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『彼女はバーチャルアイドル』 9.カフェにて

真っ白なブラウスに薄い青竹色の地に蔓に真紅の花をつけた柄のロングスカート。
ブラウスの下に着ているキャミソールがくっきりと透けている。
黒茶のカーデガンを羽織り、足早にあの子が現れたとき、その場がパッと華やいだ。カフェの店先にあの子が立っている。別段派手な出で立ちではないが衆目を集める。
明るい表情には自信が満ち溢れている。そのことがこの子を何倍にも輝かせ人の目を惹きつける。
これはオヤジが悦ぶわ、普通にかわいい。こんな無垢でいたいけな娘が事もあろうかその場しのぎの男ども(大半はオヤジだろう)にいいように弄ばれているなんて!
美穂は通りがかりのおじさんにすら憤りを感じた。

香織はキラキラした笑顔を美穂に向けた。

この子どんどん可愛くなってる。
「お待たせ、美穂ちゃん。今日はどうしたの?」
「だって香織ちゃん、家を出て、もう2か月経つのに全然家に帰って来ないでしょ。元気かなって思って」
香織は美穂に並んで座り、カフェラテを頼む。対面の席には座らない。
「ごめんなさい、、忙しくて、」

忙しい!よくもシャーシャーと言えたものだ。
香織は人材派遣のバイトが忙しくなったとか言って実家を出て一人暮らしを始めていた。お母さんも薄々気づいているよ、あんたの仕事。

美穂は取り留めのない話をしながら香織を観察していた。ネイルはしていない。そうだね、あんたは自己満足のために時間がかかるし、大して男受けしないようなことはしない。
色素薄い系オリーブカラーのカラコンに変えているのはそれなりに雰囲気が出ている。でも到底ハーフっぽくは見えないよ、あんたの顔立ち純日本風なんだから。
見た目清楚で所動はさりげなく気遣いができている。話をすれば知性すら感じられるのに、その人柄は人懐っこく、ちょっと甘えた悪戯っぽい表情がチラチラ。なるほどおじさんはさぞかし癒される事だろう。

どういう基準なのか不明だが、お店の「人気」ランキングではNo .1だけど「本指名」ランキングでは3番目なのは出勤時間が短いからだろうか。大学にはちゃんと行っているようだ。

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