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故郷の佐渡を走る #00

佐渡観光の概要


電車がなく、バスの本数も少ないため、佐渡観光はバスツアーかレンタカーが一般的です。
レンタサイクルもありますが、店を拠点にして十数キロ圏内を巡るというような楽しみ方に向いていないと思います。100kmを走れるなら,今回のぼくのように自転車で回ることは可能です。

ショートカットするにしても島を一周するプランになるでしょう。
佐渡観光はビュッフェのようなもので一品料理ではなく、金山だけ見られればいいや、たらい舟に乗れれば悔いはない、なんて人は少ないはず。一周しながらいろんな景色と体験を!

ネットで調べてみると、発言力のある人が有名にしたルートがあって、それを真似する人たちが洗練させ、無駄なく回れるルートか、コスパ優先の安いルートか、どちらかがたくさんあるだけ。
とくに島に渡るまでのことは薄い情報しかありません。
他の土地に行くときはぼくもそういう情報を参考にすることがありますが、佐渡に関しては住んでいた立場と、東京に住むようになって感じる佐渡の良さと、二つの視点で考えることができるので、提案したいことがあります。


新幹線から楽しみたい


佐渡にB'zが来たときヘリだったか自家用機だったか空路で入りました。山崎まさよしさんは船だったようで、冬だったのか揺れて辛い体験だったそうです。どちらが佐渡のことを心に刻んでいるかと言えば、もちろん山崎まさよしさん。

できることなら上越新幹線から満喫してほしいです。東海道新幹線に比べて不便なことも多いけれど魅力もある。
いちばん好きなのは、ほぼ二時間だから映画を見ている感じでロードムービーの主人公になったような気分が味わえること。東海道だと名古屋、京都、大阪といった大都市があるけれど、上越新幹線は都会から田舎に変化していくグラデーションが感じられ、トンネルを抜けるたびに、田んぼが増えて、空が広がり、その対比が鮮やかになっていきます。
午前中なら右側の窓際がおすすめ。高崎を過ぎてから長岡まで車窓からの景色の移ろいが楽しいです。



日本海を渡る


効率よく回るために島への移動は最短でと考えるのは自然なこと。
でもそれだと太宰治が死ぬ場所を見つけるため佐渡に憧れ、船から見える小さな島影に「騙された」と失望して、ところが気づいたら視界を遮るほど大きな島の姿に飲み込まれそうになり圧倒された、という体験ができません。

佐渡の南側を小佐渡、北側を大佐渡と呼ぶのだけれど、その二つの地形と風土によって生み出された奇跡を満喫してほしいです。
つまり、フェリーだと二時間半、ジェットフォイルだと一時間の、島へのアクセスに最初の醍醐味があることを考慮すべき。

退屈な時間と陰鬱な船室の雰囲気に耐えなければならないけれど、行きはカーフェリーをお勧めします。
慣れた人たちはみんなすぐに横になって寝てしまうので、これから旅行を楽しむぞという気持ちになりづらいです。気持ちを鼓舞するためにおすすめは音楽。

旅の始まりの音楽


ぼくは佐渡で過ごした時代によく聞いていた音楽をDAPに入れて、当時の自分と今の自分のあいだで心が揺れる感覚を楽しみました。
過去に引き戻されそうとする力と、それに抗う力と、その対立で生まれるフリクションに期待したわけです。
大袈裟な言い方ですが、二つの立場で引き裂かれそうになる気持ちって芸術には欠かせないと思います。

心のマネージメントというのか、どうやって気持ちを維持して、出会いに対して心を開くようにするか、スナップやドキュメンタリーっぽい写真を撮るなら大切なこと。
プレイリストを作ったり、こんな写真が撮りたいとイメージしながら古典の名作を見たり、映画を見ながらトーンを設定したり、旅の準備として楽しむようにしています。

カフェインの刺激に慣れてしまわないように、ふだんはコーヒーを飲まないようにしている人がいます。ぼくも何枚かのアルバムに関して「これを聞いたら一発であのときに戻れる」という音楽があるのだけれど、上書きしないためにふだんは聞きません。
初めて買ったLPであるゲイリー・ムーアの「大いなる野望」とか、初めて好きになったアーティストであるロッド・スチュワートの「アトランティック・クロッシング」とか、大人になったら自分のオーディオを買って好きなときにこのアルバムを聴きたいと憧れたビリー・ジョエルの「ストレンジャー」とか。


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