで戦ってくれているのだと。

それに気づいた名波監督は即座に佐藤をベンチに下げた。柴田監督体制では一度も途中交代がなく、名波監督に変わってからも常に80分近くプレーしていた選手。しかもチームのキャプテンを66分で見切ったということからも、彼の状態が思った以上に悪いのではないかと思わされる。身体もそうだが、ぜひオフを取って頭と心をリフレッシュしてほしいと切に願う。

加えてこの場面、佐藤が積極的にチャレンジをして、相手の嫌がるところでボールを受けてロストしたことを起点に失点した事実は尾を引くかもしれない。既に引用している名波監督の試合後コメントで、選手の意識が消極的になってしまっているのであれば、チームの精神的支柱である選手がミスをしてしまったことで、拍車がかからないか心配だ。


平川怜の伸びしろ

積極性を失った松本に対して、岡山は濱田を投入して5-3-2にシステムを変更。前節の栃木戦と同じように、5レーンをしっかり埋めて守備ブロックを組むことで、試合をクローズしにかかる。こうなると松本の攻め手はグッと減ってしまう。

後半41分には上門にスーパーミドルを決められて万事休す。この場面、ひとつだけ言及することがあれば平川怜の切り替えと一歩目の速さについて。大野がボールロストして上門へパスが渡るまで、平川は立ち尽くしたままボールの行方を眺めてしまっている。最終的にスライディングでシュートブロックにいって僅かに届かなかったのだから、あと一歩早く動き出していればと悔やまれる。上門のようなレンジからのミドルシュートはJ1だとバスバス飛んでくるし、平川がもう一段上の選手になるためには、あそこはブロックにいけねばならない。

とはいえ、彼は長い間オンザボールの止める・蹴るを追求してきたような選手。守備に関してこれほど要求されるのはプロになってからだろう。そして失点後の表情からは自分の責任だという気持ちが伝わってきた。身体が反応して一番危ないスペースをいち早く埋められるようになるには、まだ経験も失敗も足らないだろう。何度失敗してもいい。その失敗を糧にして何度でも這い上がってほしい。

終盤には阪野豊史も投入して、伊藤・阪野・榎本とターゲットを増やしたにもかかわらず、放り込みの回数が少なかったのは少し謎。名波監督は放り込んで1点でも取ってこい!というメッセージだったのだと思うが、ピッチ内では心が折れてしまっている選手もいたので、意志が統一できなかったのだろう。

このままゲームは終わり。ホームでの敗戦に続いて3失点を喫し、連敗となった。


総括

松本山雅公式サイトに掲載されている試合後コメントは既にお読みになっただろうか。このブログを読むような前のめりな方は目を通しているかもしれないが、一応リンクを置いておく。

どうだろうか。


僕の率直な感想は、チーム状態はかなりまずいというもの。今本当にギリギリの状態だと思う。選手の張り詰めた糸が、いつプッツンと切れてしまったもおかしくないくらい追い詰められている。

こんなときこそアルウィンでは、温かく迎えてあげたいと思う。選手の抱えているプレッシャー、不安、緊張、、、、ほんの少しでも、ほんの少しでもいい。スタジアムにいるサポーター、DAZNから声援を送るサポーターひとりひとりが分け合えたら。

You'll Never Walk Alone.

ひとりじゃない。俺達がついてる。

松本山雅の選ばれし者たちよ

勇敢に誇りを持って躍動してほしい。


One Sou1


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