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【露呈しない弱み】J2第10節 松本山雅×ザスパクサツ群馬 マッチレビュー

スタメン

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松本は敗れた前節から4枚を変更し、システムも3-4-2-1へ戻した。右ウィングバックには松本デビューとなる浜崎拓磨が入り、サイドバックが本職の下川陽太を左HVで起用。ここ3試合で10失点を喫している守備をいかに立て直すかが肝となる3連戦の最後の試合である。

対する群馬は前節から1人だけ変更。センターバックに渡辺を復帰させ、あとは前節と同じメンバーで臨む。スタメンの岩上祐三、ベンチに控える久保田和音、髙木彰人は古巣対戦となる。


岩上封じを狙う松本

群馬は攻撃時にボランチに入る岩上が最終ラインのサポートに入り、ビルドアップの起点となる。時には受けるだけではなく最終ラインの一角(主に右センターバックか右サイドバックの位置)に落ちて、組み立てに参加する場面も見られた。

松本としては、最終ライン+岩上に常にプレッシャーを掛けて自由を奪うことが最大の狙いであり守備の目的であった。そのため立ち上がりから阪野を中心に”前からとにかく行く”という意思統一がされており、ここ数試合で見られたような選手間での判断の差や迷いが消えているように見えた。象徴的だったのは、阪野が群馬のGK清水までプレスを掛けに行ったシーン。インテンシティ高く臨んだ京都戦もそうだったが、チームとして前から追うという姿勢が見える場面だった。

直接岩上を潰すようなシーンは数えるほどだったが、最終ラインへプレッシャーを与えたことにより、楔の縦パスを入れた先で回収することができていたのは良かった点。全くのフリーで縦パスをつけさせるよりも、若干でも精度が落ちることで受けてのトラップが乱れたり、パスミスに繋がったりなどしていた。直接的にプレスから奪うのではなく、しっかりと制限をかけて中盤で刈り取るというのは昨季から良い時の松本が見せるプレーであり、バロメーターになっていると言ってもいいだろう。


露わにならなかった弱点

ここ数試合の松本の弱点はなにか?と聞かれて皆様思い浮かべるものはなんだろうか。おそらく多くの方が”クロス対応”や”セットプレー”と答えるはずだ。事実として、失点の大半がこの2パターンから喫しており、明らかに相手に狙われている。クロスに関しては、ペナルティエリア内での対応がまずいという側面もあるが、切り口を変えると自由にクロスを上げさせすぎているという点も浮かび上がる。どちらかと言うと、個人的には後者のほうが根本要因だと考えている。クロスを上げる選手への寄せが甘く、質の高いボールを供給させてしまっているがゆえに、ペナルティエリア内での勝負が不利になっているという流れだ。

この日の松本も守備の緩さが大きく改善されたわけではなかった。岩上を中心に普通にクロスを上げさせる場面も散見され、失点しなかったのが不思議だったくらいだ。では、今までとの違いが何かといえば、群馬側の攻め方にある。

群馬の2トップは田中と大前で、いずれも空中戦を得意とするストロングヘッダーではない。大前はボールに多く触れて真価を発揮するタイプで、田中は元々鹿島ではサイドハーフで起用されていた選手で、裏への抜け出しが持ち味である。また、サイドハーフに入る加藤と進に関しても、右利きながら左に配置されている加藤はカットインからのシュート、進は裏抜けと縦への突破が最大の魅力で、クロッサーというイメージは薄い。

彼ら前線のタレントの強みを活かすような攻撃をしており、シンプルにクロスを上げるような攻撃はしてこなかったのだ。クロスを上げてもターゲットになる選手がいないのだから妥当な選択である。群馬の攻撃パターンは大きく分けて2つ。1つは大前が降りてきてボールを受け、サイドへ展開したり自ら持ち込んで決定機を演出する方法。もうひとつは、1つ目と絡むところもあるが田中や進が最終ラインの背後へランニングを見せ、岩上から正確なロングボールを送り込むというやり方だ。いずれも起点となっているのは岩上になるのだが、そこからのプロセスが違う。ただ、いずれも共通しているのは地上戦で勝負したがる傾向があるということである。降りてきた大前は中央突破を試みる場面もあり、田中や進もサイドに流れた後はサイドバックと連携しながら崩すのが第一選択肢なのだろう。

昨季在籍していた林のような空中戦に強い選手が中央にいると攻撃のバリエーションが変わってくるのだが、この日の群馬は自分達のストロングを出そうとした結果、松本の弱点をかえって覆い隠すことになってしまった。シンプルに人に強い松本守備陣は、ポストプレーを試みる大前をパワーで潰す場面も多く、実質群馬の攻め手はロングボールしかない状態が続いていた。


自由を与えられた下川

4-4-2で守る群馬と3-4-2-1で攻める松本。システムのかみ合わせの問題が発生していたのは、松本の左サイドだった。群馬の右サイドハーフに入った進はひとりで松本左HVの下川と左ウィングバックの外山を見なければいけない状況で、どっちつかずな守備に終止していた。とりあえずポジションを下げて背後のスペースを埋める動きが多かったので、下川はプレッシャーを受けずにハーフラインを悠々と超えることができていた。これによって外山が常に高い位置を取ることができ、前半は特に左サイドから押し込む時間帯が増えた要因である。

外山の突破力を活かすために群馬右サイドバックの吉永と1on1を挑ませたのは正解だったと思うが、この日の吉永は守備時の対応が素晴らしく、単純な質で殴ることができていなかった。欲を言えば下川には外山を積極的にサオーとし、数的優位を作るようなオフ・ザ・ボールの動きを求めたいところ。もちろん本職はサイドバックで、失点がかさんでいるチーム事情を鑑みても、まずは守備に穴を開けないことを第一に考えるのは理解できる。決して悪かったわけではないし(むしろ及第点)だが、彼が左HVで起用されている意味を考えても、攻撃面での貢献度を上げていってもらいたいものである。


劇的な決勝点

ここまで松本の攻守について書いてきたが、試合を通して質で劣っている場面は少なかったように思う。70分以降は群馬に疲労の色が濃くなってきて、かなり全体が間延びしていたことも幸いし、あとは松本がゴールをこじ開けられるかどうかの勝負になっていた。

今日は引き分けか...という空気が流れ始めた90分にセットプレーから大野が決めてこれが決勝点。外山のシュートのコースを変える技アリの一撃で、今季初ゴールを記録した。ゴール後に感情を爆発させ、チームメイトが抱きつく姿には心を動かされたし、熱いものがこみ上げてきた。


まとめ

紙一重の一戦を制して今季2勝目。磐田戦からの未勝利を3でストップした。なにより大きいのは8試合ぶりにクリーンシートを達成したことだろう。守備が崩壊していたチームにとっては、勝ったことも大きいが、無失点で負えられたことが何よりの特効薬になるはずだ。

この勝利で降格圏を抜け出したが、次節はアウェイ北九州戦。その後にホームで相模原との試合が控えている。依然として勝点10ポイントの松本にとっては、3ポイント差の中で上は10位下は最下位まで詰まっていることを考えても、絶対に落とせない試合であることに変わりはない。1週間のインターバルを経て、次節の勝利に期待したい。


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