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【約束事は守るためにある】J2第18節 松本山雅×V・ファーレン長崎 マッチレビュー

スタメン

松本は前節に続いて3-5-2を採用。連敗中ということもあってかGKを村山智彦に変更。また、前節退場処分となった常田克人が出場停止のため、3バックの真ん中に星キョーワァンを起用した。気がかりなのは佐藤和弘だろう。チームの心臓として開幕からフル稼働していた佐藤だが、北九州戦に続いて、いきなりのベンチ外。九州には上陸できない契約とかなのだろうか。
代わって前貴之がアンカーに入り、鈴木国友をインサイドハーフに配置するイレギュラーな人選。

対する長崎は、左サイドバックに加藤聖がサプライズ起用。僕としても全くデータがない19歳。左利きということしか知らない。
2トップの1角に入る都倉賢は松本戦で7試合5ゴール。この選手を抑えずして松本の勝利はない。


町田戦からの修正

松本は前節の町田戦から守備時の動きを修正してきた。前節は4バックを採用する町田相手にプレスを掛ける際に、サイドバックに対して誰が行くのか?が非常に曖昧で、試合の流れで浮いてしまう場面が多かった。長崎も4バックが基本布陣ということで重点的にトレーニングしてきたのかもしれない。

修正されていたのは、サイドでのマークをはっきりさせたことだ。試合後の公式コメントでも、チーム内で約束事を決めて臨んだと言及されている。

サイドバックに対してはウイングバック、サイドバックとサイドハーフのペアに対しては、うちのウイングバックとシャドーボランチが対応しようと言っていました

引用元:松本山雅公式サイト

この約束事のポイントは、3バックの選手が関わっていないということだ。インサイドハーフが出ていくところを、3バックの選手が対応する形も想定できるが、柴田監督はそれをしなかった。長崎の2トップは高さと強さがある選手で、3バックは極力サイドに釣り出されずに、2トップのケアに集中させたいという狙いだったのだろう。

サイドバックの監視役

しかし、残念ながらこの試合では約束事が守られていたとは言い難い。

左サイドは前節の町田戦から続けて、比較的うまくいっていた。長崎の右サイドに位置する毎熊とウェリントンハットのコンビに対して外山凌と河合秀人が対応する形。基本的にウェリントンハットを外山が監視して、毎熊に対しては河合が一列前に出てプレスを掛ける。ウェリントンハットが常に高い位置を取るので、外山が最終ラインに吸収されがちだったのは少し気になる点ではあったが、マークを受け渡す場面も少なくほぼマンツーマンだった。

問題は右サイド。長崎の左サイド、加藤聖と澤田に対して鈴木国友と表原玄太が対峙する。こうして文章で書いていると余計に思うが、守る側が本職ではない2名ってのがかなりきつい。長崎は明らかにこちらサイドを狙い撃ちしており、かなりの頻度で大野佑哉がフォローに回っていた。大野がサイドに釣り出される場面が多かったことは、この試合の約束事から考えるとNGで、長崎の思うつぼだった。


再現性高い長崎の崩し

長崎は松本右サイドで約束事が機能しないシチュエーションを意図的に作ろうとしていた。最終ラインで右サイドの毎熊までボールを動かし、松本の守備陣形を全体的に左側へ寄せる。それを確認すると、すばやく左サイドの加藤聖までサイドチェンジして、手薄になった松本右サイドを崩しに行くという流れだ。

松本の中盤3枚(前・河合・鈴木)は、スペースを埋めるというよりは人を基準にプレスを掛けることが多い。加えてこの日は相手のサイドバックやサイドハーフには、インサイドハーフがプレスを掛けるという約束事だった。そのため河合は中盤のスペースを捨てて前に出るしかなく、河合が出たあとのスペースを埋めるために前と鈴木は左寄りにポジションを移していく。

中盤3枚が左寄りになったタイミングで素早くサイドチェンジをされるとどうだろうか。本来鈴木が対応しなければいけない加藤聖や澤田はフリーになっており、スライドは間に合わないことが多い。表原だけでは数的不利なので、必然的にHVの大野がフォローに回る、という所までが長崎の崩しのセットである。

長崎の狙い

この形は90分通して何度も再現されており、松本は自分たちの約束事によって自らの首を締めることになってしまう。そして解決策を見いだせないままに殴られ続けた。


前フリがあった失点シーン

前述のように長崎の意図した崩しにより、スライドが間に合わなかった鈴木が慌てて右サイドに戻ってきて守備に参加する場面はちょくちょく見られた。

18:15~の長崎の攻撃は該当するシーンである。ボールを受けた澤田と対峙する表原。加藤聖が全力で澤田を追い越してオーバーラップを仕掛けると、澤田はその動きを囮にしてカットイン。鈴木がフォローに入っていたのでシュートまでは持ち込まれなかったが、際どいクロスを上げられている。

前半20分の失点シーンは、この18分の攻撃が前フリになってしまっていた。流れは違えど、再び澤田がボールを持ち、加藤聖がオーバーラップを仕掛ける。フォローに入った鈴木は明らかに澤田のカットインを警戒したポジション取りで、オーバーラップしている加藤聖に対応できる位置ではなかった。それを見た澤田は、今度はシンプルに加藤聖を使い、フリーになった加藤聖のクロスに都倉が打点の高いヘディングで合わせてネットを揺らした。

鈴木の頭の中には2分前にカットインからクロスを上げられた場面が焼き付いていたのだろう。加えて18分のシーンよりゴールに近く、カットインされればシュートに持ち込まれる可能性も高い。より失点するリスクが高い選択肢を警戒するというのは正しいが、少しあからさますぎたかもしれない。このあたりの守備については、本職ではない選手を配置しているというデメリットと言えるだろう。仮にこの日の約束事を実現させるのであれば、守備のタスクが重くなるインサイドハーフには本職の選手を配置したかった。負傷離脱者が多く厳しい台所事情なのを加味しても、少し残念に感じた。


総括

前節の町田戦から修正してきた点が見られたのはポジティブだった。また、後半に3枚替えをしてからは長崎を押し込み、決定機も作り出せていたのも良かった。選手個人でいうと、3バックの中央に入った星キョーワァンのパフォーマンスはかなり良かった。空中戦でも長崎の2トップに負ける場面が少なく、セットプレー守備でも効いていた。

全体的に悪くない出来だっと思うが、それだけに勝点を拾えなかった事実が重くのしかかる。リーグも折り返し地点が迫っており、「内容は良かった」で終わらせられるタイムリミットはすぐそこだ。降格という結果が待っている以上は、勝点を獲得できているかで評価しなければいけない試合も出てくる。

その上で次節の大宮戦は、内容ではなく結果で評価される試合になるだろう。降格圏をさまようチームにホームで敗れるようなことがあれば、一気に泥沼に引きずり込まれてしまう。なんとしても勝利したい一戦である。


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