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「お母さん食堂」名称変更を求める署名活動から考える:ジェンダーロールに違和感を覚える大切さ

ジェンダーは社会的性差の意》社会生活において、性別によって固定的な役割を期待されること。また、その役割。例えば、「男は外で仕事をするべき」など。性的役割。性役割。
※出典:goo辞書

Twitterで「お母さん食堂」という言葉からやり取りされる様々なツイートを見つけた2020年も残すところ数日という今日。

「お母さん食堂」という言葉自体を私は知らなかったのですが、コンビニエンスストアのファミリーマートが手がけるお惣菜シリーズの名称の様です。
そのCMにはかつて「慎吾ママ」というキャラクターが大人気になった香取慎吾さんが出ていたとか。

きっと慎吾ママを知っている人が携わったCMだったんだろうなというのが第一印象。

そのお惣菜シリーズのネーミングが
・どんなイメージで
・どんな客層をイメージして
・誰宛に
作られたかは私にはわかりません。

ただ、このネーミングについて女子高生が名称変更を求めて署名活動を行っているという点に注目したいと思いました。(彼女たちはおそらく慎吾ママを知らない)

慎吾ママが登場していた番組は「サタ スマ」(1998年-2002年)に放送されていたようです。
とすると今の高校生は…何年生まれ??
一番年上の高校三年生18歳だとしても生まれた頃に番組が終了している。番組制作に関わったのは親世代やその後輩の「慎吾ママ」をテレビで見ていた世代だろうか?

ファミリーマートのHPから
「お母さん食堂」のコンセプトを確認してみた

実際にファミリーマートはどんなコンセプトで「お母さん食堂」という名前を決めたんだろうかと気になりHPを確認してみました(アクセス数増えてるだろうなぁと思いながら)。

いろんな人が自分のイメージでそれぞれ「お母さん食堂」というワードで感じた事を発信しているけれど、それはその人個人のイメージや考え方だから、個人の経験や思想が反映されます。

HPにはこのように記載されていました。

お母さん食堂は、「家族の健やかな生活」を想って作った、美味しくて安全・安心な食事と食材を提供するブランドです。お客さまにとって「一番身近で美味しくて安心できる食堂」を目指しています。
ファミリーマートHP「お母さん食堂」とは

んん?
コンセプトに「お母さん」て言葉はないのか。

強いて言うなら「家族の健やかな生活」から「お母さん」がわかりやすいロールモデルとして登場した、という形なのかな??

ロールモデル
(英語表記)role model


「ロールモデル」とは、自分にとって、具体的な行動や考え方の模範となる人物のこと。人は誰でも無意識のうちに「あの人のようになりたい」というロールモデルを選び、その影響を受けながら成長するといわれます。
(2010/10/4掲載)
※コトバンクより

ちゃんと広辞苑のようなもので言葉の手意義を持ってこないのは申し訳ないのですが、
みんなネットで調べるでしょう?
だからネットで調べて出てくる定義で参照していますのであしからず。

言葉のイメージを膨らませてみんながイメージしやすい、認識しやすいフレーズで商品を覚えてもらうわけですよね。
この場合、無意識のうちにイメージしたのがお母さんということだろうし、メッセージの受け取り手もきっとお母さんをイメージするだろうと解釈するだろうという想定ですよね。

名称変更を求める女子高生達のメッセージを
change.orgで確認してみた(2020/12/28)

ここで私が着目している点は女子高生という10代の方々が問題提起しているという点です。
彼女たちにはこれからの社会を担う人達だということ。

Twitterなどで散見されるのは「言葉狩りだ」というフレーズ。そうではないのだという彼女たちの言葉を紹介していきますね。

彼女たちのメッセージからはこれから社会に出ていく自分たち、これからの世代が案じている事が伝わってきます。

この提案は、決してファミリーマート一社だけを批判するものではありません。

商品名が与える影響を企業にも知っていただけたら、人が持つ無意識な思い込みに影響を与え、誰もが生きやすい社会への一歩になると思い、2019年の夏から活動をはじめました。署名は2020年12月31日までとし、その後、ファミリーマートさんにお送りしたいと思っています。(12月28日加筆)

※change.org ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!!より

彼女たちは自分たちの意見と共に署名を渡し、ファミリーマートに伝える機会がほしいと綴っています。

「人が持つ無意識な思い込み」

これが一つのテーマだろうと思います。

この思い込みって生来のものでしょうか?

