見出し画像

#037 戦略立案が難しい3つの理由

画像2

前回のエントリで、「戦略」と「戦術」の違いについて書きました。

戦略には経営者の個性が表れます。同じような業界で同じようなリソースを持つ企業であっても、経営戦略や事業戦略が異なれば、大きく成長する会社、事業が立ちゆかなくなってしまう会社、全く違う結果になることがあります。

このように非常に重要な事業戦略ですが、実際にこの戦略を立てるのって難しい。戦略が無いまま成り行きで運営されている組織もたくさんあります。

戦略の重要性

戦略の重要性については、過去に以下の記事を書きました。

#006 経営戦略を立てる上で SWOT 分析が重要な理由
https://note.mu/yukio_tada/n/n9115b0b1becd?creator_urlname=yukio_tada

会社全体の経営戦略や、事業全体の事業戦略がしっかりしていないと、個々の組織、例えば、営業やマーケティング、商品開発、人事、などの組織がそれぞれバラバラなことを言い始めます。
これら個々の組織の進む方向をまとめ、全体としてチームの力を同じ方向に向かせることができるのが経営戦略や事業戦略です。

戦略を立てるのが難しい理由

新規事業を立ち上げたり既存事業にてこ入れを行う場合、新たな戦略を立案することが必要になってくるのですが、こうした場面において、勝てる戦略を立てるのは一筋縄ではいきません。

(1) 戦略を立てられる、立てたことのある人材がいない

これは非常に良いことだと思うのですが、これまで大きく成長してきた大企業には、創業者が立ち上げた素晴らしいビジネスモデルがあることが多いです。
そのような優れたビジネスモデルを、長年にわたって着実に成長させることで、結果として大きな企業になってきたのだと思います。

さて、

#001 「イノベーションセンター」はなぜうまくいかないのか
https://note.mu/yukio_tada/n/nd65f77150c09?creator_urlname=yukio_tada

にも書いたとおり、こうしたパターンにおいて最も収益を上げるために必要なのは、「効率化イノベーション」を着実に進めることです。その場合、新たな戦略を作ることはあまり必要とされず、如何にこれまで成功してきた戦略を忠実に戦術に落とし込んでいくか、が重要になってきます。
こうした環境にいると、なかなか新しい戦略を立案するスキルを磨くことは難しくなってしまいます。

(2) 戦略が組織に引っ張られる

戦略と組織との関係においては、チャンドラーの「組織は戦略に従う」という考え方と、アンゾフの「戦略は組織に従う」という考え方の大きく2つがあります。

#010 日本企業の組織について考える(その3) - チャンドラー「組織は戦略に従う」 
https://note.mu/yukio_tada/n/nad67f0e44bf9?creator_urlname=yukio_tada
#011 日本企業の組織について考える(その4) - アンゾフ「戦略は組織に従う」
https://note.mu/yukio_tada/n/nd5339f25a63d?creator_urlname=yukio_tada

本来、新しい事業に参入したり、先行きの厳しい事業を立て直すような場合には、まず先にその業界で勝てる戦略を立案し、組織をその戦略に合わせていく、いわゆる「大ナタを振るう」ような改革を行わないといけないのですが、実際にはそのような戦略を立案しようとすると現場からの反対が起こり、結局組織に見合った戦略しか立てられない状況に陥りがちです。

(3) 一度新しい戦略の実行に失敗すると、その後が続かない

(2)に似ているのですが、仮に「大ナタ」をふるって組織変更や人事制度の変革などを行ったとしても、その結果が成果に繋がらなかったりすると、「やっぱり駄目だ」という失敗体験だけが残ってしまい、その後同じような戦略立案が極めて難しくなってしまうことがあります。
特に日本企業の場合、失敗をネガティブな体験として捉えてしまうため、失敗体験を共有することができず、貴重な失敗経験を組織の血肉として蓄積することができないため、「ただ失敗しただけ」になってしまいがちです。

中小企業の優位性

このように戦略立案が難しい理由を深掘りしていくと、中小企業の優位性が見えてくるように思います。
人材面においては、中小企業の経営者の方は、そもそもその事業を作られたのが現在の経営者ご本人であったり、父親である先代であったりすることが多いです。当然、もともと経営者として戦略立案することの重要性をご理解されており、その能力も持ち合わせておられることが多いように思います。
組織に関しても、人材確保の難しさはありますが、小回りがきくため戦略に合わせた組織を作ることが比較的容易だと思います。また、仮に失敗したとしてもその経験は経営者の方の中に残りますので、次に新しい戦略を立てる際の礎にすることが可能です。

コンサルタントとしては、これら中小企業の優位性をきちんと引き出すことができるようなアドバイスをできるようになりたいと思います。

まとめ。

(1) 事業戦略は、開発、営業、マーケティング、人事、などのあらゆる個別戦略を決定する、非常に重要なものです。事業戦略がしっかりしていないと、それぞれの部門がバラバラになってしまいます。

(2) とはいえ、この事業戦略をきちんとたてるのは非常に難しいです。理由としては、(1)戦略をたてられる人材がいない(2)戦略が組織に引っ張られてしまう(3)戦略をたてても実行しきれないと失敗体験だけが残ってしまう、などがあげられます。

(3) このように戦略を立てるのが難しい理由を深掘りしていくと、中小企業の勝ち筋が見えてきます。社長を中心に(必要ならコンサルタントの力を借りて)勝てる戦略を立案し、手持ちのリソースをその戦略に集中させることが重要です。

----------
(ここに書かれている内容はいずれも筆者の経験に基づくものではありますが、特定の会社・組織・個人を指しているものではありません。)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?