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【雷鳥はどこを目指す】2021年松本山雅FC 中間報告

オリンピック中断期間を迎えているJ2リーグはここまで23試合を消化。既に折返しを迎えている。松本山雅は5勝7分11敗の16位と不本意な結果で現在を迎えることとなった。そんな前半戦を振り返っていきたい。


大幅な選手シャッフル

松本はシーズン前にオフの中心となったクラブのひとつだった。26人を放出し、24人を補強。補強したうち3人は期限付き移籍から完全移籍へ移行した選手だったため、新加入ではなかったが、それでもチームの半分以上を入れ替えるという稀に見るシャッフルを敢行。バリバリに主力だった選手が複数人抜け、序列やシステムから見直しをはかることになる。

キャンプでは中盤ボックス型の4-4-2に挑戦し、主体的にボールを握って相手を崩すサッカーを標榜する。しかし、キャンプも中盤に差し掛かったトレーニングマッチでサンフレッチェ広島に1-8、清水エスパルスに4-4と守備陣が崩壊。自陣からボールを繋ぐ工程で相手のハイプレスに襲われ、カウンターを受ける場面が多かったと言われていた。

そんな流れもあって、開幕1週間ほど前に3バックへ回帰する。昨季後半戦の巻き返しの原動力となった佐藤和弘をアンカーに置いた3-5-2と、前貴之とダブルボランチを組ませた3-4-2-1を併用。新戦力も多く、コロナ禍で情報も限られていたことから、なかなかチームの全容が見えないままシーズンインする。


基本布陣

シーズン序盤の基本布陣

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前述のように3-5-2を基本としていた際はこんな布陣を組んでいた。新加入の河合秀人、外山凌、鈴木国友、表原玄太あたりがスタメンに食い込んできている。他にも、安東輝、横山歩夢、平川怜などの若手も積極的に起用されていたのは印象的だった。

柴田体制後半の基本布陣

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また、シーズン途中で橋内優也、篠原弘次郎、安東輝、平川怜あたりが負傷離脱したことを受けてシステムを変更。3-4-2-1をベースに戦い、負傷から復帰した浜崎拓磨、星キョーワァン、野々村鷹人あたりが主力争いに加わってきた。


柴田体制での戦術

シーズン序盤の松本は、ハイプレスを掛けて敵陣でボールを奪ってショートカウンターを狙うのが基本的な思想だった。そのためにプレスの基準点となれて、かつコースの切り方が上手い阪野を最前線に配置。負担が偏りがちな中盤には、運動量と献身性に優れた河合・前・佐藤和で組ませる。

この戦術がうまくハマったのは第2節京都戦だろう。アウェイながら、とことん前からプレッシングに行く意識がチーム全体で統一されており、攻守が目まぐるしく入れ替わるスペクタクルな試合だった。

そんな大興奮の試合を披露したのはいいものの、開幕5試合で3分2敗とスタートダッシュで大きく躓くことになる。初勝利は第6節のホーム秋田戦。河合がとにかくキレキレで、彼に救われた一戦だった。その後も連勝とは行かず、第9節ではホームで愛媛に完敗。そろそろ首元が涼しくなってくるかという時期で迎えた群馬戦で勝利すると、そこから5試合負けなし。5試合で2失点と、課題だった守備も改善されたように見えた。そう、チームは変わったと見えたのだが、、、、


崩壊を始めるチーム

僕は気づくべきだった。いや、気づいていたけども敢えて目をそらしていたのかもしれない。松本が無敗をキープしていた間に戦ったチームは5試合中4試合が下位に沈んでいたチーム。新潟に関しては首位を独走していたものの、逆に挑戦者として立ち振るまい、チームを意思統一できたことが功を奏した。つまり、普段どおりの自分たちの実力で中位以上のクラブと当たった場合、力負けする予兆は無敗を続けていた時からあった。しかし、僕は浮かれて直視できていなかった。それをこれから紐解いていく。

まずは守備面。
3-5-2や3-4-2-1で臨むことが多かったが、4バックの相手とのかみ合わせがあまりよろしくなかった。具体的には、システム通りに人を配置していくとどうしても相手のサイドバックが浮いてしまうのだ。

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柴田監督のもとでは、インサイドハーフに入る前貴之や河合秀人が頑張ってサイドバックまでプレスを掛けたり、ウィングバックがマークを捨てて一列前に飛び出したり、2トップの1角がプレスバックしたり、、、。色々な方法で対応しようと試行錯誤していた。しかし、構造的な欠陥を選手のハードワークで補う形は機能するはずもなく、徐々に崩壊を始めていく。

まず決壊したのは前からのプレッシング。とにかく前から追っかけていくのだが、常に空いてしまっているサイドバックがプレス回避の起点となり、剥がされてしまう。特にサイドバックに技術力の高い選手を置いていた、第16節岡山戦、第17節町田戦は象徴的だった。