この思い込みっていつできるものなんでしょうか?

「お母さん食堂」という名称があることで、お母さん=料理・食事というイメージがますます定着し、母親の負担が増えることになると考えています。そしてことによって、今後も性別によって役割が決まったり、何かをあきらめたりする世の中になる可能性が強くなることはとても問題だと思います。
※change.org ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!!より

彼女たちはこう綴っています。

そして、この可能性についてきちんと数字でもって「日本の今」を確認・説明したうえで、未来について言及しています。
未来というのは彼女たち、これから「お母さん」になるであろう彼女たちが「お母さん」になったときの社会での扱われ方です。

日本での女性の社会的なポジション

世界経済フォーラム 「男女平等指数」(2019年12月発表)では日本は男女平等ランキング121位。
先進国ては最下位だとニュースでも話題になったと記憶しています。
女性指導者の割合もこれと比例して世界平均を大きく下回っているのが現状です。
世界平均だって女性指導者が36%なんですから、世界規模で見ても女性の社会的なポジションは不利と言えるでしょう。日本は女性指導者は15%との事ですから言わずもがな。

日本での女性の社会的ポジションは不利

これは明確な事実なわけです。
性別で不利益を被るなんてあんまりですよね。

確かに男性女性では体格やら生殖役割やらDNAレベルで性質が違いますから、性別特有の得手不手得はあります。
その上で社会的ポジションは個々の能力や個性や役割で評価されたいものです。

今の日本はどうかというと、未だに「男は仕事、女は家庭」という高度経済成長期を支えてきた家庭のロールモデルイメージから脱却できていないのです。

(共働き世帯の増加)

昭和55年以降,夫婦共に雇用者の共働き世帯は年々増加し,平成9年以降は共働き世帯数が男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を上回っている(I-3-4図)。

男女共同参画白書(概要版)平成30年版

共働き世帯数が増えてきたのはなんと昭和55年以降!
しかも男性雇用者と無業の妻からなる世帯(おそらくは専業主婦と思われる)を上回ったのは平成9年!!

そんなに前からなんですね!
今は令和2年が終わるところ。平成は32年までありましたよね……。

んん??
ここ10年以上は共働き世帯の数が多かったはずでは?!

なのにどうして「男は仕事、女は家庭」のイメージから抜け出ていないのか。
ほんとうはそのイメージなんてリアルにはもう反映されていないのではないか?と思いませんか??

残念ながら小学5年生~6年生に行われた調査では

「料理のお手伝い」をする小学生高学年は、男子53%、女子76%
**独立行政法人国立青少年教育振興機構 青少年の体験活動等に関する意識調査(平成28年度調査)(平成31年2月発行)
※change.org ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!!より

との結果だそうです。

この結果、みなさんどう思われますか?

小学生の子供の家庭での教育で既に男女差がついているんですよね。これは親の価値観によるところだと思うんですが、親が「男は仕事、女は家庭」と当たり前に思っていれば子育ての方針もそれが当たり前になるわけです。

共働きの世帯が半数を超えても、男女ともできる人が家事をするという価値観があることに気づかなければ、ずっと「男は仕事、女は家庭」の教育が続いていくっていうことなんですよね。

子供の頃から持つ価値基準ってなかなか変わらない、そして次の代にも同じ様に教育されていっている……。

そこを変えなければ将来「お母さん」になったときに、当たり前のように社会でのキャリアを捨てざるを得ない道を歩むことになってしまうと彼女たちは考えたわけです。

現状、変わらないままで彼女たちの未来が明るいと言えますか?
自分の娘や孫が幸せになる未来が見えますか?

私にはどうにもそうは思えないんです。

署名活動を行っている彼女たちの悲痛さ、
彼女たちから、自分たちを含め女性の未来をより豊かに、女性だけでなく子供たちの未来をより豊かに明るくしたいというメッセージが伝わってきませんか?

以下、彼女たちがジェンダーロールの価値観の狭間の世代なのかなというのを強く感じた~料理をするのは「お母さん」ダケですか?~をそのまま転記しますので、じっくり読んでみてほしいなと思います。

狭間を感じませんか?

