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人生という雑誌にコラムを

#写真家が自転車に恋をして #05


人生は雑誌に似ている

人生の物語にアンダーラインを引くように写真を撮る、とエッセイに書いたことがあります。ラインの太さ、長さ、色はそれぞれで、どんな物語にどんなラインを引くかの違いなのだと。


世界は混沌としていて、それを興味で束ねていったものが人生だと考えると、雑誌のようなものだと考えることもできます。


その雑誌にコラムを書くように、定期的に撮り続けるテーマがあると楽しくなるので、それをポタリングに絡めるのはおすすめ。

コーヒーが好きならカフェを巡ったり、ラーメン店や焼肉などグルメと相性はいいです。店めぐりを趣味にしている人なら、記録として写真を撮る習慣もあると思うので、そこにちょっと力を入れてみるとか。

細かく街を回れるので出会いが多い


記録が作品になるタイポロジー


写真表現の手法で、ドイツのベッヒャーが提唱したタイポロジーというのがあります。
芸術的な写真を撮るために工夫するのではなく、個々の写真はドライに、なるべく撮り方を変えないようにしていくことで、被写体ごとの違いが浮かび上がってくるというもの。

いろんなカフェを回って、店の外観と飲んだコーヒーを撮っていくとして、縦で撮ったり横で撮ったり、引いて撮ったり寄って撮ったり、つい場所ごとに違う撮り方をしてしまいますが、タイポロジーの基本はカタログ的な統一感。
カメラとレンズを変えるとそれだけで変化が生まれてしまうため、同じものを使うことに決めて、店を撮るときは真正面から横位置で、コーヒーは真上から、すべてモノクロ・・・みたいにして、店が変わっても続けていけるスタイルを選ぶことが重要。

撮っているうちに「このままじゃ続けられない」と思うときが来て、思い知らされることになります。たとえばラーメンにヒントをもらって真上からコーヒーを撮り続けていると、カップがほとんど見えないから情報が減ります。店の名前を入れる角度を決めていたのに、看板も店名もない店がある。
タイポロジーで必ず直面する問題で、自分なりに答えを出す必要があります。


↓の写真は自転車のおかげで撮れたから、「自転車で見つけた猫」ということで上の写真とまとめるのも面白いです。
僕の場合だと、女性の名前がついたスナックや街で見かけた数字など、見つけたら撮ることにしているものがあって、そういうの多くあると楽しい。スランプになったとき、シャッターを押すきっかけになってくれて。

猫よりは犬派だけど


ポタリングで巡礼




アニメのファンが、自分の好きな作品の舞台を訪れることを巡礼と呼ぶのも一般的になって、最近のアニメはトレース画が多いから、視点やパースペクティブが完全に写真なのでカメラと相性がいいです。
場所ごとに距離が離れているから、自転車で回るのは効率がいい。

映像作品ではなくても、文学作品の舞台を訪れるのも楽しいのでおすすめ。

松尾芭蕉は移動する作家として自転車との相性も抜群


僕は落語ファン。
寄席に行くときも自転車で、落語ゆかりの地を巡るところからはじめ、落語のネタに登場する地名をたよりに舞台を訪ねるところから始めました。

蔵前にある「元犬」の像

今では「そのネタの登場人物になったつもりで心情を込めて撮る」のをテーマにしています。これはいつか実践編として記事にできたら。
あのネタの主人公はこの景色をどんな気持ちで見ていたか・・・と考えながら写真に残していくってコラムっぽいですよね。何層にも楽しみがあります。


自転車と影、もテーマのひとつ



A perfect shop for bicycle #02


1110 CAFE / カフェ・ベーカリー

荒川サイクロングロードは高速巡行に最高のコースだけれど、立ち寄って楽しめるスポットが少ないのが残念。情報を調べていて見つけました。

工場みたいな広い土地にある、すごくお洒落な店で、場所の分かりづらさや周囲とのミスマッチなところが、隠れ家っぽくもあり、遠いところにやってきた感があって最高。

店内から見る外の光がきれいなので、春から初夏の午前中がおすすめ。かなり美味しいトーストがあります。

カメラを手に周囲を散策するのもおすすめ。

コーヒーも美味しい

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