また、前からのプレスを掛けるために最終ラインを高く設定。そうすると必然的に最終ラインの背後に広がる広大なスペースを狙われることとなる。スプリント回数やカバー範囲の広さは、ベテランの橋内優也と篠原弘次郎には厳しいタスクだったよう。シーズン途中で大怪我を負ってしまい、長らく戦列を離れることとなった。このチャンスに奮起したのは大野佑哉、野々村鷹人、星キョーワァンといった若手選手。下川陽太も左HVという新境地を開拓して先発の機会を得たのは収穫だった。

松本が全体的に前がかりにプレスを掛けるも、サイドバックを起点に交わされてしまい、ひっくり返されてカウンターを受ける場面は非常に多かった。カウンターを止めたとしても自陣に押し込まれて耐える時間が続き、与えたセットプレーから失点するという悪循環。守備はお世辞にも機能していたとは言い難かった。


最適解が見つからない攻撃陣

攻撃面では長年抱えていた課題を解決できなかった。抱えていた課題というのは、相手ゴールを陥れるまでの設計図が描けないこと。チームとしてどのように相手の守備を崩すのか、が明確にならなかったことだ。

柴田体制の松本は守備からリズムを作るチームだった。前からの積極的なプレスで相手の選択肢を削り、敵陣でボールを奪ったら手数をかけずにショートカウンターを仕掛ける。相手がボール保持を志しているチームには割り切って守備から入ることができたため、比較的リズムをつかみやすく、攻撃面にも良い影響を与えていた。

課題が露呈したのは、相手が引いて守備ブロックを敷いてきた場合だ。ショートカウンターで決定機が作れていたのは、相手の守備の準備が整う前に攻め切る事ができていたから。しっかりと構えられた相手を崩すだけのアイデアとクオリティをピッチ上で示すことはできなかった。そのため、逆に松本に対して敢えてボールを持たせてくるチームも出てきていた。ボールを持たせれば得意の前プレは発動しないし、苦手なボール保持で自滅してくれる可能性もある。松本にとってはクリティカルな対策だった。

時折、前貴之や外山凌、河合秀人など選手個人の即興で決定機を作り出したり、好調だった鈴木国友がゴールを量産したりもあった。象徴的なのは松本の今季初ゴールとなった山形戦の得点。大外レーンに張った外山凌、ハーフスペースを突いた前貴之のランニング、折返しに合わせた河合秀人と3人の描いた画が同じだったのだろう。この”松本らしくないゴール”は、いずれも移籍してきた3人の連携で生まれているというのは興味深い。

とはいえ、攻撃の局面では選手に対する依存度が高かったのは否めない。個に依存したチーム作りは、キーマンの誰かが負傷やターンオーバーで欠けると、ガクッとチーム力が落ちてしまう脆さと隣り合わせだ。年々J2の戦術レベルは上がっており、J1からのレンタルなどプレーする選手の質も高くなっている。従来のように選手個人への依存や、セットプレーという尖った武器だけでは太刀打ちできなくなってきている。そんな現実を改めて突きつけられた前半戦だったと思う。


2年連続の監督交代

5試合負けなしを経験した後に、長いトンネルが待っていた。アウェイで栃木に完敗すると、ホームでは岡山と町田に計8失点を喫して大敗。特に町田戦は失点を重ねるごとに絶望感が増していき、画面越しでもスタジアムに漂う重苦しい空気は伝わってきた。僕自身非常に苦しかったのを覚えている。

そんな中でクラブは大なたを振るう。2年連続でのシーズン途中の監督交代に踏み切ったのだ。後任としてやってきたのは名波浩。まさか来るとは予想もしていなかった大物の就任は、間違いなく松本にポジティブな空気を流し込んだ。

監督交代に関しての所感はこちらの記事に書いているので詳細には書かないが、悪魔的とも言える人心掌握術は本物だということはわかった。興味があればこちらの記事もぜひ。

就任後の成績は1勝3敗とまだ苦しい状況にあるのは変わらない。ただ、シーズン途中での就任で準備期間が短かったことは間違いなく、オリンピック中断期間で戦術の落とし込みなど、名波色を出してくれることに期待したい。


前半戦総括

個人的には、後半戦を迎えるにあたってクラブがどんな目標設定をするのかは非常に重要だと思っている。

名波監督のインタビューを聞いていると、まずは残留という地に足をつけた目標設定をしているように感じるが果たしてフロントはどうか。シーズン開幕前に宣言した目標と現実に大幅な乖離がある状況で、目標を下方修正するのかあくまでも高い目標に向かい続けるのか。これは、名波監督の就任時にどんな目標達成を求めて招聘したかに直結する。ここの舵取りを誤ると、最後まで理想と現実の溝を埋めきれないまま、沈んでしまう可能性もある。

クラブとしては名波監督就任時に語っていたように、中長期的に指揮を託す方針のようだ。また、現場だけではなくフロントを含めたクラブ全体の強化に携わってもらうことを期待しているコメントもあった。そうなると今季だけではなく、5年~10年スパンでクラブをどう成長させるか、という話になってくる。これは長くなるのでまた別の機会にm(_ _)m



雷鳥は頂を目指す


そんな弾幕がアルウィンには掲げられている。


果たして今、雷鳥はどこを目指しているのか。


この疑問を頭の片隅に入れながらシーズン後半戦を見ていきたい。

シーズン終了後に笑って記事が書けていることを願って。





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