~料理をするのは「お母さん」だけですか?~

このままでは、「お母さん=料理・家事」をするというイメージがついてしまい、そのうえ、男性が協力して家事をしようと思うことも少なくなってしまいます。ここで、お父さんからみた無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)について取り上げてみます。男性の人たちは、「男は仕事」の考えから 自分たちは仕事をしていればいい、と思う人が多く、お母さんの負担に気づかないことがあります。また子供への影響はお父さんが仕事ばかりをするとお母さんが家事を全部背負うことになり子供にとって親と遊ぶ時間が減る、そうなると男の子は大人になってお父さんが仕事ばかりをしていた、お母さんが家事ばかりをしていたから仕事だけをすればいいという認識になり、子供の価値観にも影響します。「お父さんは仕事、家事全部はお母さん」というのが日常だと、男の子が大人になった時、自分のお父さんがしていたのと同じように、「男の人は仕事をしていればよくて、家事は女の人の仕事」と無意識に考える男の子もいると思います!

※change.org ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!!より

ここでは「お父さんからみた無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)について」として問題提起されています。

ここでの「お父さん」は将来お父さんになる男性も含まれていると思いますし、広く一般的に「男性」を指していいかと思います。

「お母さん」の対義語として「お父さん」が用いられていると思いますが、活動している彼女たちは高校生。
自分の「お母さん」と「お父さん」、将来お母さんになるであろう自分たちとそのパートナーをイメージしている。

そして子供というポジションから見ているのが文章から伝わりました。
子供として、というのが私の視点には無かったのでとても印象的だったこともあります。
・お母さんの家事負担は大きいと感じている
 (「家事を全部背負う」という表現)
・家事で忙しくて子供と遊べないと感じている
・お父さんは仕事ばかりしていると感じている

子供からはそう見えているんだな、ということと
彼女たちは将来そうなるのは問題だと感じている・考えている、というのがとてもストレートに伝わってきます。
自分たちのことだからとても大きな問題なわけです。

【親の背中を見て子は育つ】と言われますが、子供のお手伝いの調査結果を見ても、共働き世帯が増えて半数を占めても変わらない現状を見ると、社会全体に根本的な問題があると言わざるを得ません。

そんな中、男女平等やジェンダーについて「学ぶ機会があった」という彼女たち。
そしてそれを受けて性別による格差を考える機会を作りたいと署名活動を始めた彼女たちの行動は、日本が少しずつ変わり始めていることの証明でもあると私は考えます。

私が子供の頃、男女平等という言葉は聞いたことがあっても、その格差やジェンダーについて考える機会があっただろうか。無かったです。断言しますが。

SNSやニュースで大きく取り上げられることや有名企業に一石を投じることは、これからの彼女たちの未来に大きく良い影響を与えるものと思います。

未来はこれからを作っていく人達のものです。

いつまでも高度経済成長期のロールモデルに縛られていては現状の問題は打破はできません。

冒頭でジェンダーについて引用しましたが、
「社会生活において期待される役割」がジェンダーです。

社会生活は時代によってどんどん変わっていきますよね?
だからその変わっていく社会と共にジェンダーも変わっていくのが道理なはずです。
変わっていかなければいけないのです。

持続的に発せられるメッセージ(CMだったり商品名としてみんなが文字や音で受け取り続けるもの)は、情報として発せられるだけでなく頭で反芻されてイメージとして定着するという側面があります。

有名企業のCMを見聞きし、話の中商品名を繰り返し言ったり聞いたりすることは「人が持つ無意識な思い込み」を強化してしまう行為なので、そこに着目して活動を始めたというのはとてもいい試みだと私は考えています。

この活動自体が注目され、SNS上でもニュースでも話題に挙がることは、価値観について考える機会ができるという点においても、とても有意義なことだと思います。

これは1つのネーミングの問題ということではなく、日本社会全体での価値観の問題です。

マーケット上だけの問題ではなく、政治においても問題になっていて取り組まれているはずの問題だ、ということに有権者:大人は気づいて考えてほしいなと思います。

未来はこれからを作っていく人達のものです。

問題提起し行動を起こした彼女らが誹謗中傷にあうことがないよう、大人の誠意ある言動を願います。